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シェアすることで、生きていく─2/3PERCHレポート

こんにちは、Sex and the Live!!スタッフのちひろです。


今回は、女性のためのセルフヘルプグループ「PERCH(パーチ)」のレポートをさせていただきます。


PERCHは、SatLのアクティビストの染矢明日香さんが代表をつとめるNPO法人ピルコンの事業のひとつ。妊娠や中絶をはじめとする性の悩みからの回復を目指す女性のためのクローズドグループです(HP:ameblo.jp/selfhelp-perch/)。

私もサバイバーのひとりとして、ここ1年ほど参加させていただいています。


会の進行はミーティング形式。集まった参加者が、思いおもいに自分の経験や悩み、想いを話していきます。

ここでの原則は「言いっぱなし・聞きっぱなし」。話す人に対して、批判や説教はもちろん、アドバイスなども基本的にNG。それぞれの言葉にただ耳を傾け、想いを分かち合うための空間です。

PERCHとは英語で「止まり木」の意味。梢に止まる鳥たちのように、日常を離れて少しの時間休み、安心できる時間をつくりたい、という主催者の想いが込められています。


問題の解決策を提案するわけでもない。何かの目的に向けて議論するわけでもない。ただ話し、ただ聞く。たったそれだけのはずなのに、信じられないほど安らかな時間を過ごすことができます。

人を傷つけることさえなければ、ここでは何を話してもいい。とりとめのない話でもいい。気が向かなくなれば話さなくてもいい。

普段は口に出せないこと、言ってはいけないと思っているようなこと。

何を話したとしても、ただ頷きながら聞いてくれる人がいる。その安心感は得難いものです。

一人ひとり別々の話しをしているはずなのに、その苦しみはどこかで根を同じくしていたりする。そのことに気付く驚き。共鳴。共鳴できる人がいることへの喜び。

ぽつりぽつりと語られる言葉の裏に、たくさんの感情が交差する空間です。


毎回のミーティングにはテーマが設けられ、これに沿ってトークを進めていきます(もちろん、テーマと関係なく自分の話したいことを話してもOK)。

前回2/3のテーマは「スティグマとどう向き合う?」。社会によって刻まれたマイナスの烙印=スティグマについて、個々人がどう乗り越えるか、あるいはスティグマを抱えながらも幸せに、健康に生きるにはどうすればよいのか、というもの。ハードなお題でした。


スティグマとは、ある属性を持つ当事者に対し、非当事者が貼り付けるネガティブなレッテルのこと。でも今回のミーティングの中では、他人からのそれというよりもむしろ、その評価を内面化して自分を見下げてしまう「自己スティグマ」が生き方に大きな影響を与えているという意見が多く出ました。

望まない妊娠や中絶。健全でない性的関係。性暴力。

性に関するそんな傷つき体験について、私たちはいつしか、経験自体が「いけないことだ」と思わされてしまっている。

そんな経験をした自分は〇〇してはいけない、〇〇する価値なんてない、いっそ生きていてはいけないのでは…。 そんな風に自分を追い詰め、生き方を縛りつけることで、より大きな苦しみに自分を追いやってしまう。そんな事例がいくつも聞かれました。


そんな重荷を自覚した個人が、どうすれば解放され、再びよりよい生き方を目指すことができるのか。

ひとりの方のお話し。

自分の背負ったスティグマは、一生ひとりきりで背負い続けなければならない十字架なのだと思ってきた。でも、こうしたグループで自分の経験を口にしたことで、同じような気持ちで生きる人は他にもいて、自分の想いも誰かと共有できるかもしれないと気付くことができた。決してひとりぼっちではないし、生きていてもいいんだよ、そう伝えあうことができる人がいる。そうやって、分かり合える人たちと想いをシェアすることが支えになって、生きていけると思える。


自分で自分を傷つける負のスパイラルにひとたび巻き込まれてしまったら、自分の力だけで脱出するのは困難でしょう。事情を知らない励ましの言葉も無意味かもしれません。

だからこそ、自分の真心を無防備にさらけだし、生きることへ肯定感を与えあえる、そんな人との繋がりを取り戻すことが欠かせないのだと思います。

想いを言語化することは、自分の苦しみを整理し、客観視することにも繋がります。自分の負の感情と向き合うその作業自体も痛みを伴うものであるけれど、そうして人に伝えられるまでになったとき、回復の次のステップに進めるのではないかと思います。


同じように傷つき、生きる人と出会い語りあえるPERCHもまた、回復のプロセスを歩むための貴重な場所です。



余談ですが、私は、PERCHのミーティングが閉会し、参加者が会場からちりぢりに街に消えていく姿を見送るのが好きです。

それぞれの苦難を語った参加者は、雑踏に紛れれば何ひとつ特別なことのないごく普通の女性たち。その胸に抱えるものは、当然一見しては分かりません。

私たちはみなこうして、それぞれの痛みと戦いながら、分かり合えたり合えなかったりする日常を生きている。そんな、人間のけなげさ・かわいさに思いを致すことができるからです。

人と人とが出会い、語ることで支え合うことができる。そんな、コミュニケーションの本質的な「善さ」を確認できることも、セルフヘルプグループの効能のひとつです。

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