見出し画像

パートナーシップ宣誓制度を使ってみた

2020年2月、6年間付き合った恋人と夫婦になった。 
昨春に家族への挨拶を済ませ同居を始めた。結婚はしたかったけどお互い改姓したくなかったので、どうしましょうかねと相談していると、住んでいる横浜市が年末に「パートナーシップ宣誓制度」を導入することを知り、この制度を利用することにした。

制度について

横浜市パートナーシップ宣誓制度
「横浜市人権施策基本指針」の理念に基づき、様々な事情によって、婚姻の届出をせず、あるいはできず、悩みや生きづらさを抱えている性的少数者や事実婚の方を対象に、「横浜市パートナーシップ宣誓制度」を始めます。

横浜市パートナーシップ制度

制度は横浜市民であれば、同性異性問わず、外国人も利用できる。(異性間でも認められるのは現在、千葉市、横須賀市、横浜市のみだという)
ただ、転居など横浜市民でなくなる場合は対象要件から外れるため、宣誓書受領証等々を返還する必要がある。

利用するために必要な事

制度を利用するにあたって用意するものは、二人の戸籍謄本、本人確認書類など婚姻届の提出とあまり変わらない。証人は不要だが、手続きは事前予約制で平日の決められた時間内に宣誓する二人で行かなくてはならないので少し手間かもしれない。

また横浜市では宣誓する二人が同居している、または今後同居することが条件になっている。制度がある自治体によっても違うので細かいルールは要綱をよく読んで確認したほうがいいと思う。

宣誓の当日

宣誓は「市民局人権課」で行われる。事前連絡からやり取りした担当者が宣誓の流れについてテキパキと説明してくれた。

横浜市の制度では
・パートナーシップ宣誓書受領証
・パートナーシップ宣誓書受領証明カード
が発行される。

宣誓書には確認事項があり、それをその場にいる全員でチェックしていく。
「二人は互いを人生のパートナーとし、共同生活において対等な立場で、必要な費用を分担し、相互に責任を持って協力することを約した関係性ですか?」
という確認事項に「はい」と答えるのは気恥ずかしかったけど、結婚式場のチャペルではなく市役所の人権課で宣誓をするのは、なんだか私たちには合っていると思えた。

この日はカメラマンの友人についてきてもらい、一部始終を写真におさめてもらった。そんなつもりはなかったけど、友人にはこの宣誓の「証人」になってもらったような気がしている。

  

宣誓のその後

宣誓したからといって、その前後で何かが変わった実感はあまりない。気持ち的には「家族」というかチーム感が増したかな。今のところ夫婦の証明を求められることもなく過ごしているが、未来に発生するかもしれない出産や育児、老後のことを考えると、やっぱり法律婚と同等の権利は欲しい。
ただ、国会で「夫婦別姓を求めるなら結婚しなくていい」というやじが飛ぶようなこの国で、自治体がこういった制度を設けてくれたことは自治体が自分たちの理解者で味方だと思えて心強く、それだけでこの土地に住んでいてよかったと思える。

大人になるまで「結婚」は他人事で、友達と「うちら世代が結婚するまでには海外みたいに夫婦別姓になってるっしょ」と言い合ったりして、のんきに構えていた。
しかし年齢を重ねても法改正の気配はなく、まわりに既婚者が増えていくなかで、本当は名前を変えたくなかったという話や、氏名変更にまつわる不利益 ・理不尽エピソードを耳にするようになった。
職場や友人に気付かれないよう、離婚しても旧姓に戻さず、そのまま相手の姓を名乗り続ける人が意外に多いことも、社会人になってから知った。
新姓にはすぐ慣れるよ、大したことないよ、と沢山の友人知人から言われた。けれど名字を変えるって人生にめちゃくちゃインパクトがあるじゃん、そもそも結婚することと連動して氏名変更が強制っておかしいのでは?外国人との結婚なら別姓OKって行政も別姓運用出来てるよね、とますます日本の結婚制度に疑問を抱くようになった。

彼との関係が長く着実になるほど、名前を変えることになるかもしれないという危機感、自分が自分でなくなるような、存在が危うくなるような感覚に苛まれた。
こんなプレッシャーを感じるのは私が女だからだ、とやり場のない怒りや悔しさを覚え、女の私が改姓すればスムーズに結婚出来るのではと悩んだり、「くだらないことにこだわるね」と言われ傷ついたりもした。
そんな最中、2018年から始まった選択的夫婦別姓の訴訟には本当に勇気づけられたし、彼に名前を変えたくないと打ち明けるきっかけになった。

私たちの夫婦である、家族であるという気持ちは法律婚している人たちと同じだと思っている。ただ、改姓をすることが夫婦や家族になるために必要なことだと思えないだけだ。
宣誓してみてあらためて思うのは、結婚したい、夫婦別姓で、ということ。法律やルールは伝統や愛国心のためではなく、今を生きる人の幸福や尊厳のためにあってほしい。
様々なパートナーシップの形が認知され受け入れられてきている今、慣習や既成概念に惑わされず、少しでも自分らしくいられる在り方を多くの人が選べますように、と心の底から思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?