見出し画像

素敵な詰将棋(5)


久しぶりに『盤上のファンタジア』を読んでいたら、めちゃ好みの作品見つけた。過去の自分は派手な名作ばかりに気を取られて、こういう可愛いのを見落としていたらしい。

若島正
近代将棋1986年10月

34龍、22玉、55角、44と、31龍、23玉、24歩、同玉、35銀、23玉、34銀、24玉、46角、35と、25銀引、同桂、35龍、23玉、24歩、22玉、55角、同馬、31龍、13玉、14歩、24玉、34龍まで27手。

と金が滑る味わい!
難しいところはなく、全体の流れを楽しむ作品である。


『盤上のファンタジア』と『盤上のフロンティア』は方向性が違いすぎて同じ作家の作品集とは思えない、という意見を耳にしたことがある。たしかに、『ファンタジア』は簡素な形からの合駒という作品が多いのに対して、『フロンティア』の方は打歩関連の構想作のイメージが強い。
しかし、『ファンタジア』の中には『フロンティア』の香りを漂わせる作品がある(逆もまた然り!)から、作風に変化はあっても別人になったわけではない。例として第23番を紹介しよう。

若島正
詰将棋パラダイス1976年12月

35銀、同角生、26桂、同角、36香、24玉、44龍、34角、33龍、同香、25歩、同角、23銀成まで13手。

34角!の移動合がテーマの手で、self-pinによって打歩詰に誘導する狙いを持つ。それを際立たせる序の角不成も巧い。50年近く前の作品とは思えない、現代的センスの溢れる作品だ。
本人解説には「1筋に並んだ駒のかたまりがグロテスク」とあるが、作風の変化した現在の若島さんはこの初形をグロテスクだと捉えるのかどうか、ちょっと興味がある。


逆もまた然り、と書いたので、『フロンティア』に収録された『ファンタジア』らしい作品の実例として第42番を引用する。

若島正
将棋世界2018年1月

26銀、同玉、59角、16玉、27銀、同玉、37馬、18玉、68飛、48歩合、同飛、17玉、18歩、16玉、46飛、36金合、26馬、同金、同飛、15玉、16飛、同玉、26金まで23手。

盤上たったの6枚から中合が2回出て、完璧に着地する。若島さんが将棋世界の懸賞詰将棋の担当に就任されてからもう丸7年が経つが、その中でも指折りの一局である。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?