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幽霊とトイレのラジオ

2003年9月、私が入った寮の部屋は、寮の中で一番古い建物に増築した部分の部屋でした。女性の幽霊が出ることで有名な寮だった。私の部屋は3階くらいで、トイレシャワー室の出入り口の斜め前でした。

トイレは常にラジオが流れており、部屋までガンガン聞こえるくらいだった。初めの頃は、この国には『静』というものはないのか?と思うほどだった。いつも、静かにまったり部屋で過ごしたいと思っていたけど、叶うことがほぼ無かった。

夜10時になると寮長みたいな人が、各フロアを確認しながらラジオを消しにくる。

「あ~、やっと静かになった」

と思うけど、今度は逆に気味が悪い。たまに、トイレやシャワーを流す音が聞こえてくる。二人部屋だけど、ルームメイトは授業の時に会うだけで、全く部屋に来ることは無かった。寂しく思うこともあったけど、誰にも気を使うことがないので、これはこれで良かった。

しかし、ここは幽霊がでることで有名な寮。夜になると、女性が歩き回るウワサがあった。私は霊感は全くないけど、一つだけ困っていたことがあった。それは夜中2時過ぎると、トイレのラジオが付くという現象。壊れているのか分からないけど、忘れかけた頃にいきなり…。

トイレのラジオは朝6時にラジオが入るようセットしてある。トイレは夜10時を過ぎると防犯のためロックがかかる。そのため、ロック解除の音やドアの開閉音も、私の部屋まで聞こえてくる。誰もトイレに行った気配がないのに、爆音で流れ続けるラジオ。消すに消せないラジオ。

そんな時は、いつもルームメイトがいてくれたらなぁ~と思っていた。不気味な現象を紛らわすため、自分のラジオを音を小さくして付けた。そうすると、自分が寝落ちするか、トイレのラジオがいつの間にか消えていた。もちろん、誰もトイレに入っていく気配はないけどね。


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