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『チェス・プロブレム入門』感想①

今回から『チェス・プロブレム入門』を読んでいき感想を書くことにしよう。

なぜこの本を選んだのかについて。
その理由は『極光Ⅱ』の時と同じで、「持ってはいるけど読めていない」人が多い本だと思うからだ。そういう人に読むきっかけを与えられたら、と考えている。あくまで持っているのが前提なので、私は作品の感想を書くだけ。図面や作意、そして解説は本を開いて確かめていただきたい。


イントロダクションは割愛する。
最初に登場するルールはダイレクトメイトだ。ここから読み始めるのが普通ではあるのだが、本当のプロブレム初心者はここから読み始めるべきでないというのが私の考え。ダイレクトメイトは詰将棋で言うところの伝統ルールに相当するけれど、詰将棋とは全く異なる感覚を要求されるからである。そんなわけで一旦ページを飛ばし、28ページのヘルプメイトから読み始めることにしよう。このルールが、詰将棋関係者からすると最も馴染みやすいはずだ。


【ヘルプメイト(Helpmate)】


執筆者は小林敏樹さん。

まずヘルプの前提知識が書かれている。重要なのはやはり「複数の解の間における手順の統一性や対照性をテーマとして表現するのが通例」というところだろう。それでは作品にコメントしていく。

H01:超傑作。ちなみにこの奇抜なツインは、最高のヘルプ作家であるFadil Abdurahmanovicも幾つか手掛けており、例えば白P〜Qの5種に加えて駒除去(remove)を加えて6パターンしたものや、a)〜i)までで白の2枚の駒に対してForsberg twinを実現した作品もある。ただし、いくら素晴らしい後続作が出てこようと、このH01がこの設定の最高傑作であることは疑いようもない。

H02:セットプレイの例題。いずれの解もmodel mateになっている。

H03:2005年の新作という気はしないが、コントラストはok。

H04:綺麗に出来た手筋ものといった趣がある。1解目において、白Rは縦に動けないことに注意(pinされている)。
なお、ヘルプメイトに複数解形式が取り入れられた歴史は必読である。詰将棋界でもいつかツイン<複数解が浸透する日が来るのだろうか。

H05:私などには意味のない足し算に見えるが、こういうものに意味を感じているプロブレミストもいるということが分かる。

H06:Promotionに関するテーマでもっとも有名かつ多く作られているのはAUW(4種成)だが、こちらはちょっと変わった1種成で、それも最高位のQに3回成るというパターンである。Feather作品としては低調な部類。

H07:こちらは主流のAUW。もちろん、現代的にはここに+αを加えないと作品にならない。山崎氏は一時期AUWを量産されていた作家。

H08:簡潔に仕上がっている。合計16の手が、1つもダブっていない点を評価したい。

H09:黒の線駒がcheckをかけながらSwitchBack。プロパラ発表作に拘らなければ、このタイプのより良い作例は沢山ある。

H10:2解のバランス、つまり作意やツインの設定に違和感がある。この作者ならもっと上手く作れるはずだが。


【この1局】

文字だけでは味気ないため、1作だけ図面と作意を紹介しようというコーナー。今更H01でも無いよねということで、今回はこれにする。

H04 

Toshiki Kobayashi
PP 2002 3rd Comm

H#2 2solutions

1.d3 Rd4 2.Kxd4 Sb3#
1.Rb4 Sc4 2.dxc4 Rf5#

UmnovとZilahiが簡潔に表現された好作。



次回でヘルプの解説篇が終わりの予定。その次はヘルプの解答篇に進むか、それともダイレクトメイトの解説篇に行くか。

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