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高浜虚子 『五百句』 (青空文庫)

高浜虚子の『五百句』が青空文庫にあったので読んでみた。明治24年から昭和10年までの句。「序」によると、『ホトトギス』五百号の記念に出版するため、五百句に限ったとある。明治、大正、昭和の句をほぼ均等に採ったそうである。

好きな句を。

蛇穴を出て見れば周の天下なり
駒の鼻ふくれて動く泉かな
凡そ天下に去来程の小さき墓に参りけり
一つ根に離れ浮く葉や春の水
鎌倉を驚かしたる余寒あり
これよりは恋や事業や水温む
麦笛や四十の恋の合図吹く
何の木のもとともあらず栗拾ふ
能すみし面の衰へ暮の秋

夏痩の頬(ほ)を流れたる冠紐(かむりひも)
夕鯵を妻が値切りて瓜の花
どかと解く夏帯に句を書けとこそ
雪解の雫すれすれに干蒲団
天日のうつりて暗し蝌蚪の水
白牡丹といふといへども紅ほのか
かりに著る女の羽織玉子酒
やり羽子や油のやうな京言葉
流れ行く大根の葉の早さかな
大試験山の如くに控へたり
紅梅の紅の通へる幹ならん

土佐日記懐にあり散る桜
ぱつと火になりたる蜘蛛や草を焼く
春の浜大いなる輪が画いてある
夏草に黄色き魚を釣り上げし
落花のむ鯉はしやれもの髭長し
鴨の嘴よりたらたらと春の泥
神にませばまこと美はし那智の滝
船涼し己が煙に包まれて
物指で脊かくことも日短
川を見るバナナの皮は手より落ち

虚子の『五百五十句』についての記事はこちら

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