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【イベントレポート】道本咲希監督 『19歳』『昔の恋人』上映会

好評につき第2回目を迎えた「映画とお話とブレイクタイム」が、2019年12月15日(日)にcafeSTANDさん(JR西千葉駅徒歩1分)にて開催されました。
今回は道本咲希(みちもと さき)監督の短編映画2作品を上映。どちらの作品も、道本監督が主演も兼ねており、2作品を続けて観ることで、道本監督の作品づくりの変化を感じることができました。
また、道本監督とともに、同じく期待の若手監督・工藤梨穂(くどう りほ)監督(監督作『オーファンズ・ブルース』 / 第40回 ぴあフィルムフェスティバル(PFFアワード2018)グランプリ & なら国際映画祭2018 学生部門NARA-wave ゴールデンKOJIKA賞)もゲストとして登壇。
上映会後のトークでは参加者からの質問も多く、監督と参加者が直接コミュニケーションをとることができ、終始温かな雰囲気のイベントとなりました。

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道本咲希監督

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工藤梨穂監督

道本監督の短編映画『19歳』『昔の恋人』

『19歳』2018年(上映時間28分)
監督/脚本/主演:道本咲希

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第40回 ぴあフィルムフェスティバル(PFFアワード2018)にて審査員特別賞を受賞した本作。
道本監督本人が演じる主人公・さきは短大生。趣味のカメラを手にフワフワ楽しげに生きているように見えるが…。道本監督が19歳の時に製作した、私小説的な作品。
「私は二十歳になったら死ぬもんだと思っていた」
「ああ、なんだか素晴らしい毎日を、私が台無しにしている気分だ」
などなど、印象的な台詞が心に残る作品でした。

『昔の恋人』2018年(上映時間28分)
監督/脚本/主演:道本咲希

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なら国際映画祭 2018上映作品。
娘と一言も喋らない母と、そんな母に気を使い続ける父。そして、会話のない家庭に慣れてしまった1人娘の麻美。
突然、父が病気で倒れ、帰らぬ人に。麻美は、父が言い遺した”母よりも前に愛していた人”に会いに、家を飛び出す。
『19歳』から1年も経たずに制作された作品ですが、道本監督の視野の広がりが伺えます。

「自分のコンプレックスを題材に」

今回は、上映後に2作品についての感想を中心に工藤監督がお話しされ、道本監督がそれに応える形でトークが進んでいきました。

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工藤監督ーーー両作とも観るのは今回で3回目ですが、観るたびに発見があります。最近気付いたのは、『19歳』は内に向いていて、『昔の恋人』は外に向いているということ。

道本監督ーーー『19歳』は自分のことしか意識できなくて、それがダメだなと思って『昔の恋人』を撮ったんだよね。

工藤監督ーーー私は『19歳』推し。私にとって『19歳』は寂しい時に寄り添ってくれる作品。でも監督と主演両方やるのって大変でしょう?

道本監督ーーー客観的に作品を見れないことが大変かな。どうにかして映画を撮ってみたくて、結果自分が演じることになったけど、女優がやりたかったわけではないんです。カメラマンにも「お前ずっと笑ってるだけやん」って言われたし(笑)。演じるというか、ありのままなんです。だから、好き嫌いのある作品だと思います。好きと言ってもらえると嬉しいけど、今皆さんと一緒に観るのキツイ(笑)。
私は特別な存在だからもうすぐ死ぬんだ”みたいなのは、今見ると痛いけど、誰もがふと考える事なのかも。『19歳』と『昔の恋人』と撮って思ったのは、自分を客観視するために映画を撮っているんだなと。 手探りで作ってみたら、自分の至らないところに気づくことができました。
  
スタッフーーー『昔の恋人』は『19歳』よりもチャレンジしたいというのを感じました。

道本監督ーーー『19歳』の感覚的な映画だけじゃダメだと思って、ちゃんと考えて作ったのが『昔の恋人』でした」。『昔の恋人』は友人の両親に両親役で出演してもらっています。あとは知人。昔の恋人の役だけ女優さんです。主演女優も探したけど条件が合わず、自分が出るかと。『19歳』も自分が出てるから、流れで見たら面白いかなと。 もしまた作るなら、自分が出た方が変化が分かって面白いかなと思います。

工藤監督ーーー『昔の恋人』はダルデンヌ兄弟の『ロゼッタ』みたいだなと今思いました。こんなに次から次へといろんな発見ができる映画に出会えて良かった。”親”は今後もテーマにしていく?

道本監督ーーー親がすごく真面目なので、逆を行きたいという思いから映画を撮っています。恋愛ものとか撮ってみたいけど、映画作りの発端だから親は撮りやすい。

工藤監督ーーー最近気づいたことだけど、作家は自身のコンプレックスが作品の源になっているような気がする。親や家族にあまりコンプレックスがない私は、映画で親や家族を描けない。自分に欠落してるものを追い求めることが作品作りの原動力になるのかも。

道本監督ーーー工藤ちゃんみたいに好きなものをフィクションとして撮れてるの、すごいなと思う。

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また、参加者からの質問タイムは、作品についての突っ込んだ質問や、映画監督を目指す高校生からの質問などがあがり、時間いっぱいまで盛り上がりました。

自分をさらけ出す、表現への挑戦

老若男女幅広い層の参加者が集まった今回のイベント。
2作品とも、観た人が人生のどのフェーズにいるかによって感じ方が違ってくる作品だったと思います。
思春期は過ぎたけど、大人にもなりきれていない、宙ぶらりんな『19歳』。
三十路をとうに越えた私には、懐かしくもありつつ「世間を舐めきった学生」だった自分を思い出して悶絶してしまう作品でした(あの頃の自分を土深く掘って穴に埋めたい)。
また、トークでの「自分を客観視するために映画を撮っている」「自分のコンプレックスを撮っている監督が多い」という話は興味深く聴いておりました。若手監督の中には、本人の自我との戦いの渦中にあって、作品作りを通して自分自身を客観視することで成長していく人もいるのだな、と。
今回上映された作品は私小説的映画ですが、自分の人生のひと時を切り取って、作品として見事に昇華させる道本監督の手腕には今後を期待せずにはいられません。

また一つ映画の面白さに気づけた「映画とお話とブレイクタイム」。
年明け早々には、ちば映画祭が都内に飛び出して上映会も行いました。
ちば映画祭の今後の動向にも注目です!

イベントレポート
橘高あや(アートエバンジェリスト)

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