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Uri Avner作品集を読んでみる 3-2

今日取り扱うのはIsardamです。ピンと来ない方も多いでしょうが、Madrasi系列のルールです。ということで、まずはMadrasiの定義から見ていきましょう。

Madrasi→Fairy condition. If opposing pieces of equal value threat one an other they are paralyzed, i.e. both lose their capability of moving and all their forces (including a check to the enemy King) except that of paralyzing. 

つまりは、同種駒の利きに入ると互いに動けなくなるというのがMadrasiです。ちなみに、このルールをキングにも適用したものはK Madrasiと呼ばれています。さて、Isardamの定義は……

Isardam→ Fairy condition. Any move leading to a Madrasi chess paralysis is illegal. If the King is protected by a friendly piece then the attack by an enemy piece of the same type as the guarding piece is not a check. 

Madrasi状態を作る手は反則だというのがIsardam。それでは本編に行きましょう。


81番

TT Andernach 1997 1st Prize version

#2 Isardam

1.Qf4? (2.Be3#)
1...Bg1 2.e3#
1...Qd5 2.Rxd5#

1...c2! 2.Be3+ Qc1!

1.Qd3! (2.Kxc3#)
1...Qa7 2.Rd5#
1...Qg7 2.Be3#
1...Qg4 2.e3#


慣れないフェアリールール。まずは初形でcheckがかかっていないことを確認しておこう。(Qxd4はQd7の利きに入るため禁手!)。

まずは1.Qf4?の紛れを見る。threatは2.Be3#だ。このルールは本当にややこしくて、例えばthreatは2.e3?もあるように見えるが、2...Bxf4!でexd4を禁手にされて逃れている。
1.Qf4に対して最初に見える受けは1...Bg1だろう。これには今度こそ2.e3#が可能となる。2...c5は反則手だからだ。もう1つの受けは1...Qd5で、Rのラインを切り、2.Be3にはKe5!とかわす手を狙っている。これにはもちろんRで取り返せば詰みだ。さて、これ以外に受けは無いようにも見えるが、1...c2!とするのが黒の秘手。2.Be3に対してQ成とする手で、白Bがpin(表現として正しいのかは不明だが感覚は伝わるはず)されて逃れる。
ここまでTryを見てきたが、実はこの筋はそれほどテーマに関わっていない。変化でIsardamらしい手が多く出てくることと、逃れ順の面白さは作者が意図した部分ということか。
Tryでこのルールの感覚を掴んでいただいたところで、本題を見ていくことにしよう。

keyは1.Qd3!。黒が何もしなければ2.Kxc3で詰んでいるという、このthreatがなかなか発見しづらい。Madrasi状態を作ってはいけないと思って解いているので、KがKの利きに自ら入るのが盲点となる。IsardamはあくまでMadrasiになる着手が禁止であって、K Madrasiになる着手を禁止してはいないためこれは合法手なのだ。さて、このthreatに対し、c3を直接守るような手はない。よって受けとなるのは、黒Qを白Qのラインから外す手。つまり、黒Qを動かすことで黒Kをunpinしてやるということである。そうすれば、2.Kxc3は禁手となるのだ。そのパターンは3つ。1つずつ見ていこう。

1つ目の受けは1...Qa7。対して、メイトに出来そうな手は2.e3、2.Be3、2.Rd5の3つある。勿論そのうち2つは不正解だ。2.e3に2...Bf4!があるのは既に見たところ。では、2.Be3はどうか?これには2...Be5!で逃れる。というわけで正解は2.Rd5!。このRをpinしてやろうという2...c5?(Bのラインが開く)とした手が、肝心の黒Qの利きを切ってしまうのがミソである。
もうテーマはお分かりいただけたのではないだろうか。2つ目の受けは1...Qg7であり、2.e3はやはり2...Bf4でダメだし、2.Rd5には2...c5が今度は受けになる。作意は2.Be3!で、2...Be5?がQのラインを遮断する手となるため受け無しだ。
最後の受けは1...Qg4。対する白は、残った2.e3が正解で、2...Bf4?の受けが利かないのは、上で見た変化と同じ理屈である。

3つのvariationでQのラインの遮断を美しく表現した傑作。

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