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今年の夏は、星を見に行こう。

僕は広島県の山奥の片田舎で生まれ育った。夜空一面に広がる星空は当たり前の風景で、よく星座盤を片手に夜、外に出て星座を探すような子だった。

夏には、天の川が氾濫するぐらい沢山の星が見えて、満天の星に埋もれて星座が分からなくなるぐらいの星空だった。

塾帰りの夜道からはカシオペア座とオリオン座がよく見えた。オリオン座の馬頭星雲のたてがみを見ようと、一生懸命目を細めていた。

夏の夜には地球の二万倍という途方もない大きさのさそり座の赤色巨星アンタレスが鈍い光を放っていて、「かっこいいなあ」と密かに尊敬していた。秋の南の空の夕暮れ時にポツンと光り輝く一番星フォーマルハウトに孤高の佇まいを感じた。

隕石にも遭遇した。一瞬の閃光と共に、夜なのに周囲が昼間のように明るくなった。怖くなった僕は思わず気象庁に電話したぐらいだ。

76年に一度地球にやって来るハレー彗星も運良く毎日見ることが出来た。あと44年で地球に戻って来るんだなあ。次は見れるだろうか。

日本最大のカルスト台地である秋吉台まで車を飛ばして、シューメーカー・レヴィ第9彗星も天体オタクのおじさん達に混じって、望遠鏡で見せてもらった。

数え上げるとキリがないくらい、星にまつわる思い出がある。あいにく28歳の時、転勤で東京に来てからはめっきり星を見る機会が減ってしまった。

僕が広島の片田舎から何か一つだけ持ってこれるとしたら、それは満天の星空だ。

40を過ぎて生まれた一歳半の息子に、あのこぼれ落ちる星空を見せてあげたい。

上手く言葉では説明できないが、僕が幼少期に星空から貰ったものはかけがえのないもので、大人になった今でもその時の思い出に沢山助けられていると思うからだ。


今年の夏は、星を見に行こう。



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