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田中裕明全句集 その3

田中裕明の第4句集『先生から手紙』。1990年から1999年の作品795句が掲載されています。作品は1999年から逆編年体で載っています。

すきな句を30句挙げます。

日本は水に浮く國梅雨に入る
若き人ゐなくて愉し年忘
冬木立師系にくもりなかりけり
人生に小鳥来ることすくなしや
末枯やカレー南蛮鴨南蛮
詩の毒に中りし人や曼珠沙華
いつまでも恋人でゐる浮巣かな
打楽器は陽気筍それに似て
壺焼やこの人は磨けばひかる
よき友はものくるる友草紅葉
花鋏つゆけき音にありにけり
白露の山弁当に酒すこし
一紙のみ誤報訂正ひややかに
鎌倉を出づる鞄や明易し
葉櫻や大きな染みの実験着
巻貝に蓋あるあはれ朧月
文楽のかうべのかくと春氷
遺句集といふうすきもの菌山
飯食うて元気になりぬ沈丁花
菜の花や中学校に昼と夜
闇汁の葱なるもののいとほしく
finといふ終り映画に木枯ぜめ
しぐるるや鞄の中に古りし本
その人の名の研究所涼しけれ
中山道春の畳の匂ひかな
毛衣も湯呑も宮内庁のもの
風邪ひいて赤子のかほでなくなりぬ
水遊びする子に先生から手紙
魚の眼のとぢることなき障子かな
空港で鞄にすわるチューリップ

裕明はこどもの句と鞄の句が多いと気がつきました。
読み返すにつれてすきな句が絶対に変わっていくと思います。

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