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【第100回】地区防災計画学会賞の受賞者・受賞論文一覧

質問 過去の地区防災計画学会賞の受賞者・受賞論文について教えてください。

概要

 ①2014年度受賞者・受賞論文
 ②2015年度受賞者・受賞論文
 ③2016年度受賞者・受賞論文
 ④2017年度受賞者・受賞論文
 ⑤2018年度受賞者・受賞論文
 ⑥2019年度受賞者・受賞論文
 ⑦2020年度受賞者・受賞論文
 ⑧2021年度受賞者・受賞論文

解説

 地区防災計画学会では、2014年度から毎年度、地区防災計画に関する優れた論文の著者及び地区防災計画学会の発展に寄与した功労者に対して、地区防災計画学会賞を贈っています。
 当該学会賞には、優れた地区防災計画学に関する論文の執筆者に与えられる論文賞(室﨑賞)及び奨励賞(矢守賞)のほか、地区防災計画学会の活動に貢献した個人に与えられる功労賞があります。
 毎年3月に開催される大会では、表彰式で受賞者に記念の盾が授与されるほか、受賞者のスピーチが行われます。
 なお、2014~2021年度に合計で20人(グループ)が受賞しています。

 受賞者の専門分野は多様であり、所属も大学教員だけでなく、シンクタンク、民間企業、公務員等多様になっています。
 研究者の方にとりましては、査読論文を執筆する際の参考になるかと思いますので、下記に受賞者、受賞論文名及び受賞理由の一覧を掲載します(受賞者の所属は、受賞当時のものになります。)。
 受賞論文については、大半が地区防災計画学会誌に掲載された査読論文です。御興味のある方は、ぜひ過去の地区防災計画学会誌を御覧になってください。

①2014年度受賞者

論文賞
加藤孝明(東京大学)
「持続性のある市民主体の地域防災の進め方モデルの試案―総合性,内発性,自律発展性の創出と維持―」(地区防災計画学会誌第2号掲載)
 実践科学である地域防災をモデル化し,成熟度を示した発展段階と必要策を著者の実践事例に基づき,学術的に取りまとめた点において有用性が高い。また、地区防災計画が、今後、条件の異なる各地で多様に展開されることを踏まえると、事例の中から有用性のある方法や法則性が導き出されることが期待される。

川脇康生(兵庫県庁)
「東日本大震災と被災地住民の近所付き合いの変化―災害回復力ある地域コミュニティの要因分析―」(地区防災計画学会誌第2号掲載)
 東日本大震災の教訓として自助や共助の重要性が確認されたことを受け、仮説を検証し、災害回復力がある地域コミュニティの要因を分析したものである。被災による近所付き合いの変化の実証分析は、独創的かつ地域のソーシャル・キャピタル醸成における重要な研究であり、有意義なものであるほか、実証分析も詳細かつ正確である。

2014年度受賞者

奨励賞
金思穎(専修大学)

「日中の地域コミュニティにおける共助による防災活動に関する考察―日本の「地区防災計画制度」に基づく防災活動と中国の「社区」の防災活動の比較を通じて―」(地区防災計画学会誌第3号掲載)
 「地区防災計画制度」の誕生の経緯、現状と課題について、中国の「社区」における防災活動という比較対象を設定した上で、正確かつ論理的に分析している。また、制度発足の関係者に対するインタビューを行う等その着想において、大変新規性の高い内容である。

2014年度受賞者

功労賞
田中行男(一般財団法人関西情報センター)

 内閣府の「地区防災計画ガイドライン」の作成等に積極的に協力し、地区防災計画の普及啓発のために顕著な活動を行うとともに、地区防災計画学会の創設及びその運営に当たり、役員として重要な役割を果たした。

中澤孝介(新建新聞社)
 「内閣府地区防災計画アドバイザリーボード」の顧問として、地区防災計画の普及啓発のために顕著な活動を行うとともに、「地区防災計画学会誌」の発刊に当たり、役員として重要な役割を果たした。

2014年度受賞者

②2015年度受賞者

論文賞
磯打千雅子(香川大学)

「土器川流域における気候変動に適応した強靭な社会づくりDCP(地域継続計画)策定プロセスにみる多様な地区防災計画展開の可能性―地域継続計画DCPと地区防災計画の関係に着目して―」(地区防災計画学会誌第5号掲載)
 香川県の土器川流域において気候変動に適応した強靭な社会づくりを目的に大規模水災害に対するDCPのプランニングを実践し、土器川流域におけるDCP策定プロセスからボトムアップ型の制度計画として展開されている地区防災計画の多様な可能性について指摘している。特に、複数自治体に関わる河川流域でのDCPの事例紹介という点で大変ユニークであり、複数の自治体にかかるDCPの事例紹介としても有用性が高く、また、ワークショップの運営課程の在り方等も注目される。

2015年度受賞者

奨励賞
布施匡章(近畿大学)

「ソーシャル・キャピタルが防災活動に与える影響に関する実証分析―震災関連3都市住民アンケートを用いて―」(地区防災計画学会誌第4号掲載)
 大きな災害リスクを抱える一方でコミュニティ内での住民の関係性が薄れてきている日本の大都市部において、地域のソーシャル・キャピタルが防災活動に与える影響について実証分析を行った意義ある研究である。また、自助意識は自らの経済力・学歴・年齢等と関係し、教育・広報での普及が可能だが、共助意識は地域のソーシャル・キャピタルを高めることによってこそ増進が図られるため、地域活動の活発化が安全な地域づくりにつながるとの政策的示唆は注目される。

2015年度受賞者

功労賞
坊農豊彦(一般財団法人関西情報センター)

 地区防災計画学会の創設期より幹事兼事務局次長として、学会誌、ホームページ等の企画運営や関係事務を適切に行い、学会の発展に大きく貢献したほか、内閣府の地区防災計画モデル事業等において、地区防災計画制度の普及啓発のために顕著な活動を行った。

2015年度受賞者

③2016年度受賞者

論文賞
林秀弥(名古屋大学)・金思穎(専修大学)・西澤雅道(福岡大学)・筒井智士(NTT東日本)

 熊本地震発災直後の被災地でのインタビュー調査等を踏まえ、マンションのコミュニティ等における地区防災計画制度の活用の在り方等について考察を行ったものであり、タイミリーな先例の少ない有用性の高い分析である。

2016年度受賞者

奨励賞
田中健一(兵庫県庁・神戸大学)

「地区防災計画策定に向けた地域特性を考慮した地域防災活動に関する研究」(地区防災計画学会誌第5号掲載)
 兵庫県3地区の地域防災活動の取組について、各地域の社会的特性、防災活動とその経緯、実施体制等の観点から分析を行ったほか、地域のワークショップ等で抽出された課題等を整理し、地区防災計画づくりを各地域で推進するための実践的な方策について考察を行っており、その有用性は高い。

2016年度受賞者

功労賞
堀口浩司(地域計画建築研究所)

 学会創設期より執行理事として学会運営を担ってきたほか、学会のシンポジウム等でシンポジストとして活躍し、また、編集委員会の中心的なメンバーとして、学会誌の発展に貢献する等地区防災計画制度の普及啓発のために顕著な活動を行った。

2016年度受賞者

④2017年度受賞者

論文賞
田中隆文・西田結也・大津悠暉・佐保田哲平(名古屋大学)

「相模原市における災害脆弱性の継承と地区防災計画の策定」(地区防災計画学会誌第10号掲載)
 神奈川県相模原市は、地区防災計画制度開始後、わずか2年弱で市内全22地区で地区防災計画を策定した。その過程を分析するとともに、市町村合併によって合併前の各市町村の自然条件、社会条件、災害履歴、想定災害等の地域固有の情報が、地区防災計画において、どのように継承されたのかについても検証を行った。

2017年度受賞者

➄2018年度受賞者

論文賞
鈴木猛康・渡辺貴徳・奥山眞一郎(山梨大学)

「一人の犠牲者も出さない広域避難のための地区防災計画」(地区防災計画学会誌第13号掲載) 
 平成27年関東・東北豪雨における常総市の水害を振り返り、広域避難の課題を整理した上で、山梨県中央市リバーサイドタウンにおける広域避難に関する地区防災計画策定の支援プロセス、避難行動要支援者の支援体制構築を支援するツール、全員避難を推進するためのマイタイムライン作成支援ツール等の在り方について検証を行った。

2018年度受賞者

奨励賞
西村英伍・李東海・尾方義人(九州大学)

「被災地におけるレジリエンスデザインに関する研究」(地区防災計画学会誌第13号掲載)
 避難所に設置された貼り紙に関する情報収集を行い、貼り紙を「被災者のレジリエンスの痕跡」とみなし、その内容と機能で分類を行い、避難所の貼り紙の内容と機能の傾向を明らかにした。また、貼り紙の設置された場所や時系列変化について分析を行い、避難所内の場所、時間経過、内容の強調の有無、各避難所の規模等によって貼り紙の内容や機能の傾向が異なることを示唆した。

2018年度受賞者

⑥2019年度受賞者

論文賞 
竹之内健介(京都大学)

「避難情報の発令状況を踏まえた地区防災計画の役割の検討」(地区防災計画学会誌第16号掲載)
 内閣府の避難情報に関するガイドラインの改定状況や避難情報の発令状況等を調査するとともに、当該情報の地域社会における利活用について、地区防災計画がどのような役割を果たすかという観点から検討を行った。そして、地区防災計画を通じ、地域における避難のタイミングの議論を加速することの重要性を指摘した。

2019年度受賞者

奨励賞 
阪本真由美(兵庫県立大学)・小山真紀(岐阜大学)

「地区の主体性回復と災害時の避難に関する一考察―下呂市小坂町落合地区における地区防災計画と平成30 年7 月豪雨―」(地区防災計画学会誌第15号掲載)
 岐阜県下呂市小坂町落合地区を調査対象として、地区防災計画の策定が、地区の主体性の回復と災害時の避難行動に与える影響について検討を行った。そして、地区防災計画の策定は、地区で防災施策の意思決定を行う機会になるとともに、行政と地域とが双方向コミュニケーションを通し互いの認識・行動への理解を深める機会となり、災害時の連携体制の構築につながるほか、地区を単位とするきめ細やかな避難計画の策定と訓練を通した実践は、平成30年7月豪雨の避難においても有効であったことを指摘した。

浦上滉平(京都大学)
「津波避難訓練への参加率と実際の災害時の行動の関連性―高知県四万十町興津地区を事例に―」(地区防災計画学会誌第15号掲載)
 高知県四万十町興津地区を調査対象として、避難訓練への参加データと2014年伊予灘地震における避難行動との関係性を分析した。そして、両者が少なからず「矛盾・逆接」しており、訓練への熱心な参加が、災害時の避難に結びついていないケース、訓練に全く参加していないが、災害時には積極的に避難したケース等があることを指摘し、実効性ある訓練方式を開発して両者の関係を「整合・順接」させるとともに、「矛盾・逆接」の関係そのものが、実践上の意義を持っている場合もあることを指摘した。

2019年度受賞者

⑦2020年度受賞者

論文賞 
田中隆文(名古屋大学)・石垣勝之(玉野総合コンサルタント(株))・磯打千雅子(香川大学)・井良沢道也(岩手大学)・小穴久仁(NPO法人ドゥチュウブ、(株)エーアイシステムサービス)・大槻聡志(名古屋大学)・大沼乃里子(国土防災技術(株))・大村さつき(応用地質(株))・蟹井進(玉野総合コンサルタント(株))・酒井千富((株)測設)・霜田宜久(福島工業高等専門学校)・鈴木清敬((株)パスコ)・中村清美(国土防災技術(株))・町田尚久((一財)砂防フロンティア整備推進機構)・三﨑貴弘((株)建設環境研究所)

「土砂災害に備える観点からの地区防災計画事例の比較研究」(地区防災計画学会誌第19号掲載)
 地区防災計画の作成と運用に関して、他地区での実践事例を「金太郎飴」(単純なコピーと移植)に陥らずに、有効な形で援用したいという実践的なニーズに応える有用性を持った論文である。「多様性」を重視しつつ、「優劣をつける」ことなく「比較」することの理論的・実践的意義について、多くの事例をあげて詳細な説明をしている。

2020年度受賞者

奨励賞
石塚裕子・渥美公秀(大阪大学)
「縮退時代のまちづくりに防災・減災を織り込む ―兵庫県上郡町赤松地区におけるアクションリサーチ―」(地区防災計画学会誌第18号掲載)
 丁寧に実施されたアクションリサーチを中心に据えた論文であり、そこから得られた知見は、他の地域の地区防災計画づくりをはじめとする防災活動にも活用・応用可能であると思われる。

2020年度受賞者

⑧2021年度受賞者

論文賞
大津暢人(消防庁)・北後明彦(神戸大学)

「津波避難経路設定の選択肢としての地区防災計画における災害時要援護者支援手法の類型」(地区防災計画学会誌第21号掲載)
 本論文は、援護する者、援護される者、搬送機材を空間的関係の中で調査分析した研究であり、地区やコミュニティレベルの防災について、地区の人的資源や空間条件を一般化した重要な研究である。

2021年度受賞者

奨励賞
生田英輔 (大阪市立大学)・増田裕子(新東三国地域活動協議会)

「都市域における地域活動協議会による地区防災計画の策定―大阪市淀川区新東三国地域の取り組み―」(地区防災計画学会誌第22号掲載)
 本論文は、都市部における地区防災計画づくりにおいて、地域活動協議会の果たす役割と課題を実証的に明確化しており、都市部での地区防災計画づくりの普遍的なモデルに通じる内容を持つ研究であり、地区防災計画の研究の発展に大きく貢献するものである。

2021年度受賞者

功労賞
藤井直美(元Yahoo!基金)

 2020年度から開始された地区防災計画学会の地区防災計画モデル事業に、出資者側として、企画立案段階から深く携わり、従来の公助によるモデル事業とは異なるボトムアップ型の共助によるモデル事業の創設に大きな貢献を果たした。

2021年度受賞者

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