「わたし」とは、わたしの性格のことなのか?
『MBTIへの招待』の解説の第8回です。
今回は第2章を読んでいきます。
第2章は、第1章で仮決定したタイプ(ENTJなど)をもとにして、自分と他者への理解と、自分も含めての関わり方についての解説が続きます。
なんだかややこしそうに感じますが、2章のタイトルはこんな感じになっています。
「自分や他者理解に役立つ複雑かつややこしい考え方」
先が思いやられます。
で、第2章を開くと、最初にMBTIは「心を知る道標として」存在することを主張しています。ではMBTIにおける心とは何か?というのをこの第2章から引用してみます。
心の働きを考えるうえでは、心的過程の表れとしての行動を見るほかないのである。
以前に紹介したとおり、MBTIでは「心とは習慣から成り立っている、その習慣の背景にあるのが心が持つクセ」という考え方がベースとなっています。これは伝統的な行動主義的なアプローチのように考えていいものか混乱してきますが、とりあえずは旧来の行動主義として定義しているように見えるが、認知も含めて行動と考えている、と解釈して読み進めてみます。このあたりがMBTIのわかりにくいところな気がします。
ちなみに行動主義といった場合は、
行動主義
心や意識は外部から観察できないため、行動のみで説明する必要があるという主張(ワトソン)そのため「意思や自由意識は存在しない」とする立場。また、他者の心について述べる場合は常にふるまい(行動)や発話を心の結果として述べていると考える主張(ギルバート・ライル『心の概念』1987)
というあたりを指していると雑に理解していればいいかと思います。
以降、2章は『タイプ論』に基づいた機能の解説が続きます。MBTIにおける機能についておさらいすると、
心の方向性 外向・内向
心的機能 感覚・直観・思考・感情
外界への接し方 判断的態度・知覚的態度
の組み合わせで表すものになります。
そして機能についての本書の解説をまとめると、
主機能
優先的に使われている心的機能
この機能を使うことに心地よさを感じる
補助機能
主機能とのバランスを取るために目立たずに使われている心的機能
この機能を使っているとき周囲からは捉えどころがないように見える
第3機能
3番目に使われている心的機能で主機能と補助機能とは異なる行動を促す
劣等機能
使うのが最も苦手な機能で当人に気がつかずに使われる
という感じでまとめられ、MBTIではこれを「タイプダイナミクス(思考の序列)」と呼んでいます。これら4つの機能がうまくバランスを取り合って人は生きている、それが外に現れているのを「性格」とする、というのがタイプ論的な考え方になります。
かといって4つの機能のバランスや組み合わせがその人のすべてなのか、というと本書でそれは明確に否定されています。2箇所から引用してみましょう。
類似するということは、人の一面であり、もう一方に独自という一面がある。
人は、タイプで説明できることを超えているし、詳細にタイプを記述しても、人が個々に受けているたくさんのタイプ以外の影響を無視してしまうことになるし、そこにいる個人の実態とは別に、固定的な心理学的な見方をしいてしまうことになる。
ここでは「タイプがすべてではない」というのが『タイプ論』の主張であって、タイプで人を全部理解しよう(説明できる)とするのは誤りである、ということを言っています。またそのようにはタイプは使えない、とも書かれています。
ここの理解は難しくないと思います。「わたし」を説明する、自己紹介する、というときに、どのように自分を表現するでしょうか?性格だけでなく趣味や年齢や出身などなど様々なことで「わたし」を表現すると思います。それを踏まえれば「タイプ=わたし」という考えはひどい誤りであるのがよくわかるかと思います。
で、4つの機能に話を戻します。
ここにはちょっと複雑な点があります。MBTIにおける機能は『タイプ論』における機能と一致していないという点であります。この辺りは、わたしのタイプである「ENTJ(MBTI)」と「外向的直観(タイプ論)」で説明していきたいと思います。
まずはわたしの機能について、見やすくするために両者の言葉遣いを揃えてまとめてみましょう。
MBTIでの機能
タイプ ENTJ(外向思考)
方向性 E(外向)
内界で働く心的機能 N(直感)
外界で働く心的機能 T(思考)
外界への接し方 J(判断的態度)
主機能 外向T(思考)
補助機能 内向N(直感)
第3機能 外向S(感覚)
劣等機能 内向F(感情)
タイプ論での機能
タイプ 外向的直感
方向性 E(外向)
主機能 N(直観)
補助機能 T(思考)
第3機能 F (感情)
劣等機能 S (感覚)
と、同じようでかなり違うように見えます。
というか「そもそも主機能が異なるってどういうことなの」とも思います。じつはこれはMBTIの特徴である「外界への接し方」という指標がポイントのようで、その指標から導く「外界で働く心的機能」をMBTIでは主機能としているようです。そして『タイプ論』での主機能が、MBTIでは「内界で働く機能」となるようです。
なんだか「おわかりただけただろうか?」みたいな不思議な世界ですが、いかがでしょうか。おわかりいただけたでしょうか。
最後に
MBTIについて「タイプ論をもとにはしているが違うものである」とはよく言われますが、どこがどう違うのかというのがなんとなく見えてきた気がします。
先行きが心配になる展開ですが、じつは表記の仕方が異なるだけで内容はそれほど違いなく、このあたりは章が進んでいくとよくわかります。
次回は第3章「心のバランス」を読み進めていきたいと思います。
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