カタカタと、彼女の右腕が鳴った
ここを通る人は、一度は彼女を見た事があるだろう。
地下鉄の改札の横の自動販売機のそばに、朝も夜も、彼女はいつも寝そべっている。
いろんな色の服を重ねて着こんでいたが、どういうわけか、色が混ざって彼女は灰色の塊に見えた。
ぽっかりと空っぽな瞳が見開かれている時も、改札に吸い込まれ、吐き出される群衆を、見ているようで見ていない。
数メートル離れていても、彼女から漂う匂いは鼻を刺激した。
改札を通る時、視界の片隅に、彼女が映った。
けれども、自動販売機や、ATMマシン、鏡のついた