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朝の連続長谷部小説【これが夢なら醒めないで】

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#サラリーマン

第1章 サラリーマン

第1章 サラリーマン

駅まで歩いているその途中、雨が降りだした。降水確率30%だったにもかかわらず、だ。
「くそ、ついてねえな。」
長谷部は小走りで駅へ向かう。駅前のアズナスで新聞とパン、ジュースを購入すると、ホームで電車を待ちながら、食べる。毎日の日課である。長谷部は証券会社に入社してから研修中を除いて1年間、毎日ずっとこんな朝を過ごしている。電車が来る、乗り込む、中を見渡す・・やはり今日も座れる隙間はない。ドアにも

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プロローグ

プロローグ

小学校のとき、あれは、5年生の時だろうか。どういう科目の授業だったか、それは何も覚えていないのだけれど、人生について、おそらく生まれて初めて考えるきっかけになった出来事がある。
教卓に立っているのは髭面の、色眼鏡をかけた中年教師だった。
「よく聞け。人はみんな、沢山の種を抱えて生まれてくる。」

三谷先生。教師らしからぬその風貌、それに加えて変なこだわりを持っている、と生徒たちからは思われていたに

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