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たった一人が書いた本を読むことに人生を懸けると決めた

作家・橋本治と聞いて、いったいどれだけの人がピンと来るのだろう?
夏目漱石のように学生時代に習って知る人でもないし、SNSで読書家と自負するアカウントでも頻繁に目にする名前ではない。

それでも私は、橋本治の本を読むことにこれからの人生を懸けると決めた

知る人ぞ知る、ではないけれど、確かに橋本治を読んでいる人はいる。でも全部の著作を読んだ人は恐らくいないだろう。
なぜならば、分野があまりにも多岐に亘るから。
橋本治を知らなくても、よく読書をする人であれば「上司は思いつきでものを言う」というタイトルだけは聞き覚えがあるかもしれない。ビジネス書や新書をよく書いたかと思えば、ある人は「橋本治は編み物の人だ」と言う。または、橋本治を古典翻訳の人だと言う人もいる。漫画評論家と言う人も、歌舞伎・浄瑠璃の解説者と言う人も、日本美術史を書いた人だと言う人もいる。イラストレーターと言う人もいるかもしれない。桃尻娘の人?などといかがわしい作品名を出す人もいる。恋愛論や、映画を語る本も、時評もある。もちろん、普通の作家と同じようにエッセイも小説も膨大にある。
それらすべてを、一人の作家が書いた。同姓同名の別人ではなく、たった一人が。

選挙で“票が割れる”という現象があるように、あまりにも多岐に亘るためにそれぞれの分野では印象が薄くなるのでは?と思われるかもしれない。でも橋本治は、書くと決めたら徹底的に論じ尽くすから読者に中途半端な印象は持たせない。「橋本治の本を読んだことはあっても、全部を読んだ人はいないだろう」と私が言うのは、ひとつの分野を徹底的に論じ尽くすから読者は越境する必要性を感じないからだ。言い方を変えれば、橋本治が書いた分野すべてに興味がある人は少ないのだ。ビジネス書は読んでも歌舞伎などの古典芸能に興味はない人や、漫画は読むけど編み物に興味はない人はいくらでもいる。
私は、それらすべてを書いた橋本治に興味がある。

橋本治は、誰も書かないようなことを選択的に書いてきたような側面がある。独自の道を歩んだと言えば格好いいが、常にマイノリティだったとも言える。だから本はほとんど絶版になってしまう。図書館からも廃棄されてしまう。これが、橋本治の本を全部読んだ人がいない第2の理由。

橋本治の本を読むことに人生をかけると私が言うのも大げさではないとわかっていただけただろうか?
私は、橋本治の本を出来うる限り読みたい。でもそこには、本を入手する高いハードルもあるし、自分がいまだに興味を持てない分野に踏み込まなければならないハードルもある。

ここに書くことは、ハードルをひとつひとつ乗り越えようとする私のドキュメンタリーです。橋本治を知らない人にその魅力をお伝えできれば嬉しい。橋本治の本を手に取るきっかけになればなおのこと嬉しい。橋本治の本が手に入りやすい世の中になればこれ以上嬉しいことはない。
本を読まない日はないと言える日々を送る私が、本とは全然関係ない仕事をフルタイムでしながらどれだけの本を読むのか…橋本治に興味はなくとも、本を読みたい人のモチベーションになれればいいな、という気持ちも込めて。

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