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ナガミヒナゲシについての知識のタネ

暖かくなってきたこの時期、よく見るオレンジの花。「ナガミヒナゲシ」という花ですが、どのようなイメージをお持ちでしょうか?遠くからでもよく目立つ色で、たくさん咲くのできれいに見えますよね。しかし、実は注意しなければならない植物として取り扱われています。今回はそんな「ナガミヒナゲシ」について、どんなところに注意しなければならないのか、ご紹介します。


~特定外来生物に匹敵するレベル?~

 外来植物(帰化植物)として日本全国に雑草化している「ナガミヒナゲシ」ですが、生態系に悪影響を及ぼす恐れのある「特定外来生物」や「要注意外来生物」には指定されていません。しかし、その爆発的な繁殖力や、根や葉から他の植物の成長を抑制する物質(アレロパシー物質)を出し、生態系に影響を及ぼすことで「特定外来生物」に匹敵するリスクがあると言われています。

 繁殖力の強さ、それからアレロパシーについて、詳しく見ていきましょう。


~驚くべきタネの数と繁殖力~


 繁殖力が強い「ナガミヒナゲシ」ですが、その理由として、まず1固体が作るタネの数がすごいです。花が咲き終わった後に細長い果実を作るのですが、(長い果実を作るので「ナガミヒナゲシ」という名前)その1つの果実の中には約1500~1600粒ものタネが入っているそう。大きな固体では100個ほど果実を作るので、1固体だけで15万~16万粒のタネを落とすのです。

 ちなみに、たくさんのタネで思い浮かぶタンポポの綿毛(タネ)の数は約200~300粒(綿毛ひと固まりで)なので、1500粒がどれだけ多いのかがわかりますね。

 このように大量のタネを作ることで、大量に繁殖するということが1つの理由です。

 もう1つは、未熟な種でも発芽する力があるということです。

 植物は、花が咲き終わってタネを作る際、そのタネに十分に栄養を蓄え、発芽力を高めます。(タネが成熟する、熟する、と言います。)タネが成熟したら、風や雨、動物の力を借りて植物はタネを落とします。そうやって発芽力の高いタネを落とし、子孫を増やしていくのが大体の植物の姿なのですが、「ナガミヒナゲシ」の場合、成熟していないタネにも発芽する力がある、というのです。

 これはとんでもないことで、抜くだけ抜いて枯れるまで地面に置いておくとか、中途半端に処分をして未熟なタネが落ちる可能性を残してしまうと、そこからまた発芽してどんどん増えてしまう、というわけなのです。


~アレロパシー(他感作用)物質~

 アレロパシーとは、ある植物が他の植物の成長を抑制したり、虫を寄せ付けない、または引き付けるなどの効果のことで、「他感作用」とも呼ばれます。その名の通り、他に向けて何かしらの作用をもたらす物質を出す植物があります。

 こちらで紹介した「フィトンチッド」もアレロパシー(他感作用)の一種です。

 その中で「ナガミヒナゲシ」は、他の植物の成長を抑制するアレロパシー物質を出し、その勢力を広げています。根からその物質を出し、近くの既にある植物たちの根の成長を抑制しつつ、自分たちはどんどん育つ。そういった植物が本来の生態系に悪影響を及ぼしてしまうため、「特定外来生物」や「要注意外来生物」に指定されている背景があります。「ナガミヒナゲシ」はそれに匹敵するレベルで繁殖力やアレロパシーについて、中止しなければならない、というわけなのです。


~駆除は開花前が最適~

 「ナガミヒナゲシ」の注意しなければならない理由として、タネの数、発芽力の高さ、アレロパシーについてお話しましたが、駆除をする際には、これらを踏まえ「開花前」そして「根から抜く」方法が最適です。

 花が咲いてしまえばタネを作るまであっという間ですし、周りの植物への影響を考え、根を残したくないですね。

 もし、花が咲いていたり、果実ができている場合、できるだけこぼさないように慎重に抜き取り、袋にしっかり入れて、自治体の定める処分方法で処分しましょう。また、茎などが傷ついて白い液体に触れると、かぶれる場合がありますので、作業の際は手袋をつけるようにしましょう。


 今回は「ナガミヒナゲシ」についての知識のタネでした。全国に広がっていますから、見たことがない人のほうが少ないのではないでしょうか。まずは1人1人が注意してみる意識が大切なのだと思います。


追記:注意しなければならない植物なのですが、ほっといても勝手にきれいな花が咲くため、わざわざ残しておくという人も少なくありません。処分しろ!と無理に言ってもトラブルになりますし、きれいなのもわからなくはないので難しい問題ですね…。

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