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#047【治療終了後70日経過】最凶の副作用がやってきた

2019年7月23日

今日は月に一度の放射線外来の日。とは言っても特にすることもなく、副作用の進行具合を含めた近況を放射線技師の担当者に報告してはい終了、と言った感じ。痛みや不調を訴えたところで「副作用の典型的な症状なので、しばらく様子を見ましょう」しか言ってもらえないし、うーむ、この邂逅には何か意味があるのだろうか。

ただでさえもここに来ると自分が癌患者だったことを再認識してしまって気が重くなるし、地下の薄ら寒い放射線科の待合室で待機していると放射線治療中のブルーな気持ちを思い出してげんなりしてくる。それに万が一、症状が悪化したり、再発したり、前回の検査で発覚した右側のリンパ節の腫れが転移したガン細胞だったとしても、どっちにしろもう俺には放射線治療は使えない。

別にこの先生のことを嫌いなわけではないんだけど、単に話をして5分で終わる面談のためにわざわざ電車で30分かけて病院まで来る意味ないと思うんだけど。どうなんだろう。

しかし腹立たしいのは、現時点で主に自覚している身体の不調は、軒並み放射線治療の副作用ということだ。

味覚障害はその最たるもので、相変わらず苦くて酸っぱい飯をかっ喰らって日々を凌いでいる。一時期のゲロ酸っぱさマックスの地獄の極地だったレベルからは解放され、ある程度の食事の味はようやく分かるほどにはなってきたが、それでも一進一退というか、良くなったり悪くなったり。決して食事へのモチベーションは高まらないのがなんとも寂しい。

特に醤油系というか、ソース系というか、そういった調味料が最近は苦手になってきている。焼き鳥のタレも酸味が強く感じてしまって食えない。ソースカツ丼も注文したのはいいけれどソースの酸味に耐えきれず、衣を全て剥がして食すという実に罰当たりないただき方をしてしまって反省の限り。っていうか醤油もソースもダメなら、食卓に並ぶオカズの大半がアウトなんじゃねえか?結局何を食べればいいのかいつも悩んでしまう。

あとは髪の毛。後頭部の下半分、ちょうど放射線を照射していたあたりなのだろうけど、そこだけ全く生えてくる気配がない。正直いうと髪型にはそんなにこだわりがないし、現在の丸坊主もあながち嫌ではないので普段はさほど気にしてないのだけれど、単純に放射線の副作用で生えてこないという現実が気に入らない。年齢的にとか、親の遺伝で禿げた、とかならまだ納得できる(できないか?)ような気がするのだけれど、病気のせいで、いや病気のせいですらない、病気を治すための手段のせいで生えてこないなんて、なんだか癌を治すのと引き換えに髪の毛を失ったような気がして理不尽極まりない。

今日の放射線技師との面談でもそのあたりの話をさりげなく訴えてみたのだけれど「うーん、まあそのうち、もうそろそろ生えてくると思うんですけどねぇ」といった感じの曖昧な返答で終了。ちょっと待て、お前今少しニヤケただろ?ひょっとしてバカにしてる?他人事だと思って軽く考えてねえか?こっちは癌で人生変わってんだ、もっと真剣に受け止めて真剣に答えろよこのメガネ野郎!

なんて何の罪もない担当者を相手に心の中でモンスターペイシェント丸出しな悪態を呟いてしまうくらいに今の俺は病んでいる。ような気がする。


あとはここ最近で気になり始めたのだけど、顎の下がもったりしてきた。

もったり、というニュアンスが伝わるだろうか。早い話がごっつい二重アゴ。腫れというか、むくみというか、脂肪がついたような、皮膚が垂れ下がったような感じで、顎と首の隙間が埋まりつつあるのだ。

これもやはり首回りに放射線を照射した際によくある副作用で、リンパ腺が焼けることによってリンパ液の流れが阻害され、さらにリンパ液が一時増大することも影響して、顎周辺が肥大化して「もったり」した感じになることが多いとのこと。

体重も10kg以上減って、色々と身体がスリムになって、それだけが癌になった自分への唯一のギフトだと思って自分を慰めていたのだけれど、顎まわりだけがボヨボヨしてなんだかアンバランス。体はヒョロヒョロで顔の輪郭だけだらしないオッさんの一丁上がりだ。しかもハゲ。

まじかよ、なんの罰ゲームだよこれ。

これってなんとかなりませんかねえ、と件のメガネ先生に確認するも「うーん、まあそのうち、そんなに気にならなくなってくると思うんですけどねえ」とのつれない返事。ちょっと待て、気にならなくなるというのは腫れが引いてシュッとなるってことか?それとも俺が自分の顔を見慣れて気にしなくなるってことか?どっちだよ、ってかお前またニヤケてね?やっぱりバカにしてんだろ?俺だってなりたくてこんなになったんじゃねえんだ、がんサバイバーなめんなよこのメガネ野郎!

なんて悪態を正面切って投げつけられるわけもなく、結局は「頑張ります」なんて無難な言葉で場を閉めて、来月の外来を予約してつつがなく終了。

自分で言っておいて笑っちゃうよな、何を頑張るんだよ。もったりした自分の輪郭を見慣れるように努力するのか?


ちなみに真面目な話をすると、この副作用の「もったりアゴ」は放射線治療が終了してから3ヶ月程度で発現し、完全に引くまでにおよそ3〜5年はかかるらしい。3年て。5年て。そんなにかかるのかよ?

確かに命にもQOLにも何も影響はないのだけれど「現実的に受け入れたくない度」だけでいうと今まででもかなり上位にランクインする副作用だぞこれ。ある意味最強、いや、最凶の副作用かも知れん。なんだかすげえブルーなんですけど。

美味しい食べ物とか、子供達へのおみやげとか、少しでもハッピーな気持ちで治療を受ける足しにできれば嬉しいです。