見出し画像

子どもの権利条約採択31年:国連・子どもの権利委員会委員長のメッセージ

 子どもの権利条約採択31年記念日(2020年11月20日)にあたり、国連・子どもの権利委員会のルイス・エルネスト・ペデルネラ-レイナ(Luis Ernesto PEDERNERA REYNA)委員長が発表したビデオメッセージの内容を紹介します(英語字幕からの日本語訳です)。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの時代にあって、子どもたちの声に耳を傾け、子どもたちとともに取り組みを進めていくこと――ただし大人としての責任を放棄しないこと――の重要性があらためて強調されています(太字部分)。

*****************************

 本日、11月20日にあたって私たちが思い出すのは、31年前、子どもに特化した初の人権文書であり、国連史上もっとも多く批准されて196か国の締約国を擁する人権条約が採択されたことです。

 子ども・青少年の分野で活動している私たちにとって非常に大切なこのイベントを祝っているときにみなさんにご挨拶できるのは、子どもの権利委員会にとって喜びです。

 31周年はお祝いするのによい節目ですが、進捗状況といまなお残る問題について振り返るのによい時期でもあります。このことは、今年になって私たちが送っている社会生活、国際的観点から見た私たちの生活にとって、とりわけ関連するものです。パンデミックが予期しない形で私たちの生活に姿を現し、私たちの日課を根底から変えてしまいつつあるからです。私たちは、慣れ親しんでいた触れあいのない生活に適応しなければなりませんでした。

 子どもたちは、これまでに提示されている証拠によればこの疾病の影響をもっとも強く受けるわけではないように思われますが、それでも、これまでに行なわれてきた決定の影響をとりわけ顕著な形で経験しています。パンデミックにより生じた貧困に関するデータは非常に憂慮されるものであり、8,600万人近くの子どもたちが貧困下で生活しています。ユニセフが明らかにしているように、予防可能な原因で死亡する6歳未満の子どもの人数は1日あたり6,000人へと上昇しました。

 188か国で学校が閉鎖されたということは、世界の学齢児の92%が学校に足を運ぶのをやめてしまったということです。対面での通学ができなくなった状況をオンラインツールが埋め合わせていますが、十分ではありません。教育の空白が生じつつあり、国連事務総長はこれを「世代的惨事」と呼びました。子どもたちは、目に見えない被害者、不可視化される被害者になりつつあります。

 けれども、この状況を覆すことは、まだ間に合います。私たちは、これまで以上に、子どもたちのことを優先的に考える必要があります。国連が提唱しているように「誰ひとり取り残されてはならない」のであって、今日ではこれまで以上に「1人の子どもも取り残されてはならない」のです。

 私たちは、子どもたちへの投資が保護され、保全され、強化されなければならないと考える必要があります。

 同時に、これまで以上に状況を監視しなければなりません。データを体系的に収集することは、パンデミックが子どもたちの生活に及ぼしている影響を明らかにしてくれるものであり、各国が最善の政策を策定するために必要です。

 私たちは、とりわけ脆弱な状況に置かれていて、迅速な対応と援助を必要としている集団のことを忘れてはなりません。私が思い浮かべているのは、とくに、移住者である子どもたち、武力紛争から逃れている子どもたち、施設に措置されている子どもたち、障害のある子どもたち、女の子たち、先住民族の子どもたち、路上の状況にある子どもたちなどです。

 私はみなさんに、誰ひとり取り残されないようにするための、そして子どもたちの権利に関わる問題が今後政治的アジェンダの筆頭に挙げられるようにするための、大いなる連合(great alliance)について考えるよう呼びかけます。

 ただし、このような取り組みはすべて、子どもたちとともに進められなければなりません。

 子どもたちは、本来あるべきほどには相談の対象とされてきませんでした。子どもたちは、人類が生きているこの歴史的瞬間について説明してくれる情報を提供されていません。

 自分たちがどのように恐れのなかで暮らしているか、何を期待しているかを子どもたちが表明するためのしくみ、子どもたちの提案に耳を傾けるためのしくみも作られませんでした。パンデミックが宣言されて以降、私たちの社会にはこのような空間がほとんど設けられていません。

 このような理由により、条約採択から31年を経て発するこのメッセージでは、私たちの社会で、そして社会的関係において子どもたちの声がますます響き渡るようにするために、私たち大人が、諸機関が、そして各国が行なわなければならない取り組みのいっそうの強化を目指したいと思います。子どもたちの声は新しい声であり、私たちの社会的関係における重要な、そして前例のない貢献となるでしょう。

 私たちは、子どもたちの声に耳を傾けない社会を構想できませんし、今後構想しません。子どもたちの貢献は基本的重要性を有するものです。これは責任を転嫁するためではなく――責任は私たちにあります――、これからの道行きで子どもたちが考慮されるようにするために重要なのです。

 さあ、31周年をお祝いしましょう。これは喜ぶのに十分な理由です。けれども同時に、パンデミックの時代における私たちの社会が子どもたちのことを優先的に考えるというコミットメントを再確認しましょう。

 ありがとうございました。みなさんの祝賀行事が以上の問題を再確認するきっかけとなることを希望します。

noteやホームページでの翻訳は、ほぼすべてボランティアでやっています。有用だと感じていただけたら、お気持ちで結構ですのでサポートしていただけると、嬉しく思います。