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第31話 移住二ヶ月

移住して二ヶ月が過ぎた。

最初の一ヶ月はドタバタのうちに過ぎ去っていったように感じる。不慣れな土地に足りないものだらけ不具合だらけわからないことだらけ。それらにひとつひとつ対応していただけで時間が過ぎていった。二ヶ月目は家の中が一段落して周辺地域に気を配ることができるようになった。地理を理解し、どこの通りがどうつながっているのかが見えてくるにつれて街の様子がわかってきた。そして改めてこの土地、この家に巡り会えた幸運に感謝した。

 

見知らぬ土地への移住で大切なのは総合評価である。家屋だけよくても駄目。街だけよくても駄目。である。物件見学をしているとどうしても「家」にだけ目が行きがちになってしまうが、実際に住んでみると家と同じくらい周辺の環境も大事であることを実感する。どちらがより大事かと言えば家よりも周辺環境のほうが大事であると言っても過言ではない。

 

家の多少の不備は住めば都である。もとより中古住宅を選択している時点でなにかしらの不具合があることは織り込み済みである。新築物件を選ぶひとは新築のまばゆさばかりに視界を奪われないように気をつけたほうがいい。前面道路はどうか。近所の家並みはどうか。街の様子はどうか。ゴミは落ちていないか。清潔かどうか。

 

前面道路というのは文字通り玄関出てすぐの道路である。目の前が大通りに面していたら始終ロードノイズが聞こえるだろうし、人通りすなわち他人の目も気になるだろう。小さな子どもがいるうちは飛び出し事故の可能性も想定しなければいけない。排気ガスによって洗濯物が干せないかもしれない。かつて都心の高速道路脇のマンションを事務所にしていたことがあったが、排気口が煤で真っ黒になっていた。空気めちゃくちゃ悪いなという記憶が強い。多少田舎にでたところで道路脇では常に排気ガスがあるし、田舎ゆえに交通量も少なくない。

 

近所の家並みはたとえ住人が外に出ていなくても庭の様子や家の前がきれいかどうかで判断できる。きちんと片付いているか。庭は手入れされているか。道にゴミは落ちていないか。ご近所さんになったとき気持ちよく暮らしていけるかどうかはとても大切である。我が家の前面道路は私道でどの家も手入れが行き届いていた。挨拶をすればきちんと返してくれる。これ大事。

 

保育園が遠いことが目下の悩みというか日々の辛いところであるが、これは転園希望が叶うことを祈るほかあるまい。今季は無理でも来年の四月学年があがるタイミングが本命である。

 

駅から徒歩15分から20分。道中が静かで歩道も広く歩きやすいためそれほど苦にならない。空が広い。夜になれば星がまたたく。駅方向へ行けば必要なものはたいてい揃うほど店は充実している。反対にいけば突然畑風景が広がってコンビニ一軒ない自販機一台ない世界が始まる。このギャップがかなりお気に入りである。田んぼはまったく見ない。あるのは畑と森である。森は街のきれいさに反して不法投棄ゴミが多いのが気になる。至るところにゴミ捨て禁止の立て看板がある。飲み食いしたゴミをわざわざ森へ捨てに来るのはどういうことなのだろうか。ゴミさえなければ美しい森なのであるが。誠に残念だ。ゴミがゴミを呼ぶ。ゴミ拾いをしてもよいのだが、個人が拾える範疇を超えている。トラックを横付けして一斉に積み込むぐらいの行動がないとちょっとむずかしいだろう。

 

先日自分で障子を貼り替えた。作業自体は単純だが貼るよりも剥がすほうが面倒くさかった。それに意外に面積があって使用する糊の量の多さは驚いた。しかし自分で貼り替えたというだけで気分がいい。ほかに家の修繕も自分でちょこちょこやっている。だからホームセンターへいくとついつい長居してしまう。表札も自作すると言ったがいまだに仮表札のままになっているのは懸案事項だ。一度自作したがその出来があまりにもひどかったのでゴミ箱へ打ち捨てた。表札、難しい。

 

小さな庭があるので春になったらなにを植えようかと今から思案しているのが楽しい。目指すはイングリッシュガーデンである。ハーブは買うと高いのでいろいろな種類を自給自足したい。子供のリクエストでレモンを植える予定だ。アゲハチョウに産卵してほしいらしい。柑橘類ならなんでもよいが、レモンはまともなものが売っていないのでうちで採れたら食べられてよかろうと思う。

 

まとめ買いをすることを心がけている。都内のようにその都度購入する生活スタイルから貯蔵スタイルへと変化するのは田舎暮らしの基本だと思う。しかしまとめ買いの量がまだ自分でもビビっているのがわかる。西友の配達便がまとめ買いを阻止しているというのもある。同じものをたくさん買えないのである。例えばティッシュは4つまでとか。だからといって3日連続で注文する気にもなれない。

 

家探しを始めたのがはるか昔のように感じられるがすべて今年に起こった出来事だった。本当にいろんなことがあったが、改めてこの土地、この家にしてよかったねと妻と話している。家だけみれば他にもよい家はあったが、家探しは総合評価が大切であるという認識はぼくも妻も変わらない。これから寒い冬がやってくる。すでに都心よりも気温は1度か2度は低い。真冬は寒そうだ。

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