【小説】謳歌 (1) - 12歳、詰襟
違和感。
この感情を表現するなら、そう言うのが最適だと思う。
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中学生になった。
校則に縛られるのはまだ我慢できた。
物心ついて以来、初めてのショートヘア。
着るのが憚られる、真っ黒な詰襟。
それだけならまだよかった。
少しずつ低く枯れていく声。
骨張っていく体。
何よりも、プライベートな部分にある物の存在感。
自分が自分でなくなっていく。
この違和感は、大きくなる一方なのだと思うと、絶望さえ覚えた。
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性同一性障害 (GID, Gender Ident