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Free thinker

児童発達支援センターの子どもたち。
「They are free thinker than the teachers.」
チェコのカレル大学のマリア先生の言葉と彼らのアートワークスをいつも結びつける。

Free thinker... これが子どもの姿。

なんて素敵な言葉なのだろう。
自由に考える者たち。
私は「自由な表現者」と訳したい。

支援センターの子どもの姿とは一体どんなものだろう。

日々ゆったりとした時間が流れる。
作りたい時につくり、少し休んでは、
またワークスペースに戻ってくる。
時間の感覚がない中で、
これといった制約がない中で、
目の前に並んだ素材と対話しにやってくる。
そこで、彼らなりの秩序を見出しながら作る。

ここに集う子どもたちは、生まれながらにして様々なハンディを抱えている。
出生時、左半身に麻痺が残り、左手足を動かすのに相当な時間をかけて生活をおくるA君。
コミュニケーション面では、言葉で相手に伝えることが難しくすぐに友達を叩いてしまう。

ハンディ。
障害。

これは、子どもと支援者を〝療育をされる側〟と〝療育をする側〟という捉え方をした時に成り立つ言葉で、『療育プログラム』の中での彼らは、受身であることが多い。

しかし彼らが表現者である時は、『療育』という考え方を一旦取り除く必要がある。彼らの思考が動き出す過程に寄り添う大人は〝支援者〟ではなく、〝環境の一部〟になる必要がある。
環境とは例えば、アートワークスを支える材料屋さんや道具屋さんになるということ。
私はいつもこの状況が、小学校の図工の時間にリンクする。

自分を〝療育する先生〟ではなく〝材料屋さんや道具屋さん〟という環境の一部に置き換えることで、
見えにくくなっていた世界が見えるようになってくる。それは例えるならば、磨りガラスがクリアになったような感覚である。言葉というツールがなくても色や形がコミュニケーションを成立させてくれる。その瞬間ついにはそのガラスさえも取り払われていく。

左手がうまく動かないといわれているA君が粘土を必死にほじくる行為が私は大好きだ。
「ほじくる」という行為を一日中繰り返すことができるメンタリティに惚れ込んでしまう。

Connecting and disconnecting.

Recording Communication.

感覚が接続されたり、接続されなかったりという過程が素材との対話を記憶にとどめていく。
脳科学で言えばシナプスがつながっていくといった感じなのだろうか。つながらなかった感覚がつながった感覚を心地よいと感じるのは、大人も子どもも一緒であると思う。

こういった感覚を子どもの言葉に置き換えると
『これいい感じ!』である。
難しい大人の分析や推測はさておき、
子どもの『これいい感じ!』にだけ耳を傾けると、
つながらなかった感覚がつながった時の喜びの瞬間がよく分かる。そして『今日も出会えてよかった。君たちの〝これいい感じ!〟に。』と思える。

        大人の図工塾管理人 米光智恵

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