見出し画像

新型コロナ後のスポーツ――SDGsと人権・子どもの権利

 国連経済社会問題局(UN-DESA)は、12月15日、UN Women(国連女性機関)をはじめとする国連諸機関とともに、『よりよい復興:開発と平和のためのスポーツ――COVID-19後の再開、復興およびレジリエンス』と題する報告書(アドボカシーブリーフ)を発表しました(プレスリリースPDF)。

画像1


 この報告書は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックがスポーツの世界に及ぼしてきた影響を主要なSDGs(持続可能な開発目標)との関係で振り返り、COVID-19後のスポーツのあり方をあらためて提起しようとするものです。SDGsの以下のゴールが取り上げられています。

-ゴール3(健康とウェルビーイング)
-ゴール4(良質な教育)
-ゴール5(ジェンダー平等)
-ゴール8(ディーセントワークと経済成長)
-ゴール10(不平等の削減)
-ゴール11(持続可能な都市とコミュニティ)
-ゴール12(責任ある消費と生産)
-ゴール13(気候行動)
-ゴール16(平和、公正および強力な制度)

 そのうえで、今後いっそうの取り組みが必要とされる主な分野として以下の4つを挙げています。

1)人権の促進および差別との闘い
2)参加者の安全確保(セーフガーディング)
3)スポーツ・運動へのインクルーシブなアクセスの確保
4)スポーツにおける健全性(integrity)の確保

 日本でも、スポーツのあり方をこのような視点から見直していく議論がもっと必要だと思います。なお、日本ユニセフ協会が11月25日に開催した「子どもの権利とスポーツの原則」に関するオンラインイベントでもSDGsについて取り上げられたそうなので、紹介しておきます(東洋経済オンライン:「根性論が消えない」日本スポーツ界の時代錯誤 求められる「持続可能なスポーツ環境」の実現(広尾 晃)参照)。

 一方、英国に本部を置くNGO「スポーツと人権センター」(Centre for Sport and Human Right)は、「スポーツ・子ども・COVID-19」(Sport, Children, and COVID-19)に関するオンラインアンケートを開始しました。

 アンケートにはこちらから回答できます(残念ながら日本語の回答フォームはいまのところありません)。

 なお同センターは、COVID-19が子どもたちのスポーツに及ぼしている影響についての調査結果を2020年6月25日に発表しています。Facebookで紹介済みですが(6月26日投稿)、こちらにも転載しておきます。

 英国に本部を置くNGO「スポーツと人権センター」が、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)が子どもたちに及ぼしているスポーツ関連の影響に関する調査結果の概要を発表しました(6月25日)。
.
★Centre for Sport and Human Rights:An Overview of the Sport-Related Impacts of the COVID-19 Pandemic on Children
https://www.sporthumanrights.org/en/resources/overview-of-the-sport-related-impacts-of-the-covid-19-pandemic-on-children
.
 (1)継続されているスポーツ、(2)スポーツの機会の消滅、(3)脆弱な/特別な状況に置かれている子ども、(4)今後の影響と懸念という4つの視点から、現状の分析を行なったものです。(2)との関連では、▽精神的健康、▽身体的健康、▽栄養、▽安全な避難所としてのスポーツについて言及されているほか、▽東京オリンピック・パラリンピックの延期にともなう影響なども取り上げられています。(1)との関連では「eスポーツ」の拡大にも言及され、オンラインで子どもたちを保護することの必要性などが指摘されています。
.
 こうした分析を踏まえ、報告書では、
▽スポーツをしている子どもたちにCOVID-19が及ぼす影響についての調査研究を引き続き進めること
▽スポーツをしている子どもたちにCOVID-19が及ぼしている影響を緩和するための方策をすべての主要な関係者が考えること
▽スポーツへの安全な復帰に関する指針を策定・提示すること
▽スポーツ活動に対するCOVID-19の影響に関する子ども・若者の見方や懸念から学ぶこと
▽子どものためのスポーツの「よりよい復興」(build back better)のための努力を行なうこと
 など9つの提言を行なっています。
.
 いずれも日本にとっても重要な課題であり、とくに「よりよい復興」という視点からこれまでのスポーツ活動のあり方を見直していく必要性は高いと言えるでしょう。この点についてはユニセフ『子どもの権利とスポーツの原則』も参照。
https://childinsport.jp/

noteやホームページでの翻訳は、ほぼすべてボランティアでやっています。有用だと感じていただけたら、お気持ちで結構ですのでサポートしていただけると、嬉しく思います。