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朝井リョウ「何様」を読んだ

「何者」の方は三年くらい前に骨折して暇な時に読んだ。ちょうど映画が話題だったので、表紙が映画のキャストの顔が並んでるやつだった。深夜のコンビニで見つけて「うちの家の近くのコンビニにも雑誌以外の活字の本が置いてるのか」と感心したのを覚えている。

で、ついこの間、そのアナザーストーリーの「何様」の方が文庫になってたので買って読んだ。

アナザーストーリーなので「何者」のキャラを知っていると良いのだろうが、一度読んだくせに全く覚えていなかった。

なんか、就活がうまくいかない主人公が意識高い系の就活仲間を裏垢でバカにしてたら、それが本人に実はバレてた話 くらいの記憶だった。後に映画版を見て答え合わせしたら大筋は合ってた。

「何様」の方が個人的には好きだ。

「それでは二人組を作ってください」という短編が特にわかりみが深い。ので、少しだけ引用する。

作中の理香はどうしても女の子と二人組が作れない。

小さなころから、女の子とじょうずに二人組になれなかった。何かを察するように、女の子は私と二人組にはなりたがらなかった。いつでも私は、二人組ではない場所から、二人組をじょうずに組める子たちを見ていた。

自分が大学一年のときに胡散臭い宗教家が講師の授業があった。「二人組を作ってじゃんけんをして感想と相手の名前をかいて提出しろ」みたいなくだらない課題を出された。くだらないのだが、提出しないと出席点にならない。

なので、学生は必死になる。

近くの学生に「私とじゃんけんしてください」と頼んだが、弱そうなので無視されてしまった。今考えるにたぶん大講義室がうるさくて聞こえてなかったのだと思うが、心が折れて、高校時代の友達の名前を書いて提出した。悲しくて悲しくてやりたくもないじゃんけんができなくて泣きそうになった。

別にいじめられてるわけでもない。執着心がなさすぎてすぐ諦めてしまう。もう一度大きな声で頼めば事態は変わってただろうに。それができないし、もういいかなってなる。

なんか、別にいじめられてるわけじゃないけど、なかなか二人組がつくれない現象ありません?あるよね…?

他の子は前もって口裏合わせをしたりしている場合もあるんだけど、そうじゃない子もなんだかんだでパッと二人組つくれてるんだよなあ。

そんで、私の場合は二人組を作れない自分にそこまで危機感を抱いてないのが良くない。そもそもグループワークに意欲的になれないので、「無理して作らなくても」って思ってしまう。

そんでもって「余る人が出るかもしれないのに三人組を許容することを伝えずに二人組を命じる教員がセンスない。」とか心の中で文句を言ってしまう。

それ以外の学生時代だと、幸運にもどうにかギリギリ二人組に入れてもらえることが多かったけど、「組むなら絶対この子!」と安心感がある状態は少なかったと思う。その場で要領よく立ち回れただけ。

とはいえ、授業や研修で二人組を作るのは、大人になるにつれうまくやり過ごせるようになるだろう。だが、適当にうわべだけうまくやり過ごして生活していると、人生のあらゆる場面の二人組が作りにくくなる。人間関係をサボったツケが回ってくる。

作中で理香はルームシェアをする相手を探す。友人の好きそうなテラスハウス的な番組に出てくる家具を買い揃える。そして、家に招待する。素敵な家具を見せてシェアハウスに誘うために。

あ、わかる。

過剰にもてなしたくなるよね。あと、相手はこれが好きだからこうしたら喜ぶに違いないと浅はかな戦略を立てて行動する。実際は人間そんな単純じゃないからうまくいかなかったりする。作中でもうまくいかない。

人との親密な接し方がわからなくて、自分が好きな人には過剰に気配りをしてしまう現象にも心当たりがある。大学生のときに初めて呼ばれた先輩の家での宅飲み。みんなスナック菓子と自分の分の飲み物くらいの持ち込みなのに、一人だけ、酒から食べ物までめちゃくちゃ差し入れをもっていってしまった。全員分をカバーできそうなくらい。

場数を踏んでないから気配りの加減がわからないのだ。おばあちゃんが孫が腹一杯じゃないと不安でめっちゃ食わせるみたいな。

だから、ルームシェアに友人を誘うために家具から買い揃える心理もちょっとわかる。やっと二人組を作れそうだから張り切っちゃうよね。計画的に何日も前から家具を買い揃えるのもいじらしい。

自分が人を家にあまり呼ばないようにしてるのもそれ。実際は、ちょっと綺麗にしていれば許されるんだろうけど、過剰に投資をしてベストを尽くそうとしてしまうのが目に見えてる。やらんくていいことをやりがち。

これもいろんな人との親密な人間関係の経験が少ないからではないだろうか。できることなら、特定の一人ではなくて、あらゆる人との二人組を作れるようになれるとラクになりそう。

そろそろ、人間関係に必死にならなかったツケが背後に迫る気配を感じ始めている。でも、これからも性懲りも無くサボり続けるんだろうな。

ラクになるとかならないとかそんな話ではないけど、思いついたことを好き勝手書いた。読書感想文のネタを探して検索してたどり着いた学生にとって役立つ情報はなさそう。ウケる。なんか読んだら、そんなテキストをためていきたい。

話を「何様」に戻すと、他の話も自意識がえぐられるような短編ばかりなので是非読んでみてください。私の場合は二人組の話がいちばんフックしたが、誰かしらなんかかんか心当たりある話がありそう。ちなみに、「何者」を読んでなくても大丈夫です。それは本当。

#本 #感想 #読書

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千鳥あゆむです。なんか数年前にnoteidをchidorimediaにしてたっぽいので、本とか記事とか映画とかを読んだり見たりした感想を書きます。ネタバレはするかもしれないけど私は悪くない。あと、東京の美味しいインドカレー屋を教えてください。

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