マガジンのカバー画像

★作品紹介・感想(-2020)

13
読んだ小説や観た作品などの紹介・感想文です。
運営しているクリエイター

記事一覧

★吹井賢『破滅の刑死者3 特務捜査CIRO-S 死線の到達点』

★吹井賢『破滅の刑死者3 特務捜査CIRO-S 死線の到達点』

コミカライズも決定した『破滅の刑死者』の第3巻です!

今回、トウヤと珠子が潜入するのはシンガポール行きの豪華客船です。犯罪組織が運営に絡むカジノ船で、Cファイルが取引されるとの情報が。二人は注意を引き付けるための陽動であり、実際にファイル奪還を狙うのは他の捜査員だといいますが……。
トウヤたちは、別動隊の人物が誰か知らされていません。加えて、『瞳の色が緑』という情報のみ明らかな敵の存在もある。誰

もっとみる
★酒場御行『そして、遺骸が嘶く ―死者たちの手紙―』(メディアワークス文庫)

★酒場御行『そして、遺骸が嘶く ―死者たちの手紙―』(メディアワークス文庫)

第26回電撃小説大賞で《選考委員奨励賞》を受賞した作品です。

物語の舞台は、終戦から二年後の軍事国家・ペリドット。
陸軍に設置された『遺品返還部』は、死亡した兵士の遺品や遺言を届ける役目の部です。かつて狙撃兵だったキャスケットがそこに属し、任務をこなすのは、確かめたいことがあったから。
懐に自分宛の手紙を忍ばせる彼の、思い起こされる過去、向き合うことになる真実とは――。

医師を目指したやさしい

もっとみる
★野宮有『マッド・バレット・アンダーグラウンドIII』(電撃文庫)

★野宮有『マッド・バレット・アンダーグラウンドIII』(電撃文庫)

第25回電撃小説大賞で《選考委員奨励賞》を受賞した『マッド・バレット・アンダーグラウンド』の第3巻です!

〈魔女の関係者〉に会わせる代わりに、シエナの身柄を解放してもらう――ジェーンとの取引を成立させるべく、ロベルタ・ファミリー幹部ハイルの行方を追うラルフたち。同じく彼を狙うフィルミナード・ファミリー幹部ダレンの誘拐計画に乗じ、出し抜く作戦を立てます。
しかしハイルの護衛を務めるラーズを前に、リ

もっとみる
★澤村御影『准教授・高槻彰良の推察3 呪いと祝いの語りごと』(角川文庫)

★澤村御影『准教授・高槻彰良の推察3 呪いと祝いの語りごと』(角川文庫)

怪事件を収集する民俗学の准教授と、噓を聞き分ける耳を持つ大学生の、凸凹コンビによる民俗学ミステリシリーズ第3巻です。
表紙に尚哉も登場したほか、佐々倉・瑠衣子・難波も含めたキャラクター紹介がイラストつきで見られるのが嬉しいですね。

2月頭。秋学期試験を終えた尚哉は、憔悴しきった様子の難波を目にします。『不幸の手紙』のせいで呪われた気がすると聞き、高槻の研究室で相談に乗ってもらうことに。
それから

もっとみる
★澤村御影『准教授・高槻彰良の推察2 怪異は狭間に宿る』(角川文庫)

★澤村御影『准教授・高槻彰良の推察2 怪異は狭間に宿る』(角川文庫)

怪事件を収集する民俗学の准教授と、噓を聞き分ける耳を持つ大学生の、凸凹コンビによる民俗学ミステリシリーズ第2巻です。

ひとつめの依頼は、『五年二組のロッカー』という、小学校の怪談。コックリさんを行ったところ帰ってくれず、ロッカーに棲みついたというもので、子供達が怖がって騒ぎになっているのだとか。
高槻曰く「子供達にとって、日常と非日常が同時に存在する場所」だという学校での怪異。騒動を収めるため、

もっとみる
★澤村御影『准教授・高槻彰良の推察 民俗学かく語りき』(角川文庫)

★澤村御影『准教授・高槻彰良の推察 民俗学かく語りき』(角川文庫)

怪事件を収集する民俗学の准教授と、噓を聞き分ける耳を持つ大学生の、凸凹コンビによる民俗学ミステリシリーズ第1巻です。

大学生・深町尚哉は、噓を聞き分ける耳の持ち主。周りの人間とは無難な関係を築きつつ、線を引き、踏み出さないようにして過ごしています。
『民俗学Ⅱ』のレポートで子供時代の不思議な体験を書いた尚哉は、担当の准教授・高槻彰良に興味を持たれ、怪事件調査の助手にされてしまうのですが……。

もっとみる
★吹井賢『
破滅の刑死者2 内閣情報調査室CIRO-S第四班
』(メディアワークス文庫)

★吹井賢『 破滅の刑死者2 内閣情報調査室CIRO-S第四班 』(メディアワークス文庫)

(※2019.10.29 珠子に関する部分を加筆しました)

1巻発売から5ヶ月、『破滅の刑死者』待望の2巻です!

今回、CIRO-Sの一員となったトウヤと珠子が調査に当たるのは、とある大学で起きた連続不審死事件です。数ヶ月のうちに同じ教室で三人の学生が命を落とした上、彼らに繋がりは見出せず、死因や状況にも不可解な点が。
犯人が能力者の可能性もあるこの案件は、トウヤと珠子にとっては試験の意味合い

もっとみる
★古宮九時『死を見る僕と、明日死ぬ君の事件録』(メディアワークス文庫)

★古宮九時『死を見る僕と、明日死ぬ君の事件録』(メディアワークス文庫)

今回紹介するのは、「人の死を予告する幻影」を見る“僕”が主人公の物語です。古宮九時先生の、メディアワークス文庫における初作品ですね。

主人公が【彼ら】と呼ぶ幻影は、やがて訪れる死の瞬間を繰り返す亡霊のようなもの。時が近づくほどその姿は濃くなり、時を迎えれば見えなくなる。運命を回避すべく本人に話そうとしても、不審がられたり嫌悪感を抱かれたり。挙句、記憶に穴が空くほどの事件に巻き込まれた経験もあって

もっとみる
★砥上裕將『線は、僕を描く』(講談社)

★砥上裕將『線は、僕を描く』(講談社)

――これを求めていた。ずっと出会いたかった小説だ。

20ページほど読んだあたりで、そう感じた作品。それが、『線は、僕を描く』でした。第59回メフィスト賞を受賞し、週刊少年マガジンにて漫画版が連載されています。

わたしは友人づてに存在を知ったのですが、まず目を引いたのはなんと言ってもタイトル。「僕は、線を描く」ではない。「線は、僕を描く」。
「僕」と「線」という語が入れ替わるだけで、抱く印象はず

もっとみる
★斉藤すず『由比ガ浜機械修理相談所』(電撃の新文芸)

★斉藤すず『由比ガ浜機械修理相談所』(電撃の新文芸)

こちら、第25回電撃小説大賞《読者賞》に選ばれた作品です。

この《読者賞》、編集部選出の4作品の中から読者投票によって決めるという、第25回記念の企画によるものだったそうです。
また、刊行レーベルである《電撃の新文芸》は今年1月に創刊されたばかりで、“電撃が放つWEBエンタメノベル”と銘打ち、WEB発表作品などを書籍化しているとか。B6単行本という大きめサイズですが、カラーページや挿絵などもあり

もっとみる
★ノンバーバルパフォーマンス『ギア-GEAR-』(京都)

★ノンバーバルパフォーマンス『ギア-GEAR-』(京都)

ノンバーバルパフォーマンス。
そう聞いて、どんなものか想像がつくでしょうか。少なくともわたしには分かりませんでした。
京都で公演が行われている『ギア-GEAR-』は、日本発×日本初のノンバーバルパフォーマンスを謳う作品です。ノンバーバルとは、「言葉に頼らない」こと。つまり、『ギア-GEAR-』にセリフは存在しません。役者のみなさんは、動作、仕草、表情などでキャラクターを表現していきます。そして、各

もっとみる
★野宮有『マッド・バレット・アンダーグラウンドII』(電撃文庫)

★野宮有『マッド・バレット・アンダーグラウンドII』(電撃文庫)

第25回電撃小説大賞で《選考委員奨励賞》を受賞した『マッド・バレット・アンダーグラウンド』の続編です。
1巻を上回るボリュームと変わらぬ濃厚さながら、ぐんぐん読み進めてしまいました。

1巻で、狂気と正気、怪物と人間という境界線の真上で逡巡し、在り方を選んだラルフ。けれど生きづらさは相変わらずで、恋人を失くした過去に加えシエナを失う恐怖を抱えているし、フィルミナード・ファミリーの駒でいるしかない苦

もっとみる