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背中を押して。

お父さん、押して。
ええ〜。
 
ぼくはそう言いながら娘の背中を押して自転車を漕ぐ。坂を登りきって平地にでたらぐっと押し出して言う。
 
ほら。平地だよ、漕げ!
 
それからまた登りに差し掛かると案の定娘が叫ぶ。
 
お父さん、押して!
ええ〜。
 
ぼくはまた娘の背中を押しながらえっちらおっちら自転車を漕ぐ。おい、足を止めるな。
 
少しは自分で漕いでよ。
うん。わかったわかった。
 

踏め踏め〜!


息子はずっと先に進んだところで止まっていて、退屈そうにこちらを眺めている。キミにもこういうときがあったのさ。覚えてるかい。ぼくがキミの背中を押して走った荒川の河川敷。
 
娘はちょっとした登りでさえこちらを頼るようになっていて、ぶり返した暑さで辛いのかしらと思いながら聞いてみる。パン食べる?
 
コンビニで買ってきたスティックメロンパンをひとつ食べさせると元気が出てきたと言って、そうかプチハンガーノックになっていたのか。
 
多摩湖周遊道路はこまかいアップダウンを繰り返しながらも下り基調で、堤防まであっという間に到着した。前回走った時はへとへとだったのに、どうだいすっかり走れるようになったじゃないか。
 
三人で並んで座ってそれぞれ好きな飲みもの飲んで、コンビニのおにぎりを頬張る。
今度はもう少し距離を伸ばしてみようか。

ほらご覧、死んだクジラがひっくり返ってるよ。

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