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今西和男に感化された若者たちを私は確かに見たんだ~若い人たちに来てほしいなら若い人たちが生き生きできる環境をつくることから始めよう その3~

私がまだ地元岐阜で働いていたころの話です。

私は新卒でFC岐阜という、当時Jリーグに昇格したばかりのクラブにフロントスタッフとして入社しました。地域貢献推進部という部署に配属されました。
当時、直接あるいは間接的によく言われたのは
「早稲田の大学院まで出て、なんでそんなところで働いているの?」と
「Jクラブでは社会人経験がないと(即戦力じゃないと)役に立たない。」
ということでした。これについては、いずれ別で書いてみようと思います。


さて、今はどうかわかりませんが、私がFC岐阜に在籍していた当時(2008年から2012年)は、大学生のインターンシップを頻繁に受け入れていました。授業の一環で数日間、数週間だけ来る学生もいれば、長期休暇を利用して2,3ヶ月の学生もいました。さらには、大学を休学して1年間インターンシップに来る学生までいたのですから驚きました。

多くの地方クラブがそうだと思いますが、社員教育や研修制度などが十分に整っていない状態でしたので、仕事のやり方や社会人としての常識を丁寧に教えられるような状況ではありませんでした。社会経験の浅い若手スタッフは、私も含め、見よう見まねでなんとか仕事をしていました。そのような状況でしたので、インターンシップ生にとっても恵まれた環境かというとそうではなかったかもしれません。
しかし、そんな環境下にあって、私を含めた若いスタッフやインターンシップの学生にとって、他のクラブでは考えられないほど幸運だったのは、社長が今西和男さんという稀有な存在だったことです。

今西さんは、サッカー界での実績はもちろんのこと、人間的な魅力に満ち溢れた、偉大な教育者でもありました。サンフレッチェ広島の創設に尽力し、大分、愛媛、岐阜など、多くのクラブの創設や経営にも携わってきましたし、日本サッカー協会の強化の立場でも日本代表をW杯初出場に導くなど、今の日本サッカーの礎を築いてきました。そして何より、現サッカー日本代表森保一監督をはじめとして、多くの選手や指導者を育てるなど、人材育成・人間教育においていかんなく手腕を発揮してきました。ノンフィクションライターの木村元彦氏は丹念な取材を通して今西さんを「育将」と呼びました。

今西さんは、若手スタッフにも、インターンシップ生にも、とにかくみんなに一人ひとり声をかけます。どういう理念のもとにクラブを運営しているのか、どういう姿勢で仕事にあたるべきか、など、本質的な話を幾度となく聞かせてくれます。そして、必ず一緒に食事をしながら、過去の経験を話したり、質問をして話をさせたりと、分け隔てなく接し、その人の持ち味を引き出してくれるのです。時間を共にする幸運に恵まれた若手スタッフやインターンシップ生はみんな今西さんを慕い、感化され、そして仕事に励みました。仕事の成果がどうだったのかは第三者の評価に委ねるとしても、少なくとも今西さんの教えの通り、誠実に、謙虚に、ひたむきに、一つひとつの仕事に向き合っていたと思います。それはインターンシップ生であったとしてもです。

その経験があるので、私は今でも大学生あるいはそのくらいの年代の若者に非常に期待をしています。特に、自ら決断して事に当たろうとする若者においては、受け入れる側の在り方次第で遺憾なく力を発揮してくれると思うのです。もしかしたら結果が出るのは何年か後になってからかもしれませんし、その仕事から離れた後かもしれません。

都農町の労働力不足、若者不足は本当に深刻です。であればこそ、今都農にいる大人たちが、そういうことも織り込み済みで、即戦力でなくてもとにかく若い人たちを受け入れる土壌をつくっていかなければならないと思うのです。その土壌がないところに、いくら若者を呼んできたところで、すぐにいなくなってしまいます。よそにはより良い環境がいくらでもあるからです。多少のことには目をつぶってでも若者の良さを引き出そうとする度量が、この町には必要だと思います。

そう自分にも言い聞かせています。


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自分の真意を相手にベラベラと伝えるだけが友情の行為ではないということさ。それがわたしの提唱する真・友情パワーだ…(キン肉アタル)