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「美味しさ」と「脳の認識」の基本原理を学ばない食関係者はモグリ

最近、「料理本」という切り口で書籍をディグっていると、私の欲しい情報が手に入らない問題に苛まれていた。

探せば出てくるような「レシピ」や根拠の記載がない「コツ」のような情報は求めておらずひたすらに「原理原則」や「根幹」のようなもの理解をしたかった、他分野では必ず「そもそも科学とは・・」「法律とは・・」といったような切り口から入っていくものだと思うが、料理や食の分野においては「美味しさとは・・」の根本に触れる書籍にさっぱり出会うことができず、料理を科学すると称しているにもかかわらず科学的な理由も再現性も担保できていないおばあちゃんの知恵袋レベルの手法の羅列に終始するハズレ本を引いてはそのたびに憤慨していた(本当に何冊も何冊もだ!)。

それでもAmazonディガーとしての誇りを胸に、あきらめず探索を進めていると結局はこの一冊にたどり着いた。

そう、我らがNewtonである。

このNewton2016年1月号に「嗅覚と味覚のしくみ」と題し嗅覚と味覚の科学的な仕組みと大脳皮質における「美味しさの認識」についてが簡潔に記載されている。

非常におおまかな内容としては

・嗅覚、味覚はそれぞれ瞬時に分子識別をする高性能なセンサーである

・嗅覚は吸気中の微粒子を、味覚は食べ物の味(五味)を感知し、毒か、栄養かの判別を大目的とするもの

・嗅覚は鼻の奥の嗅上皮、味覚は舌等にある味蕾で感知し、脳で分析する
※味覚は延髄を中継し味の性質によって反射的な反応をする(唾液を分泌する、えづくなど)

・食べ物が「おいしい」かどうかは味覚、歯ざわり舌ざわり等の触覚、また嗅覚の情報を二次味覚野で統合したのち、偏桃体で判定される。

・苦味や酸味は自然界では危険物と判定されるものであり赤ん坊などは拒絶を示すが、何度か経験することにより「安全だ」と大脳が学習すれば最終的に「おいしい」と判断されるようになる。

という余りに基本的で重要な仕組みが記載されている。

特に「おいしい」かどうかは五感情報を脳で統合し判断しているということは料理創作や食を議論をするうえで非常に重要な事実であることは間違いないのだが、どうして私が購入してきた書籍では整理も語られもしていなかったのか、、、これには失望すら感じる。

同様に「おいしさ」には五感を通じた大脳における「学習」がキモになっており学習程度による個人差がある点も非常に重要で、これは料理の提供相手の背景が食の価値に大きな影響をもたらすことを意味している。

もちろんその程度のことを食のプロが考慮していないということはありえないだろうが、問題はそれが科学的な根拠をもって語られていなかったこと、整理され知見として世間的に共有されていないことあると思っていて、これは「科学と食」についての世間的認識の現在地が非常に浅い状態にある事、そしてそこに課題感を持っている人材が少ないことを意味していると考えている。当然食品メーカーなどではガリガリに科学されまくっているとは思うが、これが食の結構なプロにまで浸透していない事は由々しきだな・・と首を捻る次第である。

まあ食は科学以前に先人の知恵が大量にストックされていることによって科学的知識が無くても満足のいく料理の提供が可能という事情もあるだろうが、、

ここで私が提唱したいのは「食を科学的事実をベースに語る事、実践する事」。例えばオムレツの作り方ひとつにとっても「大事なのはフライパンを適温にすること」といったあいまいな解説ではなく「卵液が〇〇℃まで上がることでタンパク質が変性し凝固するため〇〇~〇〇℃の間に保つべき、保つための動作は○○といった手法ををとり、また温度測定の手法には・・」といった詳しい説明こそが一手一手の正しい理解を深め工程の納得性と再現性を生み出すことができるのではないだろうか。

私は料理の楽しさは理科の実験やプラモデルに近いと常々思っている。その魅力は掘り下げれば掘り下げるほど深く、そして明確な理由が隠されており、それらはそのまま「おいしさ」と直結していくものであるという学びの出口、歓喜も用意されている。

こんなに楽しい遊びは無いではないか!だからこそもっと深く食を語ろう、遊びつくそう。そのためにはまずこのNewtonを手に入れ、正しい根本を学んでみることから始めてみるのが良いのでは?と私は言いたいのであった。

という訳で是非読んでみよう。クソ楽しいから。

↓当該記事だけの電子版もあるぞ!!!!!

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