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藻類バイオプラスチックが生み出す、クリーンな水環境とグリーンなプロダクト - Algixインタビュー

アメリカのミシシッピ州を拠点とするAlgixは、環境問題に対して一石三鳥のソリューションを持つスタートアップです。彼らのコア技術「BLOOM」は、バイオプラスチックを製造する過程で空気中からCO2を回収することにより、汚染された水環境を改善します。

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Ryan Hunt  Founder and CTO

University of Georgiaで物理学とバイオエンジニアリングの学位を取得。藻類、光合成、熱可塑性化合物を含むサーキュラー・テクノロジーに興味を持ち、Algixを共同創業。
環境浄化とバイオマテリアルズを組み合わせたサステナブル・テクノロジーを自社ブランド「BLOOM」として開発。政府や企業と協力して大気汚染・水質汚染の改善に取り組んでいる。

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はじまり

-- 事業を始めたきっかけを教えて下さい。

Algixは、ジョージア大学発スタートアップとして2010年に設立されました。当時私たちはバイオ燃料の開発に取り組んでおり、環境回復のためのツールとして藻類を使用していました。私たちのミッションは、まだ手つかずの大きな可能性を持つ藻類という天然資源を活用して、石油由来原料の代替物となる新たな持続可能原料を開発することです。

仕組み

-- コア技術「BLOOM」の仕組みについて教えて下さい。

BLOOMは藻類バイオマスをベースポリマー(リサイクルポリマー、バイオポリマーまたは人工ポリマー)とブレンドし、熱可塑性化合物を生成します。この過程によって、ベースポリマーの使用量を半減させることができます。藻類を材料にすることで、温室ガスを大量に排出する石油製品を代替できます。

世界中の湖が、水質汚染による藻類の異常発生の悪影響を受けています。藻類は成長過程で膨大な量のCO2を吸収します。また、窒素とリンを吸収して植物・樹木よりも10倍〜100倍のスピードで成長します。藻類の回収利用を通じて、環境に悪影響を及ぼしている問題を、環境を改善してくれるソリューションに変えることができるのです。

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現在、パートナーである様々な国にある工場で私たちの製品を持続可能な材料として利用いただいてます。消費者向けの商品を開発・製造しているブランドは、BLOOMの製品を材料に使うことによって、「私たちのブランドは新しいテクノロジーとこれまでになかったサプライチェーンによって、地球環境に良い製品を作っているんですよ」と言うことができるというわけです。

現在、私たちは靴やスポーツ用品のブランドをターゲットとしています。これらの商品は藻類と配合させやすいEVAやゴムなどのポリマーを使用しているためです。弊社は特に柔軟な発泡体の製造経験が豊富ですが、他にサーフボードのトラックパッド、ヨガマット、自転車用グリップなども製造しています。

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短期的解決vs長期的解決

-- 原材料となる藻の調達はどうやっているのでしょうか?また、どうやってビジネスを拡大させていくつもりですか?

藻類のソーシングについては、2つのアプローチがあります。1つは単に下流から直接採取することです。藻類が大量発生している湖に行って水環境に悪影響を与えている藻を吸い出します。ただし、このアプローチは短期的なソリューションにすぎません。長期的な解決策を目指すのであれば、そもそも藻類の異常発生を悪化させる栄養素を湖に流している上流の都市に行くべきなのです。

そのために、弊社は浄水事業で利用できるフォトバイオリアクター(培養装置)を提供する企業と協力しています。弊社の設備が用水路を備えた沈殿池や高速藻類増殖池などで使われています。フォトバイオリアクターの他にも、様々なバイオテクノロジーソリューションがあります。

どの都市にも廃水処理施設がありますが、それらはすべて私たちが必要とする原材料の供給源になりえます。理論的には、各都市が廃水処理でお金を使うのではなく、お金を生み出すことができるのです。廃水処理施設が汚染の改善によって十分な利益を生み出せるようになった場合、世の中はどのように変化すると思います?業界全体をひっくり返すほどの変化ですよね。これを実現させるには、弊社の技術を可能な限り安価に活用できるようにすることが必要となります。技術を機能的かつ扱いやすいものに変える方法が見つかれば、汚染を相殺できる可能性が高いでしょう。

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ビジョン

-- Algixのビジョンを聞かせてください。

私たちは、バイオマスが新しい農産物となるグローバルサプライチェーンを構想しています。将来、人類が石油や化石燃料などから徐々に移行していくにつれ、ポリマーや石油由来原料の代替原料が必要となります。

汚染を資源に変えるというインフラ投資には大きな可能性があるように思います。発電所、浄水施設、工場、農業用水といった産業由来の汚水とCO2から、藻類を使った修復を通して、環境汚染源を貴重な資源へと生まれ変わらせることができるのです。

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チャレンジ

-- これまでに直面した大きな課題は何ですか?

これまでになかった新たなサプライチェーンを作り出すことは容易ではありませんね。水質汚染の改善をミッションとする他企業との戦略的パートナーシップに、これまで大きく頼ってきましたが、藻類を排水処理技術として使用している企業とのパートナーシップが、最も望ましい協業の形ですね。

もう一つのチャレンジは、商業化です。弊社の製品に対する需要が増加し始めたのが2017年です。これには消費者の需要やトレンドが大きく関係していると思います。以前は、積極的に環境保全に取り組もうとする企業なんてないんじゃないかと思っていました。社会がまだそこまで来ていないと。2017年からパートナー企業1社と取り組み始め、靴業界におけるサステナビリティの進化を目のあたりにしてきました。そして現在、100社以上のブランドが次々と参加してきています。様々な企業・ブランドが商品の持続可能性に意識を向け、改善を目指していることは我々にとって大変嬉しいことです。

商業化の過程でさらに難しいのは、弊社は靴の完成品を製造しているのではなく、靴の素材となるペレットを提供しているということです。実際に製品を製造している企業に弊社のペレットを届けることが必要なため、アジアの工場と協力しています。幸運なことに、新型コロナウイルス感染拡大の前に良いチームを組めたため、中国に行かなくても管理ができています。

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プログラムについて

-- Plug and Play Japanのプログラムに参加するにあたって、企業パートナーに何を期待しますか?

私たちは、ミッションの一部としてサステナビリティに取り組む日本の戦略的パートナーを探しています。これまでに話した数社は、グリーンケミストリー(環境にやさしい合成化学)または消費者向け製品の包装に関連した企業でした。Plug and Play Japanを通じて、日本の企業と新しくネットワークをつくり、ブランドを知り、そして日本市場の概況を理解することが主な目的です。

弊社にとっては、社会的責任を持つブランドと連携することが最も重要です。なぜなら、弊社の顧客として私たちの材料をサプライチェーンに導入することは、私たちの環境保護プロジェクトをサポートすることにつながるからです。1ポンドの乾燥藻類に1ドルの付加価値を与えることは、この新しい業界を活性化するために非常に重要なのです。

弊社の素材は靴業界の中で非常に人気があり、BLOOMや同様の素材について知ってくださっている方がたくさんいますが、他の業界ではまだ比較的知られていないと思います。

私たちがファッション業界に焦点を当てた理由の一つは、ファッション業界はすでに環境問題への意識が高く、より持続可能な製品・プロセスの開発や、環境への影響を測定するための実験などに積極的に取り組んでいるからです。

ファッション業界で始まったこのような意識がエレクトロニクスなど他の業界に広がっています。さほど遠くない未来には、全てのブランドが自分たちの製品またはサービスの環境に対する影響について定量的に話し合うことが必要となってくるでしょう。新しい世代は原材料の透明性と循環型のコンセプトを要求しています。


-- おっしゃった通り、5~6年前は藻類の可能性はあまり知られていませんでしたが、最近は注目されています。日本企業のなかにも、Algixの製品の可能性を見てくださる企業があると良いですね。

だからこそ、私たちは国際的に拡大しようと考えてます。成功するためには、全ての企業そして全ての国が、現在利用可能な原料とプロセスの持続可能性を意識する必要があります。

(Photo Credit: BLOOM)

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