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<6>採血・CT・MRI、そして告白

3月2日:採血 3月3日:CT 3月9日:MRI→医師からの説明


そういえば健康診断を受けたのが年末、健康診断の結果を見たのが1月下旬だった。そして気が付けば3月。

7月の検査でシロだったところから12月でクロ。たったの5ヶ月で私の子宮にガン細胞が芽生えた訳で、

そこから2か月、確実に時計は進んでいる。なんだか不安でしかない。私の中にいるガン細胞たちは大人しく検査を待っているのだろうか。

そんなことを考えながら広尾駅からなじみの坂道を上る。冬の曇天がまるで私のお腹の中を覆っているようで、なんとなく地面だけを見て歩いている。

採血はCTとMRI検査を受けるのに支障がないかの事前検査。そのために坂道を上る。

翌日、CTのためにまた同じ坂道をすすむ。これもっと効率的にならないのかな。

CTは造影剤を点滴しながらの検査。造影剤が点滴されると血管に沿って体がもわっと熱くなる。

 こわ。

来週にMRI検査して、その日にCTとMRIの検査結果から医師から説明があるという。

 やっと、ここまで来たか。

という事は、いよいよ夫に伝えたほうがいいかも。検査結果を報告するよりも、子宮がんの疑いがあってこんな検査をしている、というところから話したほうがショックの度合いが少しは緩むかもしれない。

夫は30代の時におなじく30代の妹をガンで亡くしている。

私のガンは全く命に別状はないはずだけれど、再び身内にガン患者が出るのは心穏やかではないはず。当時、妹の死に際して殆ど感情を表に出さなかった彼ではあったが、その悲しみは近しい家族を亡くしたことの無い私には想像ができない。心の傷を思い出させるようなことにつながるに違いない。とはいえこの状況を伝えないわけにはいかないわけだから、なるべく衝撃が少ないように伝えるしかないわけで。

CT検査を受けた日の夕ご飯の食卓で


 “今日、日赤病院でCT検査を受けたの。”

 “健康診断結果で子宮がんかもしれないってでたから。”


と、まるで会社で異動の辞令がもうすぐ出そう、という感じのノリで伝えた。

彼の反応はまた同じく、え、いつ?辞令が出るの?的なノリで


 “検査結果はいつ出るの?一緒に聞いたほうがいいよね?”


と、ちょっと拍子抜けなくらい普通にいつもの会話の延長のようにこの話題が続いた。

検査結果は自分一人で聞くつもりだったから、彼の「一緒に聞いたほうがいいよね」という言葉は想定していなかった。

でも、じんわりうれしくなった。この病について一人で引き受けるつもりでいた自分のガチガチの肩から少し力が抜けたような感覚。

ということで、翌週月曜日のMRI検査の後の医師からの説明に立ち会ってもらうことになった。


COVID-19は毎日国内のニュースとして報じられるようになり国内の死者もカウントされるようになってきた。ライブやイベントの中止が報じられ、行くはずだったライブも当然中止になった。採血の日はちょうど全国の小中学校の臨時休校が始まり、国が市民生活に号令を出すほどの非常事態であることに戸惑いながらも受け入れざるを得ない空気に日本全体が包まれ始めた。


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これを読む人、
特に40代から50代にかけての女性、
そして関わる周りの人に
私のこの出来事にまつわる話を伝えることで
何か役に立つこともあるかもしれない、
そんな思いでしたためることにした。

大学病院の病理検査でクラスⅣと診断され、ステージはⅠとⅡの間、癌とは言え早期に処置できる段階で見つかった子宮体癌。

「全く命に別状はない」ところでの癌治療。

ところが意外と手間暇かかり、こんなことも起こるのか!ということもあり、しかもCOVID-19真っ最中の出来事で社会的にも特殊な時期でもあり、記録に残そうと思った。

仕事、手術、治療、自分の気持ち、そのままに書こうと思っている。

しばしお付き合いいただきたい。

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