読書録: 『中世都市 社会経済史的試論』

大学生の時に日本史・世界史選択だったので、それなりに歴史を勉強したせいか、わりとこういった系統の本を読むのが好きだ。「〇〇の世界史」とかとくに。物事のルーツを知ることで、何か少し、学べたような気がして気分がよくなる。これ、こういう成り立ちがあるのだよな、と知ることは、単純に楽しい。

 そういう意味で言うと、これは「都市」の成り立ちについて考察した本である、と言える。荘園が乱立していた9世紀~10世紀ごろのヨーロッパにおいて、どのようにして「都市」が成立していくのか―この本は約100年前に書かれたものだが、なお新鮮な学びを与えてくれる。

 一つ興味深かったのは、都市の成立に不可欠であったのは、(荘園というシステムの上で主従の関係にあった貴族と農民にとっては)部外者である商人だった、という点だ。商人たちが安全を求める拠点として、荘園を中心とした小さな”都市”を利用した。そこで運用される、荘園制度を前提としたシステムは、商人たちにとっては不便であり、彼らが改革の先鞭をとった-。ものすごくざっくりいうとこういう感じだ。

 現代においても、既存の制度を改革する際に部外者の力が役に立つ、ということは多々ある。それは「慣れていないからこそ違和感を覚えやすい」ということもあるだろうが、「慣れていないからこそ不便・不満を感じやすい」と表現したほうが正しいのだろう。


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