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【選挙ウォッチャー】 NHKから国民を守る党・動向チェック(#251)。

 NHKから国民を守る党、改め、NHKから自国民を守る党・党首の立花孝志が「NHK時代に記者職であったことはない」。先日、ついにNHKがはっきりと文書でそう回答した。
 立花孝志はこれまで選挙公報にも「NHKでは記者だった」と書いてきたが、NHKが社印付きの文書でキッパリ否定してしまったのだから、立花孝志に公選法違反の疑いが強まったと言ってもいいだろう。
 これまで立花孝志をカリスマ化し、立花孝志なら何かやってくれるに違いないという期待感を煽ってきたもの。それは立花孝志が自称する「スーパーサラリーマン伝説」である。
 ある時は記者、ある時は経理、ある時は会長秘書、大ヒットした「冬のソナタ」は立花孝志が買い付けたといい、NHKが獲得したプロ野球の放映権のほとんどは立花孝志による巧みな交渉によるものだったというストーリーだ。聞けば誰もが「んなわけあるかいな!」と思ってしまう奇抜な中二病ストーリーだが、一部のピュアなハートの持ち主は「立花さん、すげぇ!」と思ってしまうのである。
 しかし、立花孝志のスーパーサラリーマン伝説は、この記事をもって、ぶっ壊れる。それどころか、脅迫罪、威力業務妨害、不正競争防止法違反に続き、4つ目の罪状がつくかもしれない。公職選挙法第235条違反だ。


■ 選挙公報にも「記者」だったと書いている

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 立花孝志は、2017年の葛飾区議選、2019年の堺市長選などで、選挙公報のプロフィール欄に「NHK職員(経理・記者)として採用され、約20年報道局などで勤務」と書いている。そして、YouTubeではこれまで幾度となく「元NHK記者」だと述べている。ところが、「立花孝志かく闘えり」という自伝的ムック本の中では「NHK入局・和歌山放送局庶務部に配属」と書かれていて、その後は「スポーツ報道センター」などに配属されたという。本人の自伝にすら「記者職」であったことを示す根拠がない。
 立花孝志の「元NHK記者」という肩書きは、一体、何を根拠にしているのか。立花孝志いわく、「日本相撲記者クラブや東京運動記者クラブの記者証を持っていた」ことが「記者だった」という証拠らしい。しかし、NHKの記者職というのは、記事を書いたり、あるいは、報道番組などに出演してレポートする仕事である。残念ながら、これまで立花孝志が書いた記事や映像は見つかっていない。レポートや出演したニュース番組が一つも存在しない記者とは、一体、何なのだろうか。

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 NHKから国民を守る党をめぐっては、上杉隆幹事長もまた「元NHK記者」を自称している。これだけNHKを目の敵にしておきながら、「元NHK記者」というブランドには固執しているのが滑稽だが、これまで何度も選挙公報に「記者だった」と書いているので、これが嘘となれば「虚偽事項公表罪」が成立する。


■ NHKに対する情報開示請求でわかったこと

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 実はこれまで、立花孝志が本当に記者だったのかを確かめようと、NHKに問い合わせた人はそれなりにいたのだが、なぜか教えてもらえずに終わっていた。しかし、立花孝志が本当に記者だったのかどうかは、公選法違反の可能性もある重要な問題だ。なにしろ、立花孝志は選挙のたびに「記者だった」とアピールし、多くの人がそれを信じて投票してしまったからだ。

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 最初はNHKに電話で問い合わせをしたのだが、やはり電話では教えてくれなかったので、「開示の求め」を出すことにした。NHKは公共放送のため、情報開示には積極的に応じている。そこで、立花孝志の人事に関する資料を開示できないかを試みたのだ。
 1ヶ月後にNHKから連絡があり、開示・不開示等の判断に今しばらく時間を要するということで、さらに1ヶ月待つことになった。

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 12月15日までに開示か不開示の判断を行うとして、先日、簡易書留が届いたのだが、結果は「不開示」となってしまった。NHKからは以下の回答をいただいている。

お求めの人事履歴に係る文書は、個人に関する情報であって、開示することにより当該個人の権利利益を害するおそれがあるため、NHK情報公開規定第8条1項3号に該当し、開示することができません。

 それが公人に関する人事履歴であっても、人事履歴を公表することはできないというのがNHKの回答だった。しかし、回答はそれだけでは終わっていなかった。不開示の決定を知らせる文の下に、こう書かれてあったのだ。

(情報提供)
NHKは、これまで報道機関等からの問い合わせに対して、「立花孝志氏はNHK在職時において記者職であったことはない」と回答しています。

 さすがはNHK、しっかりと社印付きの文書で、報道機関等からの問い合わせに対し、「立花孝志が記者職であったことはない」と回答しており、人事履歴こそ公表しないが、記者職でないことはキッパリと断言した。
 私はこの文書をもって、立花孝志が堺市長選などにおいて、公選法235条違反「虚偽事項公表罪」をしていた疑いが強まったと考えている。ここから先は、誰かが公選法235条違反だと刑事告発をした瞬間に、警察や検察の捜査が始まるだろう。


■ プロ野球のNHKの放映権を交渉・獲得した男

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 立花孝志のスーパーサラリーマン伝説は、とどまるところを知らない。
 先日は、新庄剛志選手がプロ野球のトライアウトを受けたものの、獲得する球団がなかったことに触れ、立花孝志が動画をアップしていたのだが、ここでもスーパーサラリーマン伝説が惜しみなく発揮されていた。

「で、まあ、残念な結果というか、僕は一プロ野球ファンとして、野球をする人間として、いや、本当に残念でなりません。で、まあ、いろいろと僕はTwitterでもう宣言している通り、来年は少なくとも野球の観戦、それは球場に行くことも含め、テレビで、とか、ネットとかで野球を見ることをしません。プロ野球ね、日本のプロ野球は見ません。あまりにもくだらない人たちがプロ野球をやってるなというふうに、すごく思いました」

 野球をする人間と言っても、実は「趣味で草野球をする程度」だが、くだらない人たちがプロ野球をやっているので見ないのだという。もっとも、1月18日に刑事裁判の第1回期日を迎える立花孝志なので、今後の判決次第では、見たくても見られない環境に置かれるということは書いておきたい。

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「っていうのは、まあその、私自身は、NHK時代にプロ野球の仕事をですね、無茶苦茶やってました。あー、私はNHKの報道局スポーツ報道センターというところで経理の担当、渉外の担当、渉外ね、交渉をする担当をしておりました。今、NHKが巨人戦を放送してるのも、私がこの放送権を買ってきました。阪神タイガース、BS放送でNHKはたくさん年間おそらく35試合、ホームゲームで半分ぐらいやってると思いますけども、契約をしたのは私です。当時、高田さんという代表、球団社長で、えー、野崎さんというね、野崎さんが専務理事だったと思います。その頃です。広島、マツダさんですね。中日はウスイさんだったと思います、僕が担当した時は。DeNAの時は、僕はもうDeNAは知らないですね。ここはDeNAとヤクルトはほとんど知らないので、えー、語れません」

 記者をしていた時は、野村監督や星野監督にもインタビューをしてきたと自称する立花孝志だが、同時に、各球団と放映権をめぐる交渉をして、巨人や阪神の放映権を締結させたのは、何を隠そう、立花孝志なのだという。
 ある時は「冬のソナタ」を買いつけ、ある時は会長秘書として活躍し、またある時は巨人や阪神の放映権を買ってくる男。NHKから「記者職だったことはない」と否定されているが、放映権というのは球団社長と直接交渉するものなのだろうか。

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「日本ハムはちょっと忘れました。楽天は僕が行った時にちょうど変わったのかな。ロッテもそこまで詳しくないです。ソフトバンクはソフトバンクに変わる前のダイエーの時にですね、高塚さんという球団社長と無茶苦茶話しました。オリックスは宮内さんですね。で、西武はここはツタ、つ、当時、堤さんでしたが、まあ、いずれにしても私は、日本のプロ野球の裏側、ですね、知り尽くしている人間だと自負しております」

 各球団の担当部署を通すことなく、球団社長とダイレクトに交渉し、放映権を獲得してきたスーパーネゴシエーター・立花孝志。プロ野球から韓流ドラマまで、立花孝志の手にかかれば手に入らないものはないはずだが、そんな類まれなる能力の持ち主が、「NHKから自国民を守る党」に党名を変更して「自民党」という略称にするという総務省との交渉は、あっけなく門前払いされてしまったのだ。かつて発揮したという天才的な交渉能力は、すっかり錆びついてしまったということだろうか。それとも、ただのホラッチョだろうか。
 普通に考えていただきたいのだが、オリックスの宮内さんとは、おそらく宮内義彦氏のことだろう。それとも苗字が同じ担当者がいたのだろうか。宮内義彦氏は球団社長どころか、オリックス株式会社の会長であり、オリックスというのは不動産からクレジットまで多角的に経営し、関西国際空港や神戸空港などの運営権も獲得するような大企業の社長や会長を歴任した人物である。西武の堤さんというのは、おそらく堤義明氏のことだが、西武鉄道や西武百貨店、プリンスホテルなどのグループ会社のオーナーである。球団側からトップ中のトップが出てきて、NHK側が会長でも局長でもなく、ヒラ社員の立花孝志に任せるだろうか。
 NHKから記者だったことも否定されている立花孝志が、名だたる球団社長たちと交渉してきたとは思えない。これでよくプロ野球の裏側を熟知していると自称できたものだ。しかし、N国信者たちは、これだけ突拍子もない立花孝志の話さえ簡単に信じてしまうのである。


■ N国信者たちは証拠があっても信じない

 そもそも「元NHK記者」というのはブランドである。その理由は、東大や京大卒といった輝かしい学歴があったとしても、そう簡単にはなれないものであり、NHKのニュースというのが一定の信頼性を保っているからである。
 何でも学歴で決められてしまうのは良くないのかもしれないが、それでも漢字のミスを連発したり、言葉の意味をわからずに使ってしまうような人間が記者をやってしまうと、ニュースの信頼性が落ちてしまう。例えば「政治家の鑑」と書こうとして「政治家の鏡」と書いてしまうようなことがあってはならないので、それなりの学歴や文章を書く力は求められる。少なくとも立花孝志のように「中止」と書こうとして「中上」と書いてしまう、庶務課出身の男がなれる職業ではないのだ。
 しかし、NHKから国民を守る党を熱烈に支持している「N国信者」たちは、どこからどう見ても記者には思えない立花孝志を本気で記者だと思っているし、NHKが公式文書で「記者ではなかった」と回答しても、立花孝志を貶めるためにNHKが嘘をついていると思ってしまう。
 実際、ジャーナリストを自称する立花孝志の仕事ぶりをよくご覧いただきたい。安倍晋三総理が入院した際に東京地検の事情聴取を受けていたという話は「デマ」もいいところだった。女性アイドルがファンから暴行される事件が起こった時にはネットから拾ってきたガセ映像を「これが彼女のセックステープだ」と言って拡散し、「アイドルは性を売りにしているのだから事件のリスクを背負うのは当然だ」とまで言い放っていた。記者のお作法の基本のキも理解していない人間が、「元NHK記者」を自称するなんて笑止千万。それでもN国信者たちが立花孝志の言うことを信じてしまうのは、圧倒的に社会経験が少ないからだろう。


■ 選挙ウォッチャーの分析&考察

 NHKの社印付きの公式文書による情報提供と、東京運動記者クラブの記者証を持っていたからという理由で「記者だった」の一点張りをしている立花孝志の主張、どちらがより真実性が高いかと言ったら、それは間違いなくNHKの公式文書だろう。
 今、記者職ではないことが文書で明らかになったわけだが、立花孝志は記者だったことを証明するためにNHKを訴えるのだろうか。かつてお世話になった「週刊文春」さえ訴えているのだから、NHKを訴えないはずがないだろう。これでNHKを訴えなかったら、ただの嘘つき野郎だ。

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ちんこ。

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