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認知言語学ノート

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現在勉強している認知言語学についての個人的なノートです。 ⇒お読みいただく場合は#01~#04は飛ばして、#05「認知言語学ならではの問題」以降から(適宜戻って参照しながら)でも… もっと読む
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記事一覧

〈認知言語学ノート#01〉言語学の世相~認知言語学の誕生

〈現代言語学の誕生〉

1916ソシュール『一般言語学講義』
共時態と通時態

ジェネーヴ学派、コペンハーゲン学派、プラハ(プラーグ)学派など

アメリカ構造主義言語学派
行動主義心理学(スキナー『刺激ー反応』)
1933ブルームフィールド『言語』

〈言語学の対象は人間の心の仕組みへ〉

1950sチョムスキー以降
・生成文法
・認知言語学

言語使用が可能になるために必要な知識とは?
言語の創

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〈認知言語学ノート#02〉生成文法と認知言語学

生成文法:
言語知識は知覚や記憶といった他の心的機能から自律した1つのまとまりを成している。
チョムスキー『心的器官』

認知言語学:
言語の能力は他の心の働きと分かちがたく結びついていて、言語知識を明らかにするには心の働きまで考慮に入れなければならない。

⇒両者は研究を立ち上げるときの方法論的決断(に過ぎない)

〈生成文法と認知言語学の対比〉

生成文法と認知言語学の対比を際立たせると…

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〈認知言語学ノート#03〉文法

〈文法とは?〉

広義:われわれが言語を使用することを可能にしている知識の全体…例「生成文法」

狭義:言語知識の中で語彙の知識と区別したもの…例「文法項目」(後述の用語④で扱う)

〈認知言語学の用語〉

①形式

特定の意味を表現する文字や音や動作のこと

例)〈山〉という意味は「山」という文字や、「ヤマ」という音、手話ならば特定の手の動きで表されるが、これらすべてが〈山〉を表現する形式である

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〈認知言語学ノート#04〉統語論

認知言語学をよりよく理解するには、生成文法の特徴を把握しておくことが望ましい。

〈統語論と意味論〉
・統語論(構文論)とは、語句の組み合わせの仕方の議論

例)
「花子は太郎を大好きなのだ」は正しいが、
「花子は太郎を赤いのだ」や「大好きは太郎を花子なのだ」は正しくない。

・意味論とは、語句や文の意味がどのように与えられるのかの議論

生成文法は、統語論と意味論を厳しく区別する。というのは、統

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〈認知言語学ノート#05〉認知言語学ならではの問題

※本稿は、西村義樹・野矢茂樹『言語学の教室』(中公新書、2013年)の内容から、個人的なノートとして引用・要約したものです。

なぜ「雨に降られた」は言えるのに「財布に落ちられた」は言えないのか

 ふつう、受動態というのは「太郎は花子に叱られた」であれば「花子は太郎を叱った」という直接対応する能動文が存在する。しかし、日本語には、「雨に降られた」や「彼女に泣かれた」といった直接対応する能動文をも

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〈認知言語学ノート#06〉品詞と意味

※本稿は、池上嘉彦『意味の世界~現代言語学から視る』(NHKブックス、1978年)の内容から、個人的なノートとして引用・要約したものです。

品詞はどのようにきまるのか?
 語を「品詞」に分類する際の基準としては、次の3つが考えられる。

①形態論的な基準・・・その語がどのような語形変化をするかという観点
例)英語において、時制による変化をするのは動詞、比較による変化をするのは形容詞。

②統語論

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〈認知言語学ノート#07〉意味論①

 認知言語学は意味をどのようにとらえるのか。西村義樹・野矢茂樹『言語学の教室』(中公新書、2013)(以下、『認知言語学』と略す)でのある対話の様子から紹介する。

野矢「言語学のことなどまったく知らない人たちに、「ダビデはゴリアテを殺した」と「ゴリアテはダビデに殺された」は同じ意味だと思うか、と尋ねたら、どう答えますかね。「太郎が花子に叱られた」と「花子が太郎を叱った」は同じ意味か、違うか。」

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〈認知言語学ノート#08〉意味論②&まとめ

〈認知言語学ノート#08〉意味論②&まとめ

1.意味の捉え方(例1)西村義樹・野矢茂樹『言語学の教室』(2013、中公新書)=(以後、[言語学の教室]と表す)では、ラネカーが認知文法(認知言語学において文法項目を扱う分野)を構想し始めた頃に書いた論文で取り上げた次の例を紹介している。

例1)
①The clock is on the table.
②The clock is sitting on the table.
③The clock

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