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Why Kyoto? スタートアップに伝えたい、京都が持つユニークな価値。

Plug and Play Kyotoがオープンして1年。Plug and Play Japanが開設してからは3年が経ちました。これまでご支援・ご協力いただいた多くの方々のおかげです。ありがとうございます!

新型コロナウイルス感染症の影響で例年よりも静かな夏を迎えている京都ですが、その分よく見えてきたこの街の魅力があります。

“なぜ、京都なんですか?”

Plug and Playが京都にオフィスを開設して以来、様々な方から何度となくこの質問を頂いてきました。日本の大都市の中で、なぜPlug and Playは国内第2拠点に京都を選んだのか?京都のどんなところがスタートアップにとって魅力なのか?今回はその点について書いてみたいと思います。

私自身もともと京都の人間ではなく、Plug and Play Kyotoの存在を知った時は「へー、大阪じゃなくて京都が第2拠点なんだ。珍しいな」という印象でした。半年前に京都に移住してからは「Why Kyoto?」の疑問を解き明かすべく、たくさんの方にお話を伺ってきました。社内の先輩方、京都市や京都に拠点をおく企業の方々、ビジネスコンサルタントの方々、そしてもちろん、スタートアップにも。

「なんで京都だったんですか?」「京都の強みって何ですか?」「京都って、どういう場所だと思います?」
歴史の豊かさ、学生の多さ、産官学連携、ものづくり企業のテクノロジー、老舗企業の数、職人技を極めた美術工芸品、鴨川をわたる風の心地よさ。様々な回答をいただきました。

そういった多面的な強みを持つ京都という街ですが、その中でもスタートアップにとって関連の強い点をあげるとすれば、以下の3つに集約されるのではないかと思います。

1) 10人に1人は大学生。大学のまち、京都


経営資源は「ヒト・モノ・カネ」と言われますが、スタートアップも例外ではありません。事業を展開していくのに必要な要素は、技術と資金と人材が揃っていること。そしてそれらをバックアップしていくのが、産官学の連携です。

大学の町として知られる京都には34の大学が存在しており、人口に占める学生の割合は10%と、全国一の高い比率を誇ります。京都産学公連携機構をはじめとして、京都全体でベンチャー企業やスタートアップをサポートしようというネットワークが構築されています。

その結びつきの秘訣は、京都という街の「ちょうど良いサイズ感」にあります。
京都市の人口は約146万人、一部上場企業の数は37社です。資金調達面から見ると、京都に拠点を置いているというだけで目立ちやすく、周りにライバルが少ないのでVCや大企業から注目されやすくなります。またコミュニティの結びつきが強いので、新規参入した場合でも、事業を進める上でキーパーソンとなる人物や企業/団体に紹介してもらいやすいという利点があります。

またスタートアップからよく聞かれる課題が人材採用ですが、住民の10人に1人は大学生という京都には仕事の経験を探している学生が多くいます。
 人材に対して、求める技術やスキルが高ければ高いほど、大手企業や海外との競争になり、思うような人材にアピールできないという悩みは、多くのスタートアップから聞かれます。そこであえて、京都に拠点を構えているスタートアップも存在します。地の利を生かし、大学の研究室と密な関係を保つことで、優秀な学生をリクルートするというやり方をとっています。また日本国外から人材を採用するにあたっても、街で英語が通じやすく住民が外国人対応に慣れているというのはアピールポイントの一つです。

ちなみに、関西圏以外の人にはあまり知られていない事実ですが、京都駅から東京駅までは新幹線で2時間20分。京都駅から大阪駅までは在来線で28分の近さです。新型コロナウイルス感染症の影響で在宅勤務やリモートワークが通常化しつつある昨今、通勤ラッシュを避けることができ、週末には近郊の豊かな自然や街中の世界遺産を楽しめるというワークライフバランスも、京都の利点の一つになりつつあります。

2) イノベーション発祥の歴史


一般的に、京都というと古都のイメージもあいまって保守的なのでは?と思われがちですが、実は京都発祥のイノベーションは数多く起きています。

日本初の路面電車をはじめ、映画上映、中央卸売市場、国際会議場など、時代とともに日本初の新しいテクノロジーや仕組みを取り入れてきたのが京都というまちです。伝統を重んじる一方で、新しい技術やシステムはいち早く取り入れ、改革を受け入れる合理性が京都にはあります。

現在、Plug and Play Kyotoのプログラムにパートナー企業として参画されている島津製作所や京セラといった大企業も、それぞれの創業者は当時の技術革新を成し遂げた技術者でした。島津製作所は、1877年に日本で初めての有人軽気球飛行を実現した会社。京セラは、稲盛和夫氏が自ら開発したファインセラミックスの技術をもとに27歳のときに立ち上げた会社です。現在はどちらも京都にとどまらず日本を代表する大企業ですが、かつては新技術をもとに世の中にインパクトを与えようと創業した、当時のスタートアップ企業でした。

今でも、京都の企業のものづくりは世界をリードしています。例えば、現代におけるテクノロジーの代名詞であるiPhone。その部品には世界各国の企業の製品が使われていますが、それらの部品に使われている素材やベースとなる技術は、日本の企業でつくられているものです。

1200年間日本の首都であった京都には、世界中から最先端の技術や学術知識が集まってきていました。伝統工芸品に象徴されるような、多くの洗練された技術やデザインが京都には蓄積・継承されており、そのスピリットが現代のものづくりにも生かされています。

3) 世界に通じるブランド力


Googleで “Things to do in Japan(日本でやるべきこと)”と検索すると、4件のサジェストが上がってきます。富士山、金閣寺、清水寺、伏見稲荷。4つのうち3つは京都にあります。
京都は2,000件を超える国指定の重要文化財を持ち、中でも重文建造物は日本一の多さを誇ります。国宝の数も200件以上あり、京都の持つすぐれたデザイン力やインスピレーションの源泉ともなっています。それらの文化遺産は、長い歴史を経て残されてきた日本文化の真髄であり、古きをたずねて新しきを知るのにはうってつけです。

京都の町を歩けば、多くの寺社仏閣や町家や歴史遺産を目にします。そこには時の試練に堪えてきた美しさがあります。それは、十数世紀ものあいだ人間が「良いもの」「うつくしいもの」として選び抜き、保存してきた審美眼の積み重ねです。そして、それらを世界中から多くの人々がわざわざ見に来るという価値は、言い換えれば、そこに人類の感性に響く、ユニバーサルな「よさ」があるという証明にほかなりません。街全体が博物館または美術館のような役割を果たしているのです。

スティーブ・ジョブスが禅からヒントを得てAppleのプロダクトデザインに活かしたというエピソードは有名ですが、そのような「現代とはまったく違った視点から、普遍的な価値や要素を発見できる」チャンスが、京都の街角にはごくさりげなくたたずんでいます。

情報過多な現代にあって、静かな環境で深く物事を考えるのは容易ではありません。過剰な広告や通勤ラッシュ、ハイパーコンペティションにさらされ続ける中で生まれるサービスは、いきおい近視眼的になりがちです。景観条例によって保護されている京都の街並みは、雑音が少なく、集中して仕事に取り組むのに適しています。


4) さいごに


これは論理的に説明することが難しい要素ではあるのですが、あえて言うとすれば、京都の最大の強みはその『独自性』かもしれません。

それは「京都は特別な場所」ということ。もちろん、日本各地に歴史のある街は存在します。しかし、1200年の間首都として栄えた土地は日本中他にありません。近代的な発展を遂げた東京や大阪といった大都市と違い、京都はその伝統文化を色濃く残してきました。

イノベーションは異なるものどうしの組み合わせから生まれます。Plug and Playの日本での最初の拠点は東京でした。第2拠点を作る際、東京とは全く異なった場所にすることが、多様性を重視するPlug and Playらしさだったと言えるかもしれません。Plug and Playが目指している「N対N型のイノベーション」を実現させるためには、大学、企業、学生、クリエイターなど様々な立場の人たちが相互に関わりあうことのできる場が必要。それを自然発生的にかなえられる場が、京都という街だと言えます。その意味では、シリコンバレーと京都は全く異なる都市でありながら、そこに住む人たちが「他とは違う」ことに価値を見出しているという点、メインストリームに追従しないという点は共通項なのかもしれません。

京都に拠点を置いているスタートアップに特徴的なのは、大衆に迎合せず自分たちのやりたいことに集中しているところ。マスマーケットを正面から狙いにいくアグレッシブなスタートアップには、もしかすると京都は少し違う場所なのかもしれません。しかし、自分たちが良いと思うサービスやプロダクトを追求し、マイペースにとことんこだわりぬく、専門性の強いスタートアップにとっては、理想的な環境と言えます。

世界から年に450万人が訪れる都市。それは単なる観光資源ではなく、この場所に長く息づいてきたブランドであり、文化資本です。世界中で、他のどの都市にもない魅力を持つ場所、京都。他にはないユニークさを持つスタートアップにこそ、京都はぴったりの場所だと感じています。

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100年を超えるような企業が多いこの土地で、Plug and Playの活動はまだ始まったばかりですが、Plug and Play Kyoto オープン1周年を記念して、今月21日にオンラインイベントを行います。Plug and Play Kyotoに来たことがある方も、これから来てみたい皆様も、どうぞご参加ください

そしてもちろん、今後京都にお越しの際は、ぜひお立ち寄りくださいませ。

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