見出し画像

Rock Novel 「シンデレラ物語」Don’t Know What You Got till it’s Gone♪

トム の心の呟き 1986年 春

シンデレラもジョン ボンジョビを介して
マーキュリーレコードと本契約
が決まり、レコーディングもイギリスから
大物プロジューサーのアンディ ジョーンズ
を迎え順調だし、前金でジャガーも家も
ギターもカルチェの時計も買った、ほんとなのか?
時々思うんだこれは全て夢で、消えちまった
ら、どんな気持ちなんだろうってね。


フィラデルフィアの3月、雪道の中レコーディング
スタジオに着いたら、グランドピアノが
目の前にあったから、弾いてたんだよ。
そしたら、アンディがドアを勢いよく
を開けて入って来た。

「おい、トーマス ピアノでお遊びしてる
暇はないぞ、仕上げなきゃならない曲が
既にあるんだろうが!」

「♪♬♫」

「聞いてるのか!」

「新しい曲が浮かんだんだよ、今書かないと
消えちまう、前に!」

「俺の時間を無駄にしないでくれよな!」

「ちょっとその大きな口を閉じておいて
くれないか! また飲んできたんだろう
ここに来る前にさ!」

「それが⁉️ 俺のやり方につべこべ言うな。
こうやってツエッペリンやストーンズとも
レコード作って来たんだからな。」

今夜もまた何も進みそうにないなぁ。

「トム ! 夜食買って来たよ。」

「ジェフ食べる今気がしない。」

「また、アンディに絞られてるの?」

「まーな。」

「まぁいいから、食えよ!俺の母ちゃんが
作ってくれた巻き寿司とお前の
好きなツナサンドとミルク🥛買って来たんだよ。」

「あ、あのキツネ🦊のスシある?」

「あるよ!
オイナリさん!まぁキツネの神様だからね。
商売の神様らしいよ〜」

「甘くて旨いな😋!ジュンさん元気?」

「ああ、母ちゃんは寿司屋で今でも
働いてるよ。」

「そっか、ジェフの出世喜んでるだろ?
お前も結構ワルだったから、苦労かけただろう
うし?」

「ああ、高校ドロップアウトしそうに
なった時はさすがにいつも俺をかばってくれる
お袋がさ、親父と一緒に俺を追い出しに
かかって、目が覚めたよ!『こりゃ、
本気になってギター🎸やんないとな』ってね。」

「ありがたいよな、おふくろって。」

「うん、大事な物は失いかけないと
分かんないもんだよね。日本の諺に
『親孝行したい時には親は無し』って言うのが
あるって、かーちゃん言ってたな。」

「今頭に浮かんだ曲があってね、それで
さっきアンディと口喧嘩してたんだけどさ。
聴いてくれる、ピアノで始まるんだ。」

「ああ、聴かせてよ。」

「♬♪♬ Don’t Know What You Got
Till Its Gone♫」

巨漢のアンディ ジョーンズの啜り泣きが、俺の
背後で聞こえたんだ。振り返ったら
奴の頬に涙が一筋流れていた。

「トーマス、さっきは悪かったな。謝るよ。
ああ、これはいい曲だ、ほんとうに。」

「ありがとうございます。さっきは僕も
生意気言ってすいませでした。」

「おお、ジェフ、フレッドとエリックも
呼んで来てくれ、シンデレラ作戦会議だ!」

「はい、ミスター ジョーンズ!」

「ボンジョビに負けない曲作ろうな!
トーマス キーファー 君。」

「はい、もちろん!」

この曲は2作目のアルバム「Long Cold Winter」
に収められて、シンデレラ最高のヒット曲
になったんだ。アンディの涙とジェフの
おかあちゃん、ジュンさんのキツネ寿司の
お陰だね! 狐の神様のご利益かな?!

The End

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?