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Uri Avner作品集を読んでみる 1-6

Orthodox編は今日で終わりです。
もちろん一握りしか紹介していませんので、ぜひご自分の目で作品集をご覧になって、良い作品を見つけてください。


138番

Israel - Serbia Match 2009 Section A 1st Place

#2 vv

1.Sh7? (2.g5#)
1...Sxg3 2.Qg5#
1...Be6 2.Bg5#
1...g5 2.Sh5#
1...Qxf6!

1.S5xe4? (2.Qg5#)
1...Bxe4 Bg5#
1...Qxf6 2.Qxf6#
1...Sxe4 2.Sxe2#
1...Sxg3!

1.Sxf7! (2.Bg5#)
1...Qxf6 2.g5#
1...Sc~ 2.Sxe2#
1...Qxh4, Qh6 2.axb8=Q, B#
1...Qh5 2.gxh5#

紛れと本手順を列挙した。私が思うに、Orthodoxにおけるtry(紛れ)は諸刃の剣。上手く作れば様々なパターンを展開できるが、下手に作ると作者の自己満足に陥ってしまう。
本作の場合は、本手順も紛れも動かす駒はg5Sである上、threatの着手地点までg5に統一されている。解答者からすると非常にありがたい構成と言えるだろう。


やはりテーマ部分を抜き出して見てみよう。

1.Sh7? [2.g5#(A)]
1...Sxg3(b) 2.Qg5#(B)
1...Qxf6!(a)

1.S5xe4? [2.Qg5#(B)]
1...Bxe4 Bg5#(C)
1...Sxg3!(b)

1.Sxf7! [2.Bg5#(C)]
1...Qxf6(a) 2.g5#(A)

threatと変化に対する手の組み合わせが、3相でcycleになっている。私の知識ではこれがどれくらい新しいのか、あるいは価値があるのかは分からない。しかし、この構造が成立している理屈を考えれば、精妙に作られていることは分かる。

私が気になったのは、Sh7?の紛れにおける1...Be6 2.Bg5#の変化。ここに主題と関連するBg5という手が出てきてしまうのはちょっと不味いのでは?と思ったら、John Riceの解説でもやはり触れられていた。「cycleを表現する上で余計な部分だと批判するジャッジもいた」ということらしい。

本作について、John Riceはさらに詳細な解説をしている。ここでは省略するがなかなか興味深いので、各自で読んでみてほしい。


次回からはSelfmate。

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