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生活のなかの創造活動

「現実というものは歪なものだ。その歪を解消して、全てが整理整頓された中で生きて行くのは、ある意味で、しんどくもある。毎日毎日、そのきれいに秩序立った日常の中で、なにかを創造し続けなければならない─それをすることになにかの意味はあるのだと、見出し続けなければならない。50を過ぎて、56歳になってしまった矢嶋富子は、その甲斐のない創造活動に倦んじてしまった。別に、日々の掃除をさぼるわけではない。炊事洗濯の一々に手抜きをするわけではない。しかし無意味な几帳面が自分を疲弊させることを、単調な現実の繰り返しの中で理解してしまった。」
──橋本治『巡礼』


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