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2022年4月の記事一覧
第5章 三谷という男
「おい・・長谷部、見てみろ。」
三谷は前を向いたまま、眩しさのあまり目をこすっている長谷部に声をかけた。
「駅・・?」
分岐した地下線路にポツンとたたずむ駅を見て、長谷部は首をかしげた。
「ああ、こりゃすげえぞ。」
三谷は興奮した様子で、光るホームへと走っていった。長谷部はそのあとをトボトボとついていく。
「よっと。早く来いよー。」
軽々とホームに登った三谷は、キョロキョロとあたりを見渡した。何
第4章 終点の向こう側
激しい頭痛に襲われながら、長谷部は辺りを見渡した。シーンとした電車内。最初は真っ暗だと思っていたのだが、よく見るとぼんやり、座席や、つり革が確認できるような気がする。
「おいおい、どうなってんだよ・・・。」
長谷部は立ち上がり、携帯電話を取り出した。しかし、
「まじかよ・・。」
昼間仕事をサボってアプリゲームをしすぎたせいで、とっくに充電は切れていたのである。
仕方がないのでとりあえず、手探りで
第1章 サラリーマン
駅まで歩いているその途中、雨が降りだした。降水確率30%だったにもかかわらず、だ。
「くそ、ついてねえな。」
長谷部は小走りで駅へ向かう。駅前のアズナスで新聞とパン、ジュースを購入すると、ホームで電車を待ちながら、食べる。毎日の日課である。長谷部は証券会社に入社してから研修中を除いて1年間、毎日ずっとこんな朝を過ごしている。電車が来る、乗り込む、中を見渡す・・やはり今日も座れる隙間はない。ドアにも