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生態系のあいだをつくる仕事を考える

最近のこと(前置き)

こんにちは!なんだかんだ相変わらず、瀬戸内で地域を走り回っています。
自分が担当する小豆島の施設では、土地の風土をさまざまなテーマからリサーチして、来訪者も住民も一緒になって堪能できるイベントや機会を作り、この先へと継承していく「地域資源を思いっきり楽しむ研究所」のような企画をはじめました。

「アートマネージャー」の素養について、相変わらず考え込んでいる部分もありますが、言葉に引っ張られるのはやめて、地域の中で自分がどんな仕事ができるのか現実に飛び込んで楽しんでいるような毎日です。 企画のテーマは「過去と未来が背中合わせになった、今日の複雑さと鮮やかさ、楽しさを探求すること」

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[写真:見てよ!海の中まで春だよ!!]

「風土」っていう言葉には気候や地理的なことだけでなく、「土地の生命力」って意味もあるそうで、食や踊り、産業、物語など、その土地土地の風土から抽出されたさまざまな地域資源は、まさに生命力の結晶なのだなあと思い、これを集めて、過去と未来が連なる今日という日を全力で探求することにした。

そんなわけで、日々、鯵の姿寿司の作り方を地域の方に教えてもらったり、オリーブの新漬けを作ったり、醤油の木桶作りWSに参加したり、石工さんの仕事を聞いたり、罠のかかった猪を絞めるのを見たり、カワハギを捌いて肝に舌鼓したりしている。

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本来なら先週末からGW開けまで、影絵や食のWSなどイベントを行う予定だったんだけど、昨今のコロナの影響で小豆島に行くこと自体難しくなり。。いろいろと準備を進めていただけに寂しいけど、しょんぼりしていても仕方ないので、企画の方向性を立て直し、春の風に吹かれる直島でいろいろと実験を進めることにした。近況を伝えるだけでめっちゃ長くなるな。。(相変わらず前置きなっげぇ)

生態系のあいだをつくる

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[写真:スペアミントがはびこる大地ことミント先輩]

さて、そんな研究所企画の一環として、来訪者やアーティスト、地域の方の接点になるような場づくりをすることにした。「アートで地域が変わる」なんて、自分達ですら見えないものに目を凝らして歩いているような状態だから、先に地域の方やアーティスト達ともここで目指す青写真を描いて、見るということをしたいと思ったからだ。

普段とは違うやり方でゴールに向かうことで、今までとは違う編み方や思考法など、これまで見えなかったことが見えるかもしれない。

■目指す状況​
小豆島の担当施設で目指すのは、個々がそれぞれ自分らしいあり方で豊かに生き、ひとりひとりの価値観が尊重されながらも、共生関係が保たれるような有機的なコミュニティ、コモンズのような場所をつくること。
1つの答えを求めて、生産性や効率性を重視した単一的な世界観は、人と人、人と土地の間にあった複雑に絡み合うたくさんの糸を切り離し、豊かさを目指したはずの世界は孤立や生きづらさを抱えて生きる人が増えているように見える。私たちは何を失ったのか。空いてしまった空間があるなら、いったい何をそこに求めているのか。

どんな場所でどう生きていきたいか。豊かだと思うのはどんな瞬間か。思いを巡らせる中でアジアの風土や歴史に関する文献なども読み、たくさんインスピレーションをもらっている。

■いつもと違う方法で青写真を描く
さて、そんなわけで、自分たちの利き手はいったん置いて、いつもと違う手法、回り道をしながら、どんな方法で描くのがいいかと思いを巡らせ、辿り着いたのは「協生農法」。※まだマニュアルを読んで土をいじるばかりで全くの素人仕事である。あしからず。

「生態系の複雑さと向き合いながら、自分たちが必要とする食料を生産すること」「多様で複雑な混植から、生態系が拡張すること」などが、地域で新たな取組をしていく上で、シンボリックな存在になってくれるんじゃないかと思えたからだ。そして、この場でできた実りをみんなで味わえたらいいかもなんて妄想もして「アースオーブン」づくりもすることにした(畑も窯もど素人だけど)。

どちらも企画としてはどんな結果を生み出すか未確定な部分が多いので、生態系に負担を掛けない仕様にする、というのもポイントになった。手を動かし、汗をかき、自分たちの求めてやまないものをクリアにしていくという時間が日々の業務に追加された。

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■何を見るのか
協生農法についていろんなテキストを読む中で、こちらの記事(株式会社ノースの今井航太郎さんのイベント)に出てくる「生態系と向き合う」というキーワードが、地域で仕事をする上でもとても共感できるものだと思った。コミュニティという便利な言葉になにかと集約されてしまうけど、やっているのは関係性の編み直しだし、あいだのつなぎ部分を新たに作ったり、回復させたりすることかもしれない。私の好きな先輩じいじの「文化っていうのは関係性のこと」という言葉がふと浮かぶ。

地域にはさまざまな単位のコミュニティが存在している。自治体やPTA、同好会的なものまで規模も価値基準も多様だ。そんな地域のコミュニティとコミュニティのあいだをつなぎ直して、個々の活動やポテンシャルをさらに活性化させていく、生態系づくりのようなものが地域活動では大事になる。その中で新たに生まれていくもの、最適化されて続いていくもの、ある種の普遍性を帯びたものが「関係性」としての強度を持ち、「土地の文化=風土」として見出されていくのかもしれない。

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[写真:私の大好きな小豆島の担当地域]

■小豆島→直島
自分の中で物語ができてくると、がぜん前のめりになってくる私は、どこに向かうのかわからないような日々が何だか楽しくなってきた!

のだが、、、コロナの影響で、本来は小豆島で春会期中に実験をしてみる予定だったが叶わない。ので、直島の畑を一部間借りさせてもらった(ありがとうございます!!)。
いただいたのは、スペアミントが大地を覆う元畑?の土地。
 「わあ、いい匂いだね」なんてのんきなことを言っていたことを悔やむほど、この土地を耕すのは大変だった。。。

■VS 群生スペアミント
地表を覆うミントの草刈から始め、本来であれば日照時間の調整のために短くすることはあれ、既存の草はなるべくいじらず新しい苗を植えて、生態系を作っていくのが協生農法なのだが、地中から地表約50㎝がすべて多年草のミントによって固められていたので、致し方ないと移動いただくことにした。さすがにこんなにガチガチに根が張っていると新たな苗が入る隙がない。。 とにかくミントの繁殖力がすごすぎて、、この場では遺伝子のコピーにおいて明らかに王者で、もう途中から「ミント先輩」って呼んでいた。。

もしかして小競り合う相手が同種だけだなんて、この上なく平和なことかもしれない。私たちがエイリアンものの映画で見るようなしのぎ合いが、そこかしこで起こっているのだ。

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[写真;全体重を掛けないと引っこ抜けないのでケーキを切るようだった]

■畑のスタッフたち
3時間かけて「うー」だの「あぁー」だのいいながら、やっとのことで耕し、体力のすべてを使い切ってしまったので、畝づくりと苗を植えるのは月曜に。。 これは食べ物なんじゃないか?と見まごうほどまるまると太ったミミズを何匹も見つけ、優秀なスタッフが揃った畑に期待は高まる。
【初期メンバー:ミミズ、芋虫、てんとう虫、ムカデ、カラス、オグロ、猫など】山の向こうに二匹の猪が歩いていくのが見えたので、電気柵は必須になりそうだ。。さすがに彼らはうちの畑のスタッフとしてはでかすぎる。。

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土をひっくり返せばすぐさま羽虫達が群がって何かを土中から食べ漁り、人が居なくなるとカラス達が群がっている。今日はみんなパーティだな。

さて、そんなこんなで土いじりを始めたので、何かしらの軌跡を書いておけたらと思って1年ぶりのnoteしてみました。
小さな生態系のカオスだと思って景色を眺めると、山の木々も道端の草達も動物も色彩豊かでとても面白い。子供の頃に見た、ジャワ島のいちじく達の熾烈な生存競争のドキュメンタリーのことを思い出す。日々に楽しみができたご報告。

畑の諸先輩方、ぜひいろいろ教えてください。

あとね、そういえば今日36歳になったよ。
だからnote書きたかったのかな。笑
会えなくても、これまで過ごしたたくさんの時間に日々助けられています。
今年もどうぞよろしくお願いします

次こそ一年たたずに更新を。。


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