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アートへの"Good"な投資を英国から学ぶ

友人や仕事仲間で、芸術文化に関わる人から良く聞こえてくる声。それは、「お金がない、、、」という声。事業収入、助成、寄付など、そのマネタイズ・資金調達の方法は色々あるけれど、なかなかお金が集まらずに苦労している人・組織が多いと感じます。私が目指すのは、100年先も子どもたちが、豊かに芸術文化を楽しめる世界。今、子どもたちが芸術文化に触れる機会は(特に地方では)少なくなっており、長期的な普及・啓発という意味(大人になって、アートを愛してもらう)でも、子どもたちを含め、アートに触れる機会提供がとても重要だと考えています。どうしたら、より多くの芸術文化団体を、元気に、持続可能にできるだろうか。

そんな中で、今回は、Arts & Culture Financeというイギリスの基金を紹介しようと思います。紹介したところで、そんなの日本にないじゃん、、、泣。というのはあまりにさみしいのですが。将来的にはこのような仕組みを関係団体で整えていけるよう、まずはできることから少しずつアプローチできればと思っています。良い展望・事例を見ることで、新しい世界が見えて、色々なヒントがあると思うので。

1.Arts & Culture Financeとは何か

Arts & Culture Financeとは、

人々の生活、コミュニティや社会に貢献する芸術文化団体を支援するための資金提供を行う。その資金は、各組織の強化、組織を持続可能にするために利用される(著者訳)

というものです。要は、社会的によい活動を行う芸術文化団体の持続可能な育成を目的として、資金を運用している組織です。彼らは芸術文化を、人々の人生にとって非常に重要と位置付けており、英国の経済においても重要な役割を担うことに加え、社会課題解決、社会変革につながると考えています。

この基金が面白いのは、助成・寄付といった出し切りのお金ではなく、循環可能な資金として投融資するという点です。「投資/融資」として出すため、成長して戻ってきたお金を、さらに別の団体などに対して資金提供していくことで、芸術文化のより多く・広くの団体を支援できることになります。

2015年から開始しており、第1号ファンド(2015-2019)、第2号ファンド(2018-2021)、第3号ファンド(2020-2023)と運用をしておきており、第3号ファンドは、2,000万ポンド(約27億円)を、複数の団体に15万ポンド(約2,000万円)から100万ポンド(1.3億円)の範囲で、資金提供を行っていくことになっています。

2.何が良いのか

この仕組みは、何が良いのか。大きくいうと、3つあります。

①資金の柔軟性は助成より高いこと

投融資ということで、逆に言えば、資金を受ける団体側は、資金提供側に、お金を返さなくてはならなくなります。ただ助成とは違い、より柔軟に資金を使えるようになることが挙げられています。要は、経費の縛りなどがなく、団体の成長につながるための資金として使うことができる、ということになります。

②リスクを多分に許容してくれる投資であること

2番目には、①の点に加え資金的リスクを多分に許容してくれるものであるということです。「人々の生活、コミュニティや社会に貢献する」ということに軸があることからも、経済的利益に焦点が当たっているのではなく、その社会的成果をどのように向上させるか、団体の成長をどう促進するかに焦点が当たっているのです。よって、どういった資金の出し方(融資など)がその団体、団体のビジネスモデルに適しているのか、どのようにお金を返す予定が立てられそうなのかなどについて、資金の出し手と一緒に計画することができます。(一時的に返済を止めることも検討できるそう・・・!細かいお金の話も、追々まとめられればと思っています)

③成長のための支援が受けられること

資金提供だけでなく、投資は「団体の成長のため」なので、新規事業の機会、他組織等との新たなつながり、どのように社会的成果の公開や事業改善を行っていくかなど、幅広い支援を受けることができます。加えて、芸術文化に特化した資金のため、一般の銀行等から資金提供を受けるのとは異なり、専門的な支援が受けられます。また、助成財団とも違い、資金提供側には、資金返済への一定のインセンティブがあるので、良い関係性・深い支援につながる可能性が高いと言えます。

3.日本だと、どんな団体が対象になりそうなのか

この基金、どういった団体に現在提供されているのでしょうか。詳しくは、基金のホームページに掲載されているのですが、例えば、ダンス分野では、バーミンガム・ロイヤル・バレエ団やサウス・イースト・ダンスというダンスの団体があります。バーミンガム・ロイヤル・バレエ団では、21.5万ポンド(約2,900万円)が、くるみ割り人形の新しい公演場所での実施に、融資されています。サウス・イースト・ダンスは、新しい多目的なダンススタジオの立ち上げのため、35万ポンド(約4,700万円)の融資をうけています。どちらのケースにおいても、その事業実施・場所開設によって、団体がより自活可能、持続可能になるということが見込まれていました。他の分野でも、ホールや、美術館、非営利の社会的企業などが幅広い団体が対象となっており、その詳細なケースが掲載されています。(各団体への資金提供に関する情報が大変細かく公開されており、興味深かったので、今後また、徐々にnoteで共有していければと思います。)

日本に置き換えて考えてみると、都市部ではない地方で活躍する劇団や、地域のコミュニティにアートを通して緩やかなつながりを作る団体などが当てはまると考えられます。いわゆる「社会課題に取り組む」ことを明確に言っていない事業・団体であっても、その活動により多くの人への機会提供がなされ、地域の活力が生まれるということも、対象とされています。また、基金の提供する「成長のための支援」の中にも含まれていましたが、あらためて団体の提供する「社会的に良い点はどこなのか」について言語化することも、日本の芸術文化団体にとって必要なことなのだと思いました。

まとめると、Arts & Culture Financeとは、英国の社会に貢献する芸術文化団体を支援するため、融資などの資金提供の方法をとおして、団体が長期的に持続可能になるよう、育成、成長支援を行っている基金のことです。こういった事例から学び、日本の芸術文化団体がより持続可能となるよう、多様な取り組みに活かしていければと思います。




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ケイスリー(株)取締役兼Chief Knowledge Officer。慶應義塾大学政策・メディア研究科研究員。芸術文化と社会包摂がテーマ。100年先も子どもが豊かに芸術に触れられる世界を目指し、芸術団体が持続可能となるため、芸術文化を身近にするための情報を中心に発信します。