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無意識の押し付けをなくし、みんなが心地よく過ごせる場所にしたい——ジェンダーの問題を考える

みなさん、こんにちは。牛ラボマガジンです。牛ラボマガジンでは「牛」を中心としながらも、食や社会、それに環境など、様々な領域を横断して、たくさんのことを考えていきたいと思っています。

2021年4月1日にグランドオープンを迎えた千葉ウシノヒロバ。施設のさまざま所に、たくさんの想いとこだわりを込め、スタッフ一同つくりあげてきました。
千葉ウシノヒロバは、「現実から逃れるための場所ではなく、一人ひとりの生活が少しでも前に進むような場所」をコンセプトにしています。そして、コンセプトを実現していくためにもまず、社会で起きている問題に私たち自身が取り組みながら場づくりをすることを大事にしています。

今日は、ジェンダーの問題と向き合い生まれた、千葉ウシノヒロバのトイレのデザインに込めた思いを紹介できればと思います。

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私たちは無意識のうちに、固定概念を生み出している

昨今、ジェンダーに関わる話題を耳にすることが増えました。「ジェンダーフリー」や「LGBTQ」など、誰もが多様性を認めお互いに支え合うことのできる社会の実現を目指す取り組みが、世界中で注目されています。日本でも政治やあらゆる組織のなかで女性の活躍促進についてうたわれ、ジェンダーについての問題意識が少しずつ広がってきたのではないでしょうか。最近では、「女性蔑視をしている発言だ」というニュースもよく目にするようになりました。社会がいま、ジェンダーの問題と向き合いはじめています。

ジェンダー問題の解決策のひとつとして「ジェンダーフリー」という考え方があります。みなさんは「ジェンダーフリー」という言葉を聞いて、どのようなイメージを持ちますか?

「ジェンダフリー = 男女平等や女性活躍の促進」というイメージを持っている方もいらっしゃるかと思います。私自身もしっかりと理解するまではそう思っていました。しかし、勉強してみると、もう少し広域的な考え方の一つであることがわかりました。

ジェンダーフリーとは、「性に基づく役割や期待にとらわれず、自由に行動選択できるようにすること」という考え方です。
普段生活している中で、「女性だから育児・家事をしないといけない」「男性は稼いで家族を養わなければいけない」といった話を耳にします。性別を理由に、期待や強制や許容、また、評価されることは、意外と日常生活の中でたくさんあります。これまでの社会文化で根付いた性に対する概念が頭の中で固定され、それが選択を狭めていることに気づかず生活をしてしまっている人も多いかもしれません。
この無意識の中にある性別に基づく役割や期待から解放され、個人の選択の幅を広げていくことが、ジェンダーフリーに求められることです。

私たちも、ジェンダーフリーの考え方でどのような取り組みができるかを考えていきたいと思いました。

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ジェンダーを、単純なカテゴリーに当てはめることは難しい

ジェンダーの問題意識が広がると同時に、もうひとつ向き合う必要がある問題があります。それは、LGBTQなど性の多様性を認め合うことです。ジェンダー——いわゆる社会的な性別——は、男性か女性かの2つの区別だけではありません。ジェンダーフリーを実現していくことは、まず性の多様性を知ることからはじまります。

多様な性の捉え方として、例えば以下のようなものがあります。

・Lesbian(レズビアン)…女性の同性愛者
・Gay(ゲイ)…男性の同性愛者
・Bisexual(バイセクシュアル)…男性、女性どちらも恋愛対象となる人
・Transgender(トランスジェンダー)…こころの性とからだの性が一致しない人
・Questioning(クエスチョニング)…自分の性を定義しない、模索中の人
・Queer(クィア)…男性でも女性でもない、既存の性別の枠組みにあてはまらない自己認識を持つ人
・Agender(アジェンダー)…「ジェンダーがない」自己認識を持つ人
・Asexual(アセクシャル)…性的欲求を持たない、無性愛者
・Bigender(バイジェンダー)…男性と女性、両性の性自認を持つ人
・Two-spirit(トゥースピリット)…複数の性役割を生きる人

これらはほんの一部でしかなく、性はまだまだ無数に存在し、単純なカテゴリーに当てはめていくのは難しいのかもしれません。ジェンダーとは、個人が自分や世界をどのように認識するかによって大きく異なってくるため、定義がなかなかできないのです。

世界にはいろいろな価値観の人が存在しているからこそ、性をカテゴリーに当てはめようとしない社会のあり方を考えていく必要性を感じています。

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性を強引に区別することなく、生きやすい場所に

はじめの話に戻りますが、無意識に持っている「こうでなければいけない」というイメージは、性をカテゴリーに当てはめていることになります。その結果、無意識に生きづらさを感じてしまう人が、きっと世の中にはたくさんいるのではないかと考えています。
生きづらさを感じる瞬間とはどのような時なのか。私たち自身も固定概念を外し日常を振り返ってみました。

そこで、私たちが運営している千葉ウシノヒロバのなかで性別で分けられる場所を考えると、思いつくのは「トイレ」「シャワールーム」あたりです。そして、それぞれの場所には多くの場合、性を区別するアイコンが表示されているかと思います。

いま世の中にある多くのアイコンは、色や形で区別されています。しかし、色や形で表現をしてしまうと、また固定概念を生み出してしまう。だからこそ私たちは、色や形で性を区別しないデザインにこだわりたいと思いました。
専門家にヒアリングし、国内外の事例調査を行い、生まれたのがこちらのデザインです。

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「男性は青、女性は赤。男性はパンツスタイル、女性はスカートスタイル。」のような色や形でデザインするのではなく、色も形もつけていません。そうすることで、固定概念から解放され、無意識の価値観の押し付けをなくすことができると考えています。最近では、誰もが使えるトイレとしてさまざまな種類のアイコンを並べたり、LGBTQを表現したアイコンをつくったり、ジェンダーフリーを意識したトイレも少しずつ増えてきました。

普段何気なく過ごしていて、トイレのアイコンに問題意識を持つ人はもしかしたら少ないかもしれません。それでも、ウシノヒロバに足を運んでくれた人たちには、少しでも心地よい場所だと感じてもらいたい。

まだまだ手が行き届いていない箇所も多いですが、これからもお客さまはもちろん、社会問題とも向き合いながら、私たちにできることをひとつずつ取り組んでいきたいと思っています。


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(執筆:中野 綾子、編集:山本 文弥)