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【選挙ウォッチャー】 東京五輪と新型コロナウイルス(#7)。

 東京五輪の熱狂の裏で、東京では新型コロナウイルスの自宅療養者が1万人を超え、重症化しても入院させてもらえず、亡くなる方が続出しかねない危機的な状況にあると、皆様にお伝えしていますが、肝心の政治家の皆さんは一体、何をしているでしょうか。
 これまでは「デルタ株ってヤバいの?」とか「どうしてPCR検査を拡充した方がいいの?」とか、新型コロナウイルスについての基本的な話を解説してきましたが、今日は「選挙ウォッチャー」としての本領発揮。このとんでもなく感染が拡大している中で、政治家の皆さんがどんな動きをしようとしているのかを、わかりやすく解説します。これを読んだら、とりあえずバカに政治家を任せている場合じゃないことが、よくわかると思います。


■ 日本政府「重症以外は自宅療養を原則とする」

 今から1年半前、中国・武漢で新型コロナウイルスが蔓延し始めた時、中国がたった10日間の突貫工事で臨時病院を作り、1500床を確保したというニュースを見て、多くの日本人は「中国www」となりました。
 いくら入院できないからって、たった10日間の突貫工事でプレハブの病院を作るなんて、中国は一体、何を考えているんだと。これにはネトウヨの皆さんも「これだから中国共産党ってギャグなんだよ!」と大爆笑していました。僕も中国共産党はいろいろとギャグだと思いますが、我が大日本帝国はどうなっているのか。我らが大日本帝国の力を中国に見せつける時がやってきました!
 8月2日、大日本帝国で暮らす下々の民に、菅義偉閣下から大変ありがたい政策が発表されました。それは、もう東京は入院したくても入院なんてできないので、「重症患者以外、全員、自宅療養を基本とする」というものでした。もはや完全に医療崩壊しており、中等症までは自宅療養することになりましたので、我が大日本帝国では、こうなります。

■ 40度以上の熱が続いています。→大丈夫だ、家にいろ。
■ あまりに咳が酷すぎて死にそうだ。→頑張れ、家にいろ。
■ 血中酸素飽和度が90を下回りました。→ギリイケる、家にいろ。
■ たぶん肺炎になっていると思います。→かもしれないな、家にいろ。
■ 意識が朦朧としてきました。→そんな奴はたくさんいる、家にいろ。
■ 全身が痛すぎて眠れません。→まあ、そんなもんだ、家にいろ。
■ 家族に感染させたくないです。→しょうがないだろ、家にいろ。
■ せめて子供だけは助けてください。→うるさい、家にいろ。
■ もう息をしてません。死んでませんか。→よし、入院していいぞ。

 中国のような、一党独裁のくせに、すぐ「入院させてくれ」と言ってくるような貧弱な人間しかいないザコ国家とは異なり、我が大日本帝国は、ちょっとやそっとのことでは病院のお世話にはならない「驚異の忍耐力」を世界に見せつけるべく、本気で死にかけるまでは自宅で療養するという、大変ありがたい政策を施してくださったのです。
 7月28日には、小池百合子都知事が、東京大帝国で暮らす下々の民に対し、「特に一人暮らしの方々などは、自宅も、ある種、病床のような形でやっていただくことが、病床の確保にもつながるし、その方の健康の維持にもつながる」とご発言。一人暮らしの場合、容体が急変しても救急車を呼んでくれる人がいないので、大阪で医療崩壊が起こった時は、一人暮らしの人ほど亡くなるケースが多かったわけですが、それは大阪府民がお好み焼きばっかり食べているからそうなるだけで、我らが東京都民ぐらいになると、むしろ自宅を病床のような形でやることで、たぶん、枕元に名前とか血液型とか書いたカードとか貼っちゃうことで、その方の健康の維持にもつながるのです。これぞ、東京の底力。大阪府民がビックリしすぎて吐いたゲロで、もんじゃ焼きを作ってやる勢いです。大阪が100年経っても東京に勝てないところを存分に見せつけてやりましょう!


■ 茂木外務大臣「酸素濃縮器をタイとラオスに」

 首都圏は感染の爆発が止まらず、今すぐハードなロックダウンをしなければ、被害がもっと大きくなり、20代や30代の若者をはじめ、小さな子どもの命まで奪われかねない状況になっているのは誰の目にも明らか。「自宅療養」という名の「自宅放置」の感染者を4万人以上生み出し、明日にも5万人を突破しそうな勢いになっている中で、これから絶対的に必要になるであろうものが『酸素』です。
 新型コロナウイルスに感染し、肺をやられてしまうと、体に酸素を送ることができなくなり、「血中酸素飽和度」が低下します。どれくらい病状が深刻になっているのかを判断する一つの材料が「血中酸素飽和度」で、パルスオキシメーターというもので測定します。最近は新型コロナウイルスに感染すると、保健所からパルスオキシメーターが送られてくるシステムになっているようなんですけど、こんなにたくさんの人が感染すると、このパルスオキシメーターをレンタルできるかどうかも怪しくなると思います。ただ、最悪の最悪、パルスオキシメーターがなくても、数値として把握できないだけで、どうにかなるとは思います。というのも、「血中酸素飽和度」が低下している人は、かなり息苦しいはずで、体の酸素が不足してそうであることは見ればわかります。問題は、体の酸素が不足している人に、ちゃんと酸素を送ってあげられるかどうかです。そこで登場するのが「酸素濃縮器」というやつなのですが、我が大日本帝国は、とても素敵な政策を発表しました。

「感染が急拡大しているタイとラオスに酸素濃縮器を送ります」

 こんなに美しい国があったでしょうか。まさに今、日本人が入院できずに困っていて、入院できない人たちが肺をこじらせた時に、どのように酸素を吸わせてあげるのかということが問題になっている中で、我が茂木敏充閣下は自宅で死ぬかもしれない日本人にではなく、タイに775台、ラオスには100台の酸素吸入器と60万回分のワクチンを提供するというのです。
 どれだけ自分の腹が減っていても、手に入れたパンを子どもにあげる逸話のような、酸素を吸えずに苦しむ日本人より、タイとラオスの感染者を真っ先に助ける「We are the world」の精神。これぞ世界に誇れる美しい国・ジャパンなのでございます! バンザーイ!!
 国際貢献は大切です。ただ、国際貢献できる国って、どういう国かと言うと、まずは自分たちがしっかり酸素を確保できていて、ワクチンもしっかり打ち終わっていて、病床の確保も万全で、日本では酸素不足で死ぬ人がいないので、ここはひとつ困っている国を助けてあげてあげようという立場の人たちです。
 しかし、タイで苦しんでいる人も人間だし、ラオスで苦しんでいる人も人間なので、僕たちの税金で、僕たちの子どもや、僕たちのお父さん・お母さんの命を守るのではなく、しっかりと僕たちの税金で、タイの人たちやラオスの人たちの暮らしを守っていく。コップンカー・ジャパン! 友愛精神!
 さあ、ニッポンの皆さん、今日もタイとラオスのためにたくさん働き、たくさん納税しましょう!


■ 「重症者数や死者数は少ないぞ!」は意味がない

 今、ネトウヨでメシを食っている「上級ネトウヨ」たちが、口を揃えて発信しているのが「感染者の割に重症者が少ないので大丈夫だ」とか「今回の波では死者が全然出ていない」とか、重症者数や死者数を見れば、今回の第5波は全然大丈夫だという話です。
 しかし、これまでネトウヨの話が当たった試しが一度もありません。なぜなら、「バカじゃなければネトウヨになっていない」という大前提があるので、ネトウヨの言うことを信じてヒャッハーしても、現実はより厳しいものになってしまいます。
 まず小泉進次郎パイセンぐらい当たり前のことを言うと、「感染者がいなければ、死者も重症者もいない」ということです。感染していないのに重症になる人がいれば、それはもう別の病気だし、感染していないのに死ぬ人がいれば、少なくとも新型コロナウイルスのせいで死んだということにはなりません。
 そうすると、この話はまず「感染する」というところから、すべてが始まります。感染しても、感染した瞬間に死ぬわけではありません。味覚がおかしくなるようなところから始まり、何日も高熱の日が続き、次第に息苦しくなって、いよいよ救急車を呼ばないと死んでしなうかもしれないところに段階的に進んでいきます。中には2~3日寝込んだら治ってしまったという人もいるかもしれませんが、ある一定の割合で「重症」とカウントされる人が出てしまいます。
 ちなみに、日本の「重症」の定義は、ECMOをつけるような「瀕死」の状態だけを指すことになりましたので、鼻に酸素チューブをつけ、レムデシビルを投与されながら陰圧された部屋で管理されているぐらいのやつは「中等症」になるので、そこまで死にかけないと「重症者」としてカウントしてもらえないという「定義のマジック」が存在し、そもそも日本の重症化率は低く抑えられています。
 そういう話は置いといて、感染してから「重症」になるまでには、ある程度の日数がかかります。そして、そこからさらにECMOをつけることになった重症患者さんも、なるべく死なないように頑張りますから、感染してから亡くなるまでは、ざっくり20日ぐらいかかると言われています。「死にそうなので諦めまーす!」ということにはならないので、重症者としてカウントされてからも、医療従事者の方々が回復を目指し、あの手この手で頑張ってくださり、それでもダメでお亡くなりになる方はどうしても出てしまいますが、重症になってから死ぬまでにも時間がかかります。
 つまり、感染者が増えてから重症者が増えるまで、そしてその先の死者数が増えるまでには「タイムラグがある」ので、今、このタイミングで重症者が少なくても、あるいは、死者数が少なくても、重症になる人と死ぬ人は一定の割合で必ず存在するので、感染者が増えれば重症者は増えるし、感染者が増えれば死者は増える。もちろん、ワクチンの効果があったり、薬が効果を発揮して、昔よりは重症化しにくく、昔よりは死ににくくはなっていることでしょう。それでも、感染者が増えて医療崩壊を起こすと、そもそも医療にかかることができないので、入院しなければ受けられない治療が受けられなかったり、酸素が足らなかったりして、結局、ワクチンや新薬の効果なんて吹き飛んでしまう可能性があるのです。


■ 世界に比べて日本の感染者数は少ないのか

 首都圏を中心に感染者が爆発し、今すぐロックダウンをしなければ、もっともっと地獄が広がって、日本経済に大きな大きなダメージを与えることになると、僕は何度も何度も警鐘を鳴らしていますが、世の中には「それでも世界に比べれば、日本の感染者数はだいぶ低い」と主張するアホが、とても大きな声を出してきます。
 そういうことを言ってくる奴の多くはネトウヨで、ネトウヨはだいたい中国と韓国が大嫌いだと相場が決まっていますので、まずはこちらのデータをご覧いただきたいと思います。これは中国と韓国を含めた、100万人あたりの感染者数を示したグラフです。

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 中国は「青」なんですが、制圧できているので、グラフになりません。
 ネトウヨの皆さんが「日本より格下だ」と思っている韓国ですが、グラフは「赤」です。韓国ではヤバめの新興宗教の間でクラスターが発生するような出来事があったため、最初の頃はボーンと感染者が跳ね上がってしまいましたが、その後はどうにか苦労しながらも抑え込んでいる印象です。
 さて、肝心の日本なんですが、ご覧の「緑」のグラフです。韓国も今回のデルタ株によるパンデミックでは感染者が増えていて、食い止めるために必死こいているのですが、それでも日本の第3波や第4波よりはマシなところで踏みとどまっています。日本はどうかと言うと、完全にぶっちぎっています。現在、東京の実効再生産数は1.7を超えていると計算されるので、このグラフはまだまだニョイーンと上に伸びまくります。韓国に10馬身以上の差をつけることは間違いないでしょう。
 感染が広がったばかりの時に「マスクをつける」という文化が定着しなかったばっかりに感染者が激増しているような国々を例に出し、「俺たちの方がスゴい」ということに何の意味もありませんので、せめて成功している国同士の切磋琢磨で勝った負けたを語ってほしいものです。これでは小学3年生ぐらいの女子と腕相撲で勝負して「俺の方が強い」と言っているオジサンと同じです。


■ 選挙ウォッチャーの分析&考察

 最近、僕の記事が「妙に読まれているなぁ」とは思っていたのですが、よく考えたら、世の中が東京五輪のお祭りムードで浮かれる中、新型コロナウイルスのネガティブな状況を、ここまで真正面から一般の人に向けて、中学生にもわかる言葉で書いている記事が、僕以外にまったくと言っていいほど存在していなかったことに気づき、まさかのオンリーワンだったことを知って、震えています。
 新型コロナウイルスという全国民が避けては通れない「超ヤバい災害」がまさに今、現在進行形で目の前で起こっているのに、それを「コロナはただの風邪だから大丈夫」とか言わないで、厳しい現実かもしれないけれど、現実は現実としてしっかり受け止め、その上で何ができるかを考えようというスタイルの記事が、この世にほとんど存在しない。読まれることは嬉しいことですが、それでも競争がないということは問題です。他にも書いてくれる人が現れるように期待をしつつ、これからも皆さんに現実をわかりやすく伝えていきたいと思います。無料ですし、あんまり儲からないので、誰もやらないかもしれませんが。

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