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鼻に空気が通るという事

呼吸が正常とはどういう状態を言うかわかりますか?
鼻もに口もに芳醇な空気が溢れ淀みなく通り過ぎ同時に味わうことも出来る状態のことをさしますね。


私は幼少の頃より鼻づまりが酷く、原因は鼻の中の粘膜の腫れ、さらに鼻の真ん中の軟骨がひん曲がってることにより穴が狭くなって鼻通りが悪化というダブルパンチを患っており人生の殆どを鼻の詰まった状態で送っていました。

特に花粉舞い散り鼻襲う春先の鼻づまり具合と言ったら普通に呼吸が止まりそうな毎日、ドメストしたさが募る一方でありました。

余りに酷くなってきたので病院へ相談に行ったところ、診断は重度の鼻づまり。粘膜の腫れの要因は花粉等アレルギーによる下鼻甲介と呼ばれる部分の腫れ。これは薬での治療も試みましたがビックリするほど利かなかったので即手術を検討、レーザーすら選択肢にあがってこず。軟骨の曲がりについてはとにかく手術で曲がった骨を切除するしかない状況。なぜ自分の軟骨がこんなにもひん曲がっているのかよくわからないのだが根性が曲がっていることと因果関係がありそうだ。

という訳で今年の春先に三泊四日の入院による左右鼻の穴開通工事を慣行。

工事は優しく優秀なスタッフさんの手により滞りなく成功。
久しぶりの全身麻酔は落ちる瞬間が癖になりそうです。

大変なのが手術が終わってから。
手術後からとめどなく血が溢れ出すのでそれを綿球(鼻つっぺ)で受け止めつづけるという原始的な方法で対処せねばならず、また当然鼻を吸ってはいけないので人生で一番鼻が詰まった日々を送ることになります。正味72時間位は口呼吸オンリー、口だけでゼェハァ言ってたわけで変な頭痛もしてきます。

この鼻の詰まった状態で食べる病院食がまた味気ない事味気ない事。発泡スチロールでも食べているかのような気分になります。しかし、これまでも鼻は詰まっていたわけで、多かれ少なかれこれまでの私の食味体験というのは完全なものではなかったのではと思い始めます。

「全快した暁にはメシが旨くて旨くてぶっ倒れてしまうのではないか」

いらぬ心配をし始めます。


その後、無事退院するも鼻血は止まらないので両鼻に綿球を入れて数日を過ごし、いよいよ鼻血も止まって鼻通りの改善を実感するようになったある日、いっぱいのスープを飲み下した時にぶった曲げる感覚に襲われました。

「味がする」

味とは5味の事とよく言われますがやはり香りも相まっての「味」、この時飲んだオニオンスープに浮いたパセリの香りが生まれて初めて正確に輪郭をあらわした瞬間だったのです。
これまで全く味が分らなかったという訳ではありませんが、「味」の解像度が段違いにあがりました、15年前のデジカメとiPhone12くらいの差があります。とにかく旨すぎてそっくり返りました。

鼻が通るようになったことにより、香り成分を含んだ空気が大量に流入するようになったためでしょう。これまでは鼻から空気を吸って喉の奥に当たる感覚というのを味わったことがなかったのですが、これは鼻の奥まで空気が流入するようになったことの証左でしょう、知らんけど。

しかしまあ人生の殆どをこんな味のぼやけた状態でいたなんて、何たる大損をしていたのでしょうか。でもこれからの人生はボーナスモード、私の感覚でいうと500円のカレーを全て1000円の味で楽しめるということなんですよ、うらやましいでしょう。


という訳でこれからも美味しい物を目一杯美味しく食べていこうと思います。
皆様の中にも鼻づまりが酷い人がいたら手術なり治療の検討をオススメします、マジで良いです。


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