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【選挙ウォッチャー】 東京都知事選2020・分析レポート。

6月18日告示、7月5日投開票という日程で、東京都知事選が行われました。皆さんもご存知の通り、この選挙は「選挙をやる前から結果が決まっている」と言っても過言ではなく、現職・小池百合子さんの圧勝が予想されていました。東京五輪が開催できるかできないかで揺れていた頃は、何も手を打たずに感染者を拡大させてきたのに、2020年の開催が中止されることに決まった瞬間、一瞬にして手のひらを返し、まるで国に物を申すかのようなパフォーマンスを見せ、事情を知らない多くの都民に「小池百合子さんはちゃんとやってくれる人」という印象を持たせることに成功したのです。多くの国民は、政治や選挙を熱心に見ているわけではないし、ほとんどイメージで投票先を決めてしまうため、これまで何一つ公約が実現できていないにもかかわらず、小池百合子さんは圧勝してしまったのです。

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山本 太郎  45 新 れいわ新選組
小池 百合子 67 現 都民ファーストの会
七海 ひろこ 35 新 幸福実現党
宇都宮 健児 73 新 立憲・共産・社民推薦
桜井 誠   48 新 日本第一党
込山 洋   46 新 スマイル党
小野 泰輔  46 新 日本維新の会推薦
竹本 秀之  64 無 先物取引投資家
西本 誠   33 新 スーパークレイジー君
関口 安弘  68 新 無所属(建物管理業)
押越 清悦  61 新 目覚めよ日本党(電波将軍)
服部 修   46 新 ホリエモン新党(N国)
立花 孝志  52 新 ホリエモン新党(N国)
斉藤 健一郎 39 新 ホリエモン新党(N国)
後藤 輝樹  37 新 トランスヒューマニスト党
沢 紫臣   44 新 小説家
市川 浩司  58 新 庶民と動物の会
石井 均   55 新 フリージャーナリスト
長澤 育弘  34 新 セルフケア薬局
牛尾 和恵  33 新 不思議系おばちゃん
平塚 正幸  38 新 国民主権党(元N国)
内藤 久遠  63 新 元派遣社員

今年は史上最多となる22人が立候補し、供託金を没収されなかったのは当選した小池百合子さんと宇都宮健児さん、山本太郎さんだけ。日本維新の会の小野泰輔さんは供託金没収となり、以下の泡沫候補の皆さんは、特に大きな話題になることもなく、静かに終わった印象です。泡沫候補の中に政治的な主張がしっかりしているような候補はほとんどおらず、どいつもこいつもバカとポンコツばかり。どちらかと言えば「東京都知事選」というより「東京珍獣博覧会」と言った方が適切ではないかと思います。これが日本の首都である「東京」の姿です。人々が政治や選挙に対して無関心を極めた結果がコレなのです。僕も含め、みんなが深く反省をしなければなりません。


■ 小池百合子候補の主張

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現職の小池百合子さんは、4年前、築地市場の移転問題を白紙に戻すことを宣言した上で、「7つのゼロ」という公約を掲げ、当選を果たしました。当時は、自分たちの声をちゃんと聞いてくれて、自民党にもキッパリと物を申してくれる素敵な候補じゃないかと思って期待した人も多くいました。東京都知事選が終わってしばらくは「時の人」として注目され、翌年の東京都議選では小池百合子さん率いる「都民ファーストの会」が圧勝。しばらくは小池百合子旋風が吹き荒れたのでした。ところが、「白紙に戻す」と言っていた築地市場の移転問題は、白紙に戻すことを白紙に戻し、豊洲に移転することを強行。結果、豊洲に移転させられた仲卸業の職人たちは、築地にいた頃よりも売上が減り、追い打ちをかけるように新型コロナウイルスに襲われてしまったため、非常に大きな損害を受けています。さらに、公約として掲げていた「7つのゼロ」ですが、待機児童ゼロ、残業ゼロ、満員電車ゼロ、ペット殺処分ゼロ、介護離職ゼロ、都道電柱ゼロ、多摩格差ゼロの7つは、まさかの「公約達成ゼロ」という結果に終わりました。唯一、ペット殺処分ゼロだけが、2018年、2019年の2年間、病気やケガなどが理由の処分水を除いてゼロになっていますが、それ以外は達成されていません。また、小池百合子さんは「情報公開は一丁目一番地」だと言っていますが、都の公開文書は「のり弁」と言われるぐらいに真っ黒で、これまでまともに資料を公開したことはありません。口ではいろいろ言っているけれど、実際にはまったくやっていないに等しいのです。つまり、小池百合子さんは「口で言っていることと実際にやっていることが全然違う」の典型的な人なのですが、ぶっちゃけた話、小池百合子さんがどれだけ公約を守ったのかを選挙前に検証する人なんていないので、みんな、小池百合子さんの言っている「わけのわからない言葉」を信じ、なんとなく小池百合子さんに投票してしまうのです。

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東京都知事選が行われている間、新型コロナウイルスの感染者数はどんどん増えていきました。小池百合子さんは6月2日から6月11日にかけ、新規感染者が増加傾向にあった時に東京都庁やレインボーブリッジを赤くライトアップすることで都民に警戒を呼び掛けるため、「東京アラート」なるものを発令しました。東京都知事選の後半は、明らかに「東京アラート」を発令していた時よりも新規感染者数が多く、都民に警戒を呼び掛けるべきタイミングにもかかわらず、小池百合子さんは基準を見直すことで、新規感染者数が100人を超えても、いつも通りの注意を呼び掛けるだけで、具体的なアプローチは何もしなかったのです。こうなってしまう背景には、前回の自粛で都の貯金のほとんどを切り崩してしまったため、再び自粛を要請しようと思っても「補償するためのお金がない」という事情があると思います。それでも「東京アラート」ぐらいはできると思うのですが、小池百合子さんは選挙期間中に新型コロナウイルスの封じ込めよりも「経済を優先した」ということになるでしょう。しかし、かねてから指摘しているように、経済を優先するためには、積極的なPCR検査をして、感染者を隔離していく必要があります。極端な話、経済を止めなくてもPCR検査をガンガン回していくことで安全性を担保し、感染してしまった人に手厚い補償をする。PCR検査が充実すれば院内感染のリスクも減り、医療体制の確保にもつながります。本来、経済を回すことと新型コロナウイルスを封じ込めることは両立するにもかかわらず、経済だけを見てしまうから、最終的に感染が広がって経済を回せなくなってしまう。実は、経済を回すためにPCR検査を充実させる必要があると言っていたのは、全候補の中で唯一、宇都宮健児さんだけしかいませんでした。もっとも、都民の皆さんはそういう候補が存在したにもかかわらず、選ぶことはありませんでしたが・・・。

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さて、今年の小池百合子さんの公約は「東京大改革2.0」です。さっそく何を言っているのか意味がわかりませんが、まず新型コロナウイルス対策では東京版の疾病対策予防センターを創設し、PCRほか各種検査体制強化、病院・医療従事者へのサポート強化、マスク・消毒液の備蓄、重症・軽症患者の医療体制整備、救急搬送体制の強化、ワクチン・治療薬の開発支援強化を掲げています。それ以外の公約は非常に抽象的で、爆速デジタル化、魅力と強さを兼ね備えたまちづくり、ワイズ・スペンディング(賢い支出)の徹底、グレーター東京構想(東京を中心とした大都市圏を作る)の推進など。4年前より進化している部分があるとすると、よくわからないカタカナの言葉を並べることで、なんとなくスゴいことをやろうとしていることを伝えることにして、何かをゼロにするというような検証されてしまうような公約は排除したことです。「ワイズ・スペンディング」と言われても、どれだけ支出が賢かったのかを検証するのは難しく、本人が「賢い支出をできた」と言ってしまえば、それが実績となるシステムです。小池百合子さんの最終目標は「初めての女性総理大臣」だと言われており、こうしている間にも着々と国政復帰の準備を進めていると噂されますが、この公約を見る限り、4年後に再び東京都知事選に立候補することになっても、検証されることなく戦いやすい状況を作り出そうという意図を感じます。

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さて、そんな小池百合子さんの選挙戦略ですが、今回、小池百合子さんが街頭に立って選挙運動をすることはありませんでした。本人不在の例の選挙カーが走るだけで、小池百合子さんは新型コロナウイルス対応ということで記者会見を繰り返すだけ。あとはネット番組の公開討論会にこそ出てくるものの、そこには立花孝志という猛烈なアホが紛れ込んでくるため、本当だったら候補者同士が高度な議論を交わすところなのですが、平等に話を振らなければならないという理屈で、猛烈なアホが高度な議論に割って入り、「持ち時間のルールを守りましょうよ」などとクソみたいなことを言うので、議論がまったく深まらず。青年会議所が主催した公開討論会では、公党に推薦されているという理由で、立花孝志のほかに、斉藤健一郎や服部修といったホリエモン新党のバカが3人でのこのこと現れ、こいつらがまた猛烈なアホの立花孝志がマシに見えるレベルのバカなので、「バカ三銃士」に公開討論会をメチャクチャにされてしまい、多くの人を「結局、小池百合子か」という気分にさせてしまったのでした。これはとても不幸なことだと僕は考えています。本当だったら、もっと深刻な問題を語らなければなりません。都立病院の独立行政法人化もそうですが、実は今、「東京水道株式会社」というものが立ち上がっていて、その社長には小池百合子さんの秘書だった野田数さんが就任しています。今、小池百合子さんがやろうとしていることは、水道の民営化です。既に一部は動いているのですが、水道という命に直結するインフラの利益をすべて自分たちの身内に流そうとしているのではないかという動きが見えるのです。この問題はもっと多くの人が知るべき問題なので、このレポートでもしっかり指摘しておきたいと思います。

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さて、小池百合子さんに投票していない人たちからすると、どうしてこんなに圧勝したのかが全然理解できないことでしょう。NHKの出口調査によると、小池百合子さんには男性の約52%ぐらい、女性の約65%ぐらいが投票しています。また、18歳と19歳では約80%弱が投票しており、20代では40%台後半、30代で約50%、年齢が上がれば上がるほど高くなり、70代以上では70%弱が小池百合子さんに投票しています。また、自民党を支持している人たちの約70%が小池百合子さんに投票。鉄の結束力を持つ公明党支持者は95%ぐらいの人が小池百合子さんに投票していました。支持政党のない人たちでも50%以上の人が小池百合子さんに投票しているので、投票率が上がれば上がるほど小池百合子さんの票は伸び、それ以外の候補との差が広がるという結果になっています。つまり、投票率が上がれば他の候補が有利になるということはないということになります。これは都民の皆さんが積極的に小池百合子さんに投票したと言うことができ、どうしてそんなことが起こるのかと言ったら、日頃から政治に興味を持っていないので、多くの人が「新型コロナウイルス対策をよくやっている」と考えているのです。パフォーマンスに騙され、本当はどれくらい酷い知事なのかを知らないのです。どうしてそんなに小池百合子に騙される人がいるのかって考えた時に、内閣支持率だって、あれだけモリカケ問題や桜を見る会などの疑惑があって、消費税を10%にされたり、特定秘密保護法や集団的自衛権が強引に可決されているのに、みんなが安倍内閣を支持していたところを見てもらえば、それほど不思議なことではないのです。こうしたことに反対しているのは「左」の特殊な人だと考えていて、ネトウヨの印象操作によって「左の人になったらいけない」と感じるようになり、いざ新型コロナウイルスという未曽有の災害に襲われた時に初めて、アベノマスクを2枚送るだけだった安倍晋三総理の無能さに気づき、最近は少しだけ内閣支持率が低下しているけれど、気づけばまた回復しようとしているのです。なんとなくしか政治を見ていない人が、選挙に行かない人も含めて圧倒的多数派を占めているのです。この病巣を取り除くためには、まったく政治に興味のない人にも興味を持ってもらえるように、日頃から少しずつ政治の話を織り交ぜていくしかないのです。おそらくコツコツとやり続け、数十年後にようやく実を結ぶような気の遠くなるような話でしょう。だけど、生きている限り、これをやり続けなければ日本が良くならないという話なのだと思います。


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