歌を歌うきらめく正しい女の子と、深夜に陰気な小説を書くわたし
高校の同級生に、歌を歌う女の子がいた。容姿もかわいらしい彼女はかわいらしい洋服をいつも身に纏い、聡明で、感受性が強くて、性的なものを嫌悪する、どこまでも正しい女の子だった。
2年生の合唱コンクールのとき、彼女がクラスの発表とは別に、ピアノを弾く子とユニットを組んで有志で出場したのを覚えている。なにを歌ったか、どんな歌声だったかとかは全然覚えていないけれど、客席から彼女を見ながら「あんなふうになれたらよかった」と静かに絶望したのは今でもはっきりと思い出せる。
そのころのわた