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梅雨が開けていつもと同じ夏空
宿題のプリントを持って行ったんだ
先生に頼まれたから
ただそれだけ


初めて入る他所の家は
嗅いだことのない匂い
黙ったままペコリと頭を下げた君の
大きなマスクが何故か気になった


何か言った方がいいような気がして
「早く治して」とそれだけ告げた


自転車の泥を靴底でこそげながら
明日も訪れる変わらない毎日
見えない変化は無いのと同じ


何だかちょっと嬉しかったんだ
そそくさと引っ込んだ君の目が
少し笑ってるように見えたから


今年も始めた家庭菜園
害虫避けに植えたマリーゴールドが
一際鮮やかに目に留まる


次に教室で会ったら
どんな顔したらいい?
目配せするのもなんか変だし
いきなり親しいのも気が引ける


華があって強くって
君の周りだけ時間がゆっくり流れる
僕には真似出来ないそんな生き方
なんとなくそう思っただけ
深い意味はない


いつもと変わらない教室
失敗した野菜が転がってるみたいさ
大きなマスクを付けた僕を見つけて
笑う君にリアクション出来ないまま


庭の片隅
何も世話してないのに
マリーゴールドだけが増えていく
もう慣れてしまったよ
退屈で味気無い毎日


見えない変化は無いのと同じ
まるで残酷な相対性理論
それで良かったんだ
少なくとも今までは
僕を見て笑った君の笑顔が
頭から離れない


熱も引いた週末
久しぶりに庭に出て
水をあげてみる
相変わらず答えない花だけど
いつもと違う夏の匂いがした


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読んでいただきありがとうございます。

あいみょんの「マリーゴールド」という歌を初めて聞いた時、家庭菜園をやっていた私は、マリーゴールドってあんな爽やかなイメージじゃなくて、やたらめったら強くって勝手にどんどん増えていくイメージ。猛暑の中、暑さに野菜がやられて駄目になっている中で、マリーゴールドだけが咲き誇って畑の一角を独占してしまっている。しかも寄生虫除けにちょこっと植えただけなのに。ちょっと憎たらしいイメージなんです。綺麗なんだけどね。

なので私の中でのイメージでマリーゴールドの詩を書いたのでした。まあ、言ってみればパクリです。内容は全然違うんだけど。そういう事にしといて。ちなみにあの歌はいい曲だと思います。

読んでいただき、ありがとうございます。 ほとんどの詩の舞台は私が住んでる町、安曇野です。 普段作ってるお菓子と同じく、小さな気持ちを大切にしながら、ちょっとだけ美味しい気持ちになれる、そんな詩が書けたらなと思っています。