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久保田裕之の半生をゲームで語る(前編)

そういえばnoteはじめてそれなりに経つのに、自己紹介してなかったですね私(汗)。そんな風にちょっと思っていたところにnote本部から降って湧いたこのお題。ということで

「自己紹介をゲームで語る」

ここはひとつ乗ってみましょう。私の人生の半分くらいはゲームとのかかわりで構成されているようなものなので、自身が影響を受けた作品について書いていくことで自己紹介の代わりにもなろうというもの。ではいきます。


注1)長くなり過ぎたので前編と後編に分けました。後編はこちら

注2)写真はすべてパッケージに印刷されたものを掲載しています。これについては弁護士にも相談のうえ「パッケージは一般に公表されているので、ゲームソフトに対する個人的見解を記載するホームページ上でパッケージを表示させるくらいであれば違法性はない」の見解をいただいております。ただしメーカー等関係者の方から削除要請等いただいた際には対応させていただく所存でございます。

注3)noteのマイページにも書いているのですが、当方の名前は久保田裕之です。chitoseArkとは久保田がクリエイティブ活動するときのブランドネームのようなものです(大人の事情で作品に本名書けないのです)。


[1] 私が初めて買ったパソコンゲーム
プラズマライン
1984年 開発・販売:テクノソフト

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小学生時代からファミコンもセガ系ハードも持っていなかった私にとって、最初に買った記念すべきコンピューターゲーム(ゲームウォッチなどは除く)がこの「プラズマライン」となりました。

こう書くと「親にファミコン買ってもらえなかったカワイソウな子?」と邪推されるかも知れませんがさにあらず。その当時から私は秋葉原に自転車で行ったりする子供だったので、ゲームを遊ぶのだとしても初めからパソコンしか眼中になかったのでした。むしろファミコンやセガ系ハードはクラスのみんなが持っていたこともあり「絶対私はあいつらと同じ路線に乗らん!」と拒否っていたところもあります。ヒネた子供ですね(笑)。

かくして私が実に小学校3年くらいから貯め続けたお金で念願のパソコンを購入したのは実に中学2年。ゲーム三昧の人生送る私にしたらずいぶん遅咲きのスタートでした。機種はNECのPC-6001mkⅡ。当時「話せる」(音声合成)「漢字る」(漢字表示)といった機能をアピールし、それでいて本体価格が10万円を切るというコスパにすぐれたモデルでありました。さらに私が購入したときは特売だったのか、何と本体39,000円とかでこれをゲット。とは言え貯めたおこづかいでは本体買うのが精いっぱいで、モニタとデータレコーダーは親に出してもらったのですが…。

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▲写真はPC-6001mkⅡの上位機種のPC-6601。ちなみにデータレコーダーは当時買ったままのもの。あれからもう30年以上経つのに未だ現役です!

念願のパソコンを買ったので市販のゲームソフトも何か欲しいところ。私はファミコンなどに当時なかったアドベンチャーゲームに興味があったのですが、そのとき売り場に欲しいタイトルがなく、じゃあどうすんべと売り場をしらみつぶしに探したところ、あるひとつの興味深いバッケージを見つけてしまったのです。

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その当時つくばEXPOにも行き、3D映像にも興味あった私の琴線にそれが引っかかりました。そしてそのパッケージにはこうも書いてありました。

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自身のPC-6001mkⅡの中で、つくばEXPOで見たような3Dが体験できるような、そんなイメージが私の中に浮かびました。しかもゲーム内容は宇宙空間の中で行なわれるレーシング。

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これだ。
いま買うのは何をおいてもこれしかない。

かくして、私のコンピューターゲーム原初体験はこの「プラズマライン」になったのです。が、初めて遊ぶのが本当にこれかよっていうくらい、当時の私にはハードルが高い選択だったと私は後から知ることになるのでした。

解説しましょう。前述したようにこのゲームは宇宙を舞台にしたレーシングゲームです。宇宙船は動き続けるにあたってどうしても燃料を補給しながら進まなくてはならないのですが、その補給の方法が「宇宙空間に浮いている燃料物体「トロウトン」に、低速(SAFETY)で接触する」というもので、高速でブッ飛ばしている船体をいったん停止寸前くらいの速度に落としたうえで回収しなくてはならないのですね。燃料はレーダーに映るとはいえ速度が速いと通り過ぎてしまうので、場合によってはバックして取りに行かなくてはなりません(なお、船体を修復するためのシールド「グリバイス」も同様の方法で回収します)。このため最高速度でブッ飛ばしているだけでは決してクリアできないゲームになっています。

宇宙空間の中で回収するのは燃料やシールドだけではありません。このレースではしばしば宇宙海賊「ジャッカーズ」が出現し、攻撃?を加えてくるのですが、これに対抗する武器がコース内に点在しているのです。回収方法は同じですが、こちらは敵に向かって発射することができます。おぉ、なんか松本零士的なバイオレンス宇宙の様相を呈してきたぞ!
ただし、このレースのルールでは武器の使用が禁じられており、コース途中にあるチェックポイントで武器が見つかると退場を命じられるという(何という細かい設定!)。ちなみにチェックポイントを武器で破壊することができますが、その後どうなるかは言わなくても分かると思います…。

チェックポイントはこのゲームでいうところの「面の区切り」の役割を果たしているのですが、何とこれも2通りのパターンが存在します。ひとつはコースの中に浮いている建造物の中に単に入れば良い場合で、こちらはチェックポイントを見失わなければ比較的ラク。厄介なのがもうひとつのケースで「チェックポイントが惑星軌道を回っている」ときで、この場合は惑星の大気に接触しないように位置をキープしながらチェックポイントまで位置を微妙に調整しなくてはなりません。なお、どちらのケースも最徐行(SAFETY)に速度を落としてないとチェックポイントに入れません。

さらにこのゲームでは宇宙空間のコースに様々な隕石や宇宙のチリが散在しており、これらに触れるとダメージを負います。ちなみに宇宙とは言えコースが定められており、コースアウトしそうになってもダメージを負います。そのままダメージを負い続けるとエンジン、レーダー、燃料タンクのいずれかが破壊され航行が困難になるという…故障まで芸が細かい!

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と、ゲーム内容をかいつまんで説明しましたが、何が言いたいのかというとこのゲームはとにかく「気を付けなくてはならないことが多い」のです。

現在の速度は適正か?
燃料の残量大丈夫か?
シールド残量どのくらいだ?
海賊いるけどどこかに武器落ちてないか?
チェックポイントまでの距離はあとどのくらい?
武器まだ持ってたっけ?
自機の位置、コースの端に近づきすぎてない?
いまレースの順位何位だ?

このように、レーシングと言いながらゲーム中に気を付けなくてはならないことが山ほどあり、正直初めて買うパソコンソフトとしてはハードル高過ぎだったかもしれません。何せ買ってから最初のチェックポイントを通過するのに1ケ月かかかったくらいですから(マジで!)。

でもその「ハードルの高さ」を私は「宇宙空間を自在に疾走するために克服しなくてはならない試練」と受け止めました。そしてそれこそが私がファミコン等のゲーム専用ハードに背を向けて得たかったものだったのでしょう。

お前らのファミコンでこれができるか。
お前らの中でこの重厚な設定についてこられる奴がいるのか。
お前らにこれに匹敵するレベルで宇宙空間の飛行体験ができるものか。

ファミコンとは違うのだよ、ファミコンとは!

うわーなんかヤな中学生やねー(笑)。
当時中学2年だから、まさに中二び(ry

まぁでもさ、中学生の認識なんてそんなもんじゃないっすか?(言い訳)

人が何かしらにハマるとき、その多くは初体験に起因すると言います。
私にとってのコンピューターゲームの初体験はこれでした。
その結果として私はパソコンゲームにどっぷり浸かり、パソコン雑誌のゲーム記事を書かせてもらえるくらいにまでなったわけですから、実りのある出会いだったのではないかと思います。その後はゲーム業界には進まなかったものの、グラフィック関係の仕事に携わることになったので、そうした意味でも後の人生に影響を与えられたのだと勝手に思っています。
作者の方には足を向けて寝られません。「ブラズマライン」に出会えた人生に、本当に感謝しています。

後日談

社会人になって幾星霜もとい数十年。ひょんなことがきっかけで、何と本作の作者の方とお会いする機会に恵まれました。人生なにがあっても生き続けていると思いがけないことがあるものですね。そのとき作品のパッケージにいただいたサインは、私の一生の宝物です。


[2] 私がはじめてクリアしたファミコンゲーム
ドラゴンスレイヤーIV ドラスレファミリー
1987年 開発:日本ファルコム 発売:ナムコ(※)

(※)MSX版の発売は日本ファルコム。なお下のパッケージならびに文中で使用している画像はすべてMSX2版のものです。手元にこれしかパッケージがなかったので、ご容赦ください。

ドラスレファミリー

「プラズマライン」の項で書いたようにファミコンに対して敵意に近い感情を抱いていた私ですが、何でそんなにも目の敵にしていたんだろうといまにしてみれば思います。
振り返るに、ユーザー層からくるあの「ガキ臭さ」が許容できなかったのかなぁと。ほら中二(ry…だしやっぱ。

そんな私だったので高校に入ってもファミコンは買わず。PCはシャープから発売されていたX1turboを新たに購入。プレイするゲームの嗜好はどちらかとRPG寄りで「ザナドゥ」(シナリオⅡ含む)、「ロマンシア」など難度が高い作品をガンガンやり込み、ゲーム廃人まっしぐらな人生を歩んでいたあの頃のこと。

「これ攻略してみないか?」

と友人から提案されたタイトルが本項で紹介する「ドラスレファミリー」でした。その友人は買ったものの攻略できそうもなく頓挫しているという。

当時の私はいろいろな友人の解けないゲーム攻略請負人みたいなことをやっており、今回のこれもそんな流れで持ち込まれたのでしょう。

(うわーファミコンやこれ…)

いつもなら「私に解けないゲームはない!」くらいの勢いで引き受ける私ですが、このときばかりはさすがに躊躇。

ドラスレファミリー01

なんだよこの「ドラスレファミリー」って投げやりなタイトルは。
「ドラスレ」って「ドラゴンスレイヤー」の略称であって、それそのままゲームタイトルにするとか恥ずかしいと思わんのかね。しかもグラフィックといい作りといいファミコンっぽさ全開だし…。

ドラスレファミリー02

あの日本ファルコムが作ったのは知ってたけど、何か自分の好きなシリーズをすごく安っぽいものに貶められた気がして、できれば手を出したくないタイトルではありました。が、「解けるまでファミコンごと貸してくれる」という条件と「お前ならクリアできるかも知れん」というようなことを言われたのに気をよくして結局引き受けたのでした。

マップ制作も込みで攻略にかかった時間はおおむね1ケ月。

いや、考えに考え抜かれて作られた素晴らしいゲームだよこれ?
いままで
ファコミンだからって不当にdisっててごめんなさいっ!!

本作は確かにマップこそ広大だけど、家族キャラそれぞれに担当ステージのようなものがあり、ペット(ポチ)、パパ(ゼムン)、妹(リルル)、ママ(メイア)の順にそれぞれ向いているところを攻略していくようにすればそんなに迷うような作りではありません。

ドラスレファミリー03

このゲームが難しいと言っている人は見せかけのマップの広さにダマされているだけのような気がします。ファミコンでほかにいくらでもひどいマップのゲームありますよ。

ゲーム自体は家族それぞれがボスキャラを倒して得てきたクラウン(王冠)を使って家族中一番何の役にも立たない兄(ロイアス)がドラゴンスレイヤーを入手してラスボスであるディルギオスを倒してエンディング。他の家族(特に妹)と比べて何のスキルもないニートみたいな存在の兄貴ですが、ドラゴンスレイヤーが使えるだけで英雄扱いってどうなんよと当時ずいぶんネタになったものでした。

ドラスレファミリー04

で、このゲームなにがそんなに良いかというと、

「ゲームをラクに進める方法が実は数多存在していて
 気付けば気付くだけ効率の良い進めかたが可能になる」

というところにあると思います。

当時は日本ファルコムもそれ以外のメーカーも高難易度の作品を出してはプレイヤーに挑戦状を叩きつけるような風潮がありました。その大半が攻略法をほぼ決められており、「そのやり方でないとクリアが極めて困難」というものでした。

そんな中でこの「ドラスレファミリー」は、一本道に見えても実は隠されたショートカットがいくつもあります。例えば、

クラウンは実は遠いステージから順に取っていくようにすれば後半になるほどボスキャラ戦がラクになるし、

ドラスレファミリー07

妹のリルルを駆使すれば実はパパ(↑)すら不要になるし、何ならアイテム回収もほとんどリルルに任せてしまえばいい…妹キャラ最強だね(笑)。

ドラスレファミリー06

さらにほとんどのアイテムは迷宮内で手に入れるほかに買うこともできるので、これもクリアまでの時間削減に役立ちます。

そうして効率をどこまでも追求していくと、何と最初は1ケ月かかっていたものが、何と通しプレイ5時間でクリアできてしまったりします!
(効率厨的なプレイを突き詰めればもっと短縮可能だと思います)

噛めば噛むほど味が出る。これはまさに「スルメゲーム」ですな。スメルゲームじゃないですからね。臭くないのでカン違いしないように!

ともあれこのゲームを攻略したことがきっかけで「ファミコン=子供だまし」という偏見から解き放たれた私は、家庭用ゲーム機にもそれなりに手を出すようになり、やがて家の中がゲーム機だらけという社会人としてどうよという大人に成長していくのでした。めでたしめでたし。

後日談

大学生になって「マイコンBASICマガジン」のライター募集に応募した際にこのとき作成したマップを電波新聞社に送りました。これです。
(写真ボケボケですが、デカいマップというのは伝わるでしょう?)

ドラスレファミリー自作map

結果、私はレスキュー隊(読者のゲームに関する質問に答える担当)として採用されたのでした。
このマップが採用の決め手になったのかは分かりませんが、後に私はこの雑誌で日本ファルコムの担当みたいな感じで記事を担当させていただくことになったので、これも「ドラスレファミリー」が繋いだご縁なのかもしれません。日本ファルコムには様々な良作がありますが、いまでも私が同社で最も好きな作品はこの「ドラスレファミリー」です。こういうパズル的な攻略のし甲斐があるアクションRPGは、いまは作れないんじゃないかなぁ。


ということで、続きはこちら


#自己紹介をゲームで語る

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