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水面下

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2016年10月の記事一覧

水面下vol.8

水面下vol.8

キッチンからコーヒーを片手にして、彼女は戻ってきた。

リビングのいつもの椅子に座り、どこからともなく読みかけの本を出してきて、それを読んでいる。

あまりに深く潜っているので、僕はいつものことだと思いつつも、せっかく豆から挽いたコーヒーが冷めてしまうんじゃないかと、気になった。

やがて彼女が顔を上げた。水面に上がってきたみたいだ。僕は彼女の目と出会った。僕は口を開く。

「君はいつも本ばかり読

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水面下vol.7

水面下vol.7

帰宅したとたんに、雨が上がった。日曜日に走ったから、神様が怒ったのかもしれない。

そう彼女に言うと、「怒る神様って、前近代的よね」と言った。

彼女は時々、学術的に定義が難しい言葉を、事も無げに形容詞に使う。

前近代的ってどういうこと、と尋ねると不機嫌になるに決まっているので、辞めておく。

「ねえ、どうして日曜に洗濯するの」

「土曜日の朝早くに起きたくないからだよ」

「起きてからやればい

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水面下vol.6

水面下vol.6

僕は雨の日はそんなに好きではない。幸いにも霧雨程度になったので、これ幸いにとジョギングに行く。彼女はダイエット中らしく、珍しくはりきってついてきた。

「ねえ」と彼女は言った。

「なあに」と僕は言う。

「世界が数字だけでできてたらいいのにって思うことある?」

「デジタルの世界みたいに?」

「そう、デジタルの世界みたいに」

「僕はシンプルで悪くないかなって思うけれど」

「シンプル、ねえ」

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