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新型コロナと教育――2つの報告書

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が子どもたちの教育に及ぼしている影響について、ユニセフ(国連児童基金)・ユネスコ(国連教育科学文化機関)・世界銀行が新たな報告書を発表しました(10月29日)。

-ユニセフ(日本ユニセフ協会訳):新型コロナウイルス 学校再開や遠隔授業に格差 ユニセフなど報告書発表
https://www.unicef.or.jp/news/2020/0227.html

-UNICEF: Children in the poorest countries have lost nearly four months of schooling since start of pandemic - UNESCO, UNICEF and World Bank report finds
https://www.unicef.org/rosa/press-releases/children-poorest-countries-have-lost-nearly-four-months-schooling-start-pandemic

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『私たちは何を学んだのか:各国のCOVID-19対応に関する教育省調査でわかったこと』What have we learnt? - Findings from a survey of ministries of education on national responses to COVID-19)と題された報告書では、今後短期的・中期的に模索していくべき課題として以下の8つが挙げられています(p.43)。

1)児童生徒の脱落・不関与状況(dropout and disengagement)のモニタリング
2)遠隔学習が果たし続ける役割の検討
3)補償教育の計画およびその有効性の追跡
4)成績評価および変化しつつあるその役割への新たなアプローチ
5)学校再開に関する決定の地方分権化
6)実施されてきた保健・安全措置の有効性の評価
7)教員のスキル開発と支援
8)ウェルビーイングとよりよい精神保健のための心理社会的支援

 ユニセフ・ユネスコ・世界銀行も参加する国際的キャンペーン「未来を救え」(Save Our Future)も、10月22日に『未来を救え:世界の子どもたちにとっての教育上の大惨事を回避する』Save Our Future: Averting an Education Catastrophe for the World's Children)と題する白書を発表しました。

-Education Cannot Wait: Global Movement Calls for Increased Investment in Education to Avert Catastrophe
https://www.educationcannotwait.org/save-our-future/

 白書では、COVID-19の影響で世界の教育が3重の危機――(1)教育の中断、(2)教育予算の縮小、(3)すでに危機的状況にあった教育のさらなる悪化――に直面していると指摘したうえで、各国政府および国際社会がとくに以下の7つの行動をとるよう呼びかけています。

1)学校の再開を優先し、保健・栄養のような重要なサービスをあらためて子どもたちに提供できるようにするとともに、労働者を守り、彼らを第一線で働く人々として処遇しなければならない。
2)教育を変革し、その包摂性、エンゲージメントの度合いおよび適応性を高めることによって、教育が、私たちがどうしても必要としている持続可能な開発の推進力になれるようにする。
3)教育労働者を強化し、教員その他の専門家が、すべての子どもの学習とウェルビーイングを実現可能とするための体制を整えられるようにしなえければならない。
4)有効でもっとも公平であることが証明されている教育テクノロジーに注目しなければならず、テクノロジーが不平等を悪化させ続けることは回避しなければならない。
5)政府が教育予算を保護すること、そしてもっとも取り残されている人々に焦点化した予算配分を行なうことを確保しなければならない。
6)国際社会は、COVID-19からの回復の主要な一翼を担う教育に対して十全な資金を拠出するため、取り組みを強めなければならない。
7)調整とエビデンスの活用を向上させることにより、教育に投入されるすべての資金が最大の効果を発揮することを確保しなければならない。

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 教育のための十分な資源を確保するのはもちろんのこと、教育のあり方を再構想すること、教職員がその変化に対応できるよう支援していくことの重要性が、あらためて指摘されています。日本でも、このような国際的議論の動向も踏まえて教育のあり方を見直していく必要があるように思います。

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