見出し画像

共同体の秩序に反した者の死をどう位置づけるか ソポクレス『アンティゴネ』

オイディプス以後のテバイ

 テバイのオイディプス王は、自分が知らずして父を殺し母を娶ったことを知って、みずからの目を潰した。(『オイディプス王』[427BC? 高津春繁訳、『ギリシア悲劇』第2巻『ソポクレス』所収、ちくま文庫]参照)。

 そして世界を放浪したのち故郷に帰らぬまま死んだ(『コロノスのオイディプス』[406BC? 高津訳、前掲『ソポクレス』所収]参照)。

 その娘アンティゴネ(以下、特定の翻訳書名などを除き、長音を省略する)とイスメネは帰郷する。

 そのテバイではエテオクレス王とというふたりの兄どうしが王位をめぐって争った。ポリュネイケスは、アルゴスのアドラストス王の軍勢を得てテバイを攻囲した。兄たちはふたりとも命を落とした(アイスキュロス『テーバイ攻めの七将』[467BC? 高津訳、『ギリシア悲劇』第1巻『アイスキュロス』所収、ちくま文庫]参照)。

ここから『アンティゴネ』(442BC? 呉茂一訳、前掲『ソポクレス』所収)が始まる。

「3部作」ではない

 ソポクレスの『オイディプス王』『コロノスのオイディプス』『アンティゴネ』の3作を、俗に「テバイ3部作」と呼んだりする。この3作をこの順に1冊にまとめて刊行する例もある。

ここから先は

1,579字
この記事のみ ¥ 100

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?