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「何をやってもダメ」から、人生は変われるのか

れもんらいふというデザイン会社をやって9年。
来年、実は10周年をむかえる。
スタートは2人だった。
「会社の登記ってどうやるの?」というレベルで何も知らなかった2011年から、のらりくらりと、
デザインや広告、クリエイティヴのシーンにおいては、れもんらいふを知らない人も少なくなり、様々な広告に携わり、様々なクリエイター、アーティストと関わってきた。
今では大切な、かけがえのないチームだ。

不思議に思う。
僕の人生に、こんなレールはひかれていなかった。
京都の向日市、大阪の高槻市をベースに育った僕は、
クリエイターが育つような環境ではなく、
毎日生きることに必死の母、
知的障害をもち、目が離せない弟。
別々に暮らしていた父。
その中で家族が崩壊しないよう、バランスを取ることに必死で、壊れそうな母を毎日見ながら
ビクビクしながら生きていた。

高校のとき、彫刻の授業で作品を割ってしまい、
美術の先生に「何やってんだ!何やってもダメだな」と、言われ、
「何やってもダメな星の下に産まれたのかもしれない」と思うようになった。
それから何をやってもうまくいかないようになった。

28歳で上京して、憧れの会社Hの契約社員になったが、そこからが地獄の始まり、、、
憧れの職場だった。
憧れのアートディレクターの下だった。
デザイン雑誌でみたことのある作品がたくさんならんでいた。
しかし現実は凄まじいものだった。
1日5000円のバイト代からスタート。
毎日徹夜、帰れない日々、
できないと詰られ、殴られる。
「お前は才能がない!」毎日言われた。
すぐ辞める人。慣れる人。強くなる人。
様々な人がいた。
精神に異常をきたし、ハサミを振り回す人もいた。
それでも2年間、ここを辞めたらもう僕には何もない、、、!という精神だけで毎日しがみついた。
ある日、限界がきた。
死ねばいい。
僕なんか。
そう思うようになりはじめていた。
「辞めたいです、、、」その言葉をようやく言えた。
すると、
「今まで払った給料全部返せ、約束違反だ。
払わないと一生この業界で働けないようにしてやる」と言われ、震え上がった。
何もわからない、精神が衰弱していた僕は、アコムで借りれるだけ引き落とし、一発殴られる毎に100万づつ減らしてもらい、最終的に150万を払って辞めた。
実際は、その人の手が汚れぬように
下請けのプロダクションに支払わされた。
上京して4年が経っていた。
何もかもなくなり、借金だけがのこった。

「何をやってもダメ」
その言葉があたまをよぎる。
何かを手にする自信がなかった。
まわりの友達にも勝てなかった。
同世代のクリエイターはどんどん活躍していく。

支えになったのはなんだろう。
やはり母や弟か。
2人を幸せにしたかった。
31歳、もう人生が後戻りもできない状況だった。

「自信をつける」
と、
簡単に言うけど、今でも怖さはずっとある。
何もかもうまく行くなんて、思わない怖さ。

さ、2006年。
次に就職したデザイン会社、
STOIQUEが僕の転機だった。
ファッション広告を中心としたデザイン会社で
ファッションにどんどんのめり込んで行った。
デザインが楽しく思える実感が出てきた。
苦しくても、そう思えるようになって行った。
アートディレクター兼社長である
中島知美さんは、今まで会ったことのない人だった。
仕事だけではなく、食事、服装、言動、すべてにおいて一流を知るということを教えてくれた。
ある日
「その借金、アコムは精算して私にしなさい。そしてそのHのアートディレクターを訴えよう、戦って勝たなければ未来はない」

「この業界で働けないようにしてやる」という言葉に萎縮していた僕は、この訴えを提出し、勝つことで、目の前の景色が変わっていく。

「金髪にしたら?」
初めて与えられた競合プレゼンの仕事の前日、美容院の人が提案してくれた。
「黒髪メガネより、クリエイターらしくてクライアントが突っ込みづらいよ」
中島さんから与えられた初の1人プレゼンの場で
緊張しまくっていた僕は、思い切ってその日、金髪にしたのだ。
その姿を鏡で見た瞬間から、自分を見る目が変わった。
自然とニヤニヤして、
何かマントを身に纏ったような
とてつもない自信とパワーに満ち溢れ、
「何をやってもダメ」な僕から
解き放たれた気がした。

2011年。
れもんらいふを設立。
今では社員が10人。
たくさんのクリエイターやアーティストに囲まれ、戦いに勝つためのチームがいる。

僕は、今も
自信がない。
「何をやってもダメ」という言葉は今も響いている。
ただ、
この金髪メガネと、れもんらいふというチームでつくる作品が、それを振り払ってくれる。
2年間のHの時代も、アイデアを出す力や作業のスピード力はついたので、今は悪くない期間だったと思っている。

人生は長い。
自分が変わるとか、変わらないとか助言をもらうことがたくさんあるが、根本は変わらないと思う。
ただ、出会いによって、そのままの自分でいい環境は作れる。
明日の出会いが人生を変えるかもしれない。
そう思ったら、毎日、必死で生きてみようと思っても
人生は悪くない。

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